2010秋季総合特集1/日本力を下支えする検査機関
2010年10月25日 (月曜日)
モノ作りにおける「日本力」とは、品質管理の力であり、機能加工などに代表される多様な性能、あるいは安心・安全性である。こうした力は第三者機関が評価することで、はじめて信頼することができる。そうした面で、繊維の検査機関は、日本力を下支えする役割を担っている。
カケン/試験以前の開発に注力
日本化学繊維検査協会(カケン)は、「国内の事業所の試験は微増が続いている」という。国内市場の安心・安全志向は根強く、新たな機能加工に対する試験依頼などが背景にある。
とはいえ、ひとつの試験方法を確立するのにも時間と労力を要する。大阪事業所の研究開発室では、様々な調査研究を行っている。
市場ではファー(毛皮)使いの商品が多くなってきた。最近は繊維製品以外にも毛皮などから動物種の鑑別が求められている。このため、ヤギ、羊、ヤク以外の牛、ブタ、ウサギなどの動物種についてプライマー(核酸の断片)を作成し、ファーや天然皮革の試売品を対象に、リアルタイムPCR法を用いたDNAによる種の鑑別の可能性を検討した。
その結果は天然皮革の場合、皮革製造において薬剤処理を施すため、DNAが検出できなかった。ファーはDNAを検出できる試料と、できない試料に分かれた。このため、DNAによる鑑別はすべてについて適用できず、顕微鏡観察による形態学的鑑別法の補助的手段と位置づける。
機能加工の性能評価にしても、こうしたたゆまぬ研究開発の積み重ねによって可能となる。地道な作業ではあるが、メードイン・ジャパンの優位性を下支える活動である。
ボーケン/顧客サービスの充実図る
日本紡績検査協会(ボーケン)は継続して取り組む全国での展示会開催と、日本、中国の拠点を活用した機能加工の試験を改めて強化する。
今年のボーケン展示会は11月24、25日の大阪会場からスタートする。続いて、来年1月20、21日には岡山で、2月15、16日には名古屋で、同24、25日には東京でそれぞれ開催する。上海での開催も検討しており、日程を調整中だ。展示会場では、毎回好評を博す生地・製品の事故事例紹介だけでなく、ビデオコーナーや体験コーナー、セミナーなどで業界へのサービス向上に努める。
機能素材の試験に対する要望が高まりを見せているが、現状、同検査機関のレベルは「出来ないものはない」まで達しており、今後出てくる新加工に対しても対応を強めていく。
人材育成にも力を注いでおり、繊維製品品質管理士資格保有者は165人を有する。これは繊維検査団体としてはトップであり、繊維関係全体を見渡しても2位に位置する。今後も人材育成や機能加工試験の充実、展示会開催などを通じ、顧客サービスの向上に努める構えだ。
QTEC/ダッカラボ6月から稼働
日本繊維製品品質技術センター(QTEC)も、「国内事業所の試験は横ばいが続く」という。とはいえ、ビジネスの中心が東京に集中しているため、地方都市での試験は減り、東京での依頼がその分増えるという傾向である。
09年6月には東京総合試験センターを港区に開設した。これは東京地区での事業基盤の整備・拡充を目的に、産業資材試験センター、生活用品試験センター、TFTビル試験センター、分析センターを統合したもの。
多様な繊維製品を総合的に評価する試験センターをコンセプトに、特定アゾ染料や重金属など有害物質の分析、服飾雑貨や新機能製品の評価の充実など、アパレル、非アパレルを問わず顧客の多様なニーズに応える。
QTECの海外事業所は、韓国の日韓品質評価センター、中国には上海、青島、無錫、深せんに試験センターがあるが、バングラデシュの「QTECダッカラボ」が6月から稼働した。
試験室は首都ダッカのシルバータワーにあり、日本の商社も近くに多い。とはいえ、電力事情が厳しく自家発電にして対応する。業務はアパレル製品・繊維服飾雑貨品の試験と検査。製品検査、耐洗濯性、染色堅牢度、物性試験、分析試験などを行う。
ニッセンケン/安全安心のエコテックス
日本染色検査協会(ニッセンケン)は、南通崇川事業所内に試験室を新設し、試験から製品検査まで一貫して行う。また、南通人民路事業所の試験室を3倍に拡張するなど、南通における試験業務の増加に対応する。
また、繊維製品の安全性の認証として「エコテックス規格100」を展開。これは、欧州を中心に世界15カ国の加盟試験機関で構成するエコテックス国際共同体(本部=スイス)が定めた繊維製品に対する国際的な安全基準である。
1国1機関が原則で、日本ではニッセンケンが2000年に加盟。現在、80カ国以上、900社強の繊維・衣料メーカーがこの認証を取得している。日本では340~350社が認証を得ており、欧州向け輸出で重要な役割を果たす。
この世界基準作りは、年2回の国際的な技術会議で規格や試験方法を検討。毎年10月の支配人会議で決め、翌年の1月に新しい規制値を発表する。疑問のあるものはリスト表に入れ、安全性が確認できれば外すというシステムである。
最近は輸出企業だけでなく、国内向けでも法規制以上の安全意識が高まっており、エコテックス規格100の導入が増えている。また、中国に進出した日本企業向けのエコテックス規格100の認証活動も推進する。