産資・不織布・最新情報/テクテキスタイル見聞録(4)実は新素材も少なくない

2011年06月09日 (木曜日)

 日本で実績のある商品だけでなく、実は新素材もテクテキスタイルでは発表されている。これも手法は様々だ。

 商談重視でありながら、ひそかに新素材を出品していたのがクラレ。高強力ポリアリレート繊維「ベクトラン」を前面に押し出す一方で、奥には人工皮革「クラリーノティレニーナ」のウレタン含浸前、つまり超極細繊維によるスパンボンドを出品し、これを使った研磨布を紹介した。

 さらに、エレクトロスピニング法によるナノファイバー不織布も提案。保城秀樹繊維素材企画開発部長によると、岡山工場に試験設備を置いており、耐熱ポリアミド樹脂「ジェネスタ」やEVOH樹脂のエバールなどの独自原料で開発を進める。ナノファイバーは東京工業大などとNEDOのナノテク・先端部材研究開発テーマにも採択されているものだ。

 もちろん「昨年から欧州のベクトランの販売担当を米国会社からドイツに移した。その成果が表れ始めた」(豊浦仁繊維資材事業部長)と、ベクトランを中心に商談も数多く予定されていた。

 東レの英国での長繊維織物の織布・染色子会社、トーレ・テキスタイル・ヨーロッパ(TTEL)は、溶鉱炉前など耐熱性が求められる作業服向け新素材として「サーモガード モルテン・リペル」「同ハイ・ビジビリティ カラーソリューション」を披露した。  同モルテン・リペルはフッ素繊維「テフロン」とメタ系アラミド繊維を使用するとともに「織構成にも工夫を施し、2年かけて開発した」(唐沢明会長)と言う。用途は鉄・銅・鉛などの製錬を行う溶鉱炉で作業する防護服向け。溶融した金属が飛散し、作業服に穴を空けることを防ぐ上、洗濯50回でもその機能を維持する。

 同ハイ・ビジビリティ・カラーソリューションは難燃ポリエステルとメタ系アラミド繊維を組み合わせた二重織。石油、ガスの精製所や電力、鉄道関連などに特化した素材だ。同分野の作業服は視認性も求められるが、メタ系アラミド繊維は染色しにくく、染色しても耐候堅牢度も低い。このため、通常は他素材との混紡などで商品化されているが、それでも蛍光色などは黄色以外の表現が難しかった。これを解消した。

 商品展示を前面に押し出したTTELとは対象的に、隣り合う東レブースは商品展示が少なく、商談重視。これはオランダのテイジン・トワロンが商談重視で、帝人ファイバーが商品展示を目一杯行った帝人グループとは逆パターンになっており、面白いところだ。