新社長/NI帝人商事の社長に就任した・竹中哲嗣氏/“メーカー的思想”大事にしたい

2011年04月01日 (金曜日)

 「いわゆる従来型の商社ビジネスより、メーカーと商社の機能を両方持つ、モノ作り型の商社を追求する」と、1日付でNI帝人商事の社長に就任した竹中哲嗣氏。就任会見でそう語った背景には、これまで東京の製品部門で顧客と一緒になって汗を流し、モノ作りを進めてきた経験がある。

 1975年に帝人に入社し、テキスタイル販売に従事した。2001年4月に日商岩井アパレルと帝人商事が合併し、NI帝人商事が誕生。その年の10月に同社に入社し、東京製品担当としてメンズ、レディースの重衣料畑で腕を磨いた。

 「人と人との接点の中で商売がある。『商人道』というと、がめつくもうけるようなイメージがあるが、現場での心の通い合いを大切にし、顧客と一緒にモノを作っていく姿勢を大事にしたい」。顧客に入り込みながら、北野弘前社長(1日付で帝人の社長執行役員補佐に就任)に引き続き現場主義、フェーストゥフェースの付き合いを重んじる。

 実用衣料中心の同社は関西に商権基盤を置き、衣料に関しては大阪本社で65%を稼ぎ出す。東京中心の他社に比べると被災のビジネスへの影響は少ないが、それでも「震災が起こるまでは2年先、3年先を見据えた戦略を進めようと考えていたが、今は足場を見直してやっていく」考え。ただ悲観しているわけではない。「西型商権の強い当社は、裏を返せば首都圏市場に伸びしろがある」とも指摘、期待も込めて年末には経済全体の立て直しが不可避だと強調する。

 商社が将来を見据えグローバル市場で戦うには、「生産資本のないビジネスモデルは成り立たない」(北野前社長)。2年の社長就任期間中に足場を固め、1日付で竹中氏へバトンを渡す北野氏から見て、「メーカー的思想を持つ」竹中新体制が、2年、3年先を見据えたこれからの新規戦略を描くのに欠かせない。

 三重県出身。県立津高校に通った学生時代はボート部で汗を流し、強豪・愛知県立旭丘高校と伊勢湾での対戦も経験。空いた時間には推理小説を好んで読むが「北野さんに薦められて、経済小説も読んでいる」。休日は家でのんびり過ごすことが多いという。

 

たけなか てつし

 1975年上智大・外国語卒、帝人入社。2001年NI帝人商事東京衣料部長などを経て、2010年取締役。三重県鈴鹿市出身。58歳。