重要度増す検査機関・物流/揺らぐ供給体制を支援
2011年03月29日 (火曜日)
中国生産問題は、納期や品質などに影響を及ぼす。国内でも東日本大震災で、東北地方からの納品遅れが懸念されている。供給体制が揺れる中で、試験を行う検査機関や物流業者の役割はますます重要になってきた。
カケン/内外の環境変化に対応
日本化学繊維検査協会(カケン)は、中国で上海科懇検験服務有限公司を中核拠点に、青島、大連、寧波、無錫に試験室を置く。中国では次の拠点を模索しているが、現時点では候補地を決めていない。
沿海部の賃金上昇で内陸に縫製拠点を移す動きはある。とはいえ、「顧客の要望の強い地域」を基本にしており、候補地をまだ決める段階ではないという判断だ。
これはチャイナ・プラスワンでも同様。香港、韓国、台湾、インドネシア、タイ、ベトナムに試験拠点を置いているが、次の候補地を決めてはいない。むしろ既存拠点の充実を図る方向にある。
国内では14日付で、一宮と岐阜のラボラトリーを統合し、「東海事業所一宮ラボラトリー」として移転した。岐阜には「岐阜インフォセンター」を新設し、試験業務の受付を行う。こうした国内の集約化が徐々に進む中で、アジア市場への期待の大きさは変わらず、新たな生産地情報を集めている。
東日本大震災によるラボへの被害はなかった。4月1日には予定通り入会式を開くが、新人の技術等の研修は大阪事業所で行う。都内で計画停電が行われているためだ。内外の環境の大きな変化はあるが、検査機関として粛々と対応していく。
共栄倉庫/中国内陸部で物流加工も
物流倉庫業の共栄倉庫(大阪市)は、中国での物流加工場の増設を視野に、同地での活動を強化する。今年、江蘇省蘇州市近郊に新たな物流加工場の開設を計画していたが、現地側の事情で見送り、改めて候補地の選定に取り組む。
同社は日中物流の核となる中国現地法人、上海共栄泓明倉儲服務(上海共栄)を拠点に、日量1万点の検品・検針などの物流加工能力を持つ。
QTEC(日本繊維製品品質技術センター)の認証検品工場で、2009年7月には中国の国家質量監督検験検疫総局(中国検験検疫総局)から「輸出入商品検査鑑定業務資格(58号令)」を取得し、日本の大手アパレル向けを中心に対応している。
縫製地が江蘇省の内陸部や北部に移動していることに伴い、近接地での物流加工業務を要望されており、「早い時期に江蘇省内陸部での拠点となる分公司を開設したい」(石原幸造社長)という。
隣接する物流園区を活用した増値税の早期還付、外貨決済などに対応できる上海共栄と、内地と沿海部を結ぶ中継拠点として活用できる新工場の機能を有機的に使い分けることで、機能の発揮を目指す。
ボーケン/上海に新拠点を開設
日本紡績検査協会(ボーケン)は4月1日に中国・上海市普陀区に上海地区では3拠点目となる新しい試験センター「上海機能性分析センター」を開設する。
近年、機能素材や複合素材など繊維素材や製品の性質が複雑になり、それにともなう品質評価も高度化してきた。上海でも、高度な品質評価が求められることが増えており、これまで、同協会が日本で行ってきたのと同等の品質評価と設備を上海機能性分析センターに持たせる。
中村篤信専務理事が「日系企業の求める品質評価を行うには日本の市場や製品の特性を熟知したスタッフが必要」と指摘するように、複数の日本人スタッフが常駐するほか、中国人スタッフも日本向け製品の品質評価に高いノウハウを持つ。
同協会は、このほか中国で上海2カ所、常州、青島、香港、広州、杭州、寧波(事務所のみ)に拠点を持つ。これらを中心に一般衣料や皮革製品、服飾雑貨の事故事例を展示、解説する「ボーケン展示会」を開いている。3月には杭州で初開催し、多くの来場者を集めた。
一方で、東南アジア地域への進出について、中村専務理事は「生産地の進出の動きに即した動きをとる」と話し、日本のユーザーの要望も精査しながら進出を検討している段階だ。
QTEC/青島で内販用試験報告書
日本繊維製品品質技術センター(QTEC)の海外事業所には、韓国の日韓品質評価センターがある。中国では上海、青島、無錫、深せんに試験センターを設置。また、バングラデシュでは「QTECダッカ試験センター」が昨年稼働し、軌道に乗っている。
このダッカ試験センターは、首都ダッカのシルバータワーにある。ダッカでも電力事情は厳しく自家発電で対応。業務はアパレル製品・繊維服飾雑貨品の試験と検査。製品検査、耐洗濯性、染色堅牢度、物性試験、分析試験などを行う。
一方、中国の青島試験センターの現地パートナーである中国検験認証集団山東有限公司(CCIC―SD)はこのほど、中国合格評定認可委員会(CNAS)と資質認定(CMA)の資格を取得した。中国の国家機関から認められた試験所であり、法に基づく有効な試験結果報告書を発行する。
これにより青島試験センターでも「中国内販品質試験証明書」を作成することができる。中国では国内で販売される商品は、生産者や販売者が中国の法律に基づき、品質や安全性について保証しなければならず、そのために有効な試験の実施と試験結果報告書の作成が求められていた。
震災の影響では、QTEC東部事業所、東京総合試験センター、足利試験室が、カレンダー通りの営業ができるよう努めている。