2011適の条件/アジア生産の最適とは

2011年01月04日 (火曜日)

 繊維産業の中国生産が労働力不足などで揺れ動くなか、アジア全域を視野に素材調達や物流加工も含めた新たな製品生産の仕組みを構築することが2011年の大きな課題となった。最適なアジア生産を手にすることが生き残りの条件となる。

中国一極集中の緩和へ/経済連携生かす仕組み

 2010年の春節休み明け以降、中国の繊維産業で労働力不足が顕在化、同国を活用した製品OEMが不安定になり、その影響が納期遅れや品質低下などとして現れた。一方で綿花や綿糸が高騰するなど原材料は値上がりを続けている。中国生産によって「安い」「うまい」「速い」の三拍子をそろえるビジネスモデルは完全に過去のものになってしまった。

 日本は衣料製品の海外生産数量の9割を中国に依存するが、同国の変化を受けて、各商社は中国への依存度を7~8割程度に抑えたいとする。すでに昨年から、カントリーリスクが高まる中国への極端な一極集中を緩和しようと、チャイナ・プラスワンとしてアジア各国の生産拠点の強化に乗り出している。

 多くの商社で、まずベトナム、そしてバングラデシュの名前があがる。数年前からチャイナ・プラスワンの一番手として生産拠点の整備が進められてきたベトナムは実績もあり、工場の新設に動き始めている商社も少なくない。しかし、中国以上に経済成長の進化が速いと言われるだけに、飽和するのも早いと見られている。

 バングラデシュも、ユニクロが08年に本格的に生産で進出したことから注目を集めた。もともと欧米向け製品の生産拠点であり、労働力も豊富だ。ロットの問題や輸送距離の長さなどをどう克服できるかがカギだろう。

 その次の国としてはミャンマー、インドネシアという声をよく聞く。さらにカンボジアやラオスという声もあがる。いずれもAJCEP(日アセアン包括的経済連携)やEPA(二国間経済連携協定)を活用できることがひとつのポイントになっている。

 アセアンに展開する日系素材メーカーは多い。それだけに今後は素材調達も含めてアジア全域で最適な仕組みを構築することが重要なポイントになる。

 プラスワンの動きとして見逃せないのは、中国でも沿海部からひとつ奥地の省やさらに内部に入った地域での生産だ。地元の労働力を活用できれば人材確保に困らない。同じ理由で大都市部でも、近隣の主婦だけで稼働させている縫製工場なども注目されている。

 素材調達から縫製、検品、物流加工まで「品質」「コスト」「納期」のトータルなバランスを考えながら、アイテム、客先ごとの何を重視するかのニーズによって柔軟に「適地生産」を実現することが求められる。製品生産の新たな仕組みの構築が大きな課題となる11年、最適なアジア生産を組み立てられたビジネスだけが生き残る。

カケン/適・安全安心を支える/海外に11拠点

 今年は海外品の品質問題がクローズアップされそうだ。原料高・製品安が続けば、品質の低下が一段と問題視されるようになる。これを水際で防ぐのが検査機関である。

 日本化学繊維検査協会(カケン)は現在、海外に11の拠点を設ける。香港検査所(1988年11月開設)、青島試験室(2001年10月開設)、大連試験室(02年11月開設)、寧波試験室(03年8月開設)、無錫試験室(04年8月開設)を有する。

 また上海、韓国、台湾、インドネシア、タイ、ベトナムに提携機関を設け、その国にあった技術指導や日本向け試験業務(納入先の基準に応じた)のほか、工場出張検査や持ち込み検査業務を行っている。

 一方、カケン大阪事業所内には試験・検査サービスに特化した「海外規格試験室」を設置した。英マークス&スペンサーや米トミー・ヒルフィガーなど海外小売業者・アパレルから納入前検査機関として認定・指定を受けている。

 ビジネスのグローバル化に対応して、海外生産地、日本からの輸出において高品質や安心安全を下支えている。