アパレルCADソフト/新たな局面を迎える

2010年11月10日 (水曜日)

 アパレル向けCADを中心とした各種ソリューションソフトウエアが変革期を迎えている。東レACSと旭化成AGMSは情報技術分野のトレンドとして注目されている“クラウドコンピューティング(クラウド)”を取り入れ、多様化するユーザーのニーズに対応する。一方で島精機製作所は自社開発のハードウエアとの親和性、ハードウエア同様のサポート体制の充実をアピールする。

各社の強みを生かし、機能提案

 東レACS「人人人(ひとと)」は10月1日から本格的な販売展開を始めた。新たな切り口としてクラウドを取り入れたことを前面に打ち出す一方で、パターンに簡単な情報を追加するだけで、縫製仕様を立体的に確認できる三次元シミュレーション機能を実装するなど、アパレルCADとしても従来の“クレアコンポ”から大きな進化を果たしていることを強調する。

 旭化成AGMSも来春から自社のCADシステムにクラウドの導入を決定しており、10月開催の東京ファッション産業機器展(FISMA)でも、ほぼ製品に近い状態の試作版を用いての実演を行った。

 両社が導入するクラウドだが、その運用方法には違いがある。東レACSは、インターネット経由でシステムを随時ダウンロードして運用する一方で、旭化成AGMSはシステムを自社サーバーで一元管理し、ウィンドウズの標準機能の“リモートデスクトップ”などを用いて、遠隔制御する方式をとる。

 東レACSはシステムを、ユーザーの使用端末(主にPC)に取り込むことから、動作スピードは端末の性能に、ある程度依存することになる。高性能な端末を使うユーザーであれば、最新のソフトを存分に活用でき、投資に見合ったメリットを享受できる。

 旭化成AGMSはシステムを自社サーバーに集約したことで、ユーザーの使用端末の性能は、それほど重視されない。インターネットに快適に接続できる環境であれば、携帯電話やiPadに代表される携帯情報端末からでもシステムを活用できる利点がある。

 これらクラウドの導入が話題の中心となる一方で、島精機製作所の総合ソリューションシステム「SDS―ONE」「SDS―ONE APEX」はハードウエアも含めた“オール自社開発”によるシステムの連動性、最適化に強みを見せる。

 同社は自社開発のインクジェットマーキングプロッター「PMK2000」も新提案するなど、CAMなどのハードウエアも含めた提案を進めている。

 情報通信技術の革新によってCADシステムも大きな転換点を迎えた。

 これまでにない新技術を採用しているだけに、ユーザーに活用法を伝え、導入につなげるための説明会、見学会の開催も重要度を増している。各社の技術開発力だけでなく、サポートや営業展開能力も問われてくる。