2010秋季総合特集2Top interview/帝人常務・亀井範雄氏/改革はこれからが本番

2010年10月26日 (火曜日)

 帝人のポリエステル繊維事業グループは昨年夏に発表した構造改革案に沿って取り組みを進めている。工場の撤収など不採算事業の抜本的見直しはすでに完了。亀井範雄常務は「これからが本番」とし、成長に向けた戦略をいかに組み立て、具体策を実行に移していくかという段階に入ると強調する。ポリエステル繊維事業グループでは12年度に営業利益50億円を目指しており、強みが生かせる成長市場に経営資源を重点投入していく方針だ。

強みを生かせる分野に集中

――今上期の商況はいかがですか。

 アパレルSBUの市場はここ数年、高価格帯のファッションが売れず、プレーンで機能的なリーズナブル品が売れるという流れが定着する中で、我々の技術、差別化商品が大きく市場に貢献することが難しくなっています。とくに量につながりにくく、収益構造がなかなか改善しにくい形になっていました。また、輸入比率もさらに高まり、従来型ではなく新しい形のサプライチェーン構築が課題になっています。

 このような中、生産面では昨年8月に発表した構造改革案に沿って松山での生産を逐次撤退しながら、タイに移管していく作業を進めています。難易度の高い一部の商品は12年9月まで継続しますが、基本的には来年3月までに移管作業を完了します。また、事業構造としては我々の強みを生かせる分野に経営資源を集中していきます。具体的にはスポーツやユニフォームなどポリエステルの原糸や加工の機能開発を生かせる分野に注力します。こういった取り組みが成果を出しつつあり、今下期から来年度には黒字化が見えてきました。

――産業資材・製品SBUはいかがですか。

 ポリエステル短繊維と工業繊維用の糸は原料の重合生産をタイに移管していますが、一部前倒しで完了できる見通しです。市況面では自動車関連が恵まれた環境にあり、ポリエステルの原着わた、カーシート用長繊維、工業繊維とも順調に推移しています。産業資材・製品SBUはもともと黒字でしたが、より成果が出ています。

――各拠点の状況はいかがですか。

 帝人ファイバーとしての全体的な収益構造は改善されましたが、海外拠点もよくなっています。テイジン・ポリエスター〈タイランド〉(TPL)とテイジン〈タイランド〉(TJT)は赤字と黒字を繰り返していましたが、黒字が定着しました。今後は帝人ファイバーからのオーダーも増えますので、より貢献してくるでしょう。また、川中では南通帝人が安定的に収益を出しています。今後を見据えた場合、最大の拡大マーケットは中国を中心とするアジアで、逐次軸足を移していく計画です。今後、南通帝人はより重要な拠点になり、生産・販売機能を強化していきます。

 また、タイ・ナムシリ・インターテックス(以下ナムシリ)はこれまで厚地中心でしたが、マーケットがシュリンクしているためポートフォリオの転換を進めています。ユニフォームやスポーツのほか、日本向けのASEAN縫製を視野に入れた取り組みに注力しており、現在は収支トントンになりました。厚地をやめるわけではありませんが、今後はポリエステルのメリットを生かせる分野に注力しながら、マーケットも中国などのアジアや日本を拡大していきます。

――昨年秋の機構改革でグループの全体最適をみる形に変えました。

 ポリエステル事業は50年以上の歴史がありますが、これまでは各社が独自に動きながらそれぞれが力をつけてきました。しかし、今は個社で頑張って収益力を上げていく形ではなく、グループ全体の収益最大化を図るための動きが必要になっています。組織を変えて約1年が経過しましたが、個社が全体のために動きながら利益を出していく形に意識も変わってきました。

――グローバル最適生産体制の構築においては中国・ASEANのプロダクトチーム(PT)活用も視野に入れています。

 テキスタイルは歴史的に織物が強く、この部分は国内のPTや南通帝人、ナムシリとの取り組みをより強化していきます。一方でニットは南通帝人で一部やっているくらいです。今後、南通帝人でニット加工をできるように生産体制を整備していきますが、一方で充分な技術を持つ企業が出てきていますのでアライアンスを組みながら体制を整えます。

――ポリエステル繊維事業グループは12年度には営業利益50億円を目指しています。

 昨年夏に発表した構造改革に沿って、09年と10年は基盤作りを進めていますが、不採算事業の抜本的見直しは基本的に終了しました。改革はこれからが本番で、これまでの取り組みを基盤にして、今後は市場戦略をいかに組み立て、具体策をどう行動に移していくかという段階に入ります。

  ――今後の重点方針は。

 とくに奇抜な策を用いるわけではありません。我々には50年以上に渡って築いてきた大きなモノ作りのノウハウがあります。ポリエステルのポリマー、製糸、織・編み、加工の各段階を洗い直し、強みを明確にした上でそれを生かせて成長するマーケットに経営資源を集中投入していきます。

 具体例を挙げると、アパレルSBUでは中国などアジアのマーケットにどう仕掛けていくかです。また、産業資材・製品SBUでは他社にはない高機能原綿を持っています。例えば湿式不織布向けのショートカットファイバーですが、これまでは原綿販売がほとんどでした。今後は原綿が使われたモノが最終製品になっていく過程において、どの顧客がその商品の性能を決定するのかをしっかりと見極めることが重要です。キーカスタマーと接しているところとそうでないところでは情報量も大きく違ってきますから。キーカスタマーとの取り組みを深めていくとともに、原綿販売だけでなく機能紙を展開するなど、川下の中間品や最終製品まで手掛けながら新しいビジネスモデルを作っていきます。

――環境ビジネスを重視しています。

 環境ビジネスは今後も繊維事業の核であり、進化・革新を図っていく方針に変更はありません。「エコサークル」は従来のケミカルリサイクルだけでなく様々なリサイクルを包括する概念に進化・拡大を図ります。また、バイオポリエステルは大きな潮流ですので、できるだけ早い時期に展開していく。「バイオフロント」だけでなく、レパートリーを増やしながら競争力あるバイオ素材を展開していきます。

――日本の力とはなんでしょう。

 戦後から30年、日本は先端的な技術を取り入れながらそれをモディファイし、付加価値をつけて展開していく形で成長してきました。全体最適や教育・規律化でそれを低コストで作ることができる器用さは日本の強みの1つでした。しかし、今後に向けては新しい技術やコンセプトを創り出す力が重要になってきます。また、日本市場だけでは成長は難しく、世界に打って出なければなりませんので、そういった人材をいかに育成していくかが重要になります。

(かめい・のりお)

1972年帝人入社。98年工業繊維事業部長、2002年帝人グループ執行役員、05年同常務執行役員産業繊維事業グループ長、06年高機能繊維事業グループ長、07年同専務執行役員、09年4月帝人ファイバー社長、同6月帝人常務

私の古里自慢/リセットできる場所

 亀井さんは愛媛県松山市の出身で、「有名な観光場所もなく、ノーベル賞を取ったような人もいないが、変なところではなく極めて良いところ」だとふるさとを紹介する。地元の人達にとってはそうでもないらしいが、この土地を訪れた人の多くから「住みたい場所」と話される。その土地が醸し出す雰囲気が良いのだろう。亀井さんにとって古里はリセットできる場所でもある。今も年に1~2回帰るが、「気持ちが切り替わる。大阪や東京ではないモノを与えてくれるありがたい場所」と話す。