香港の日系商社/製品事業拡大に壁製品事業拡大に壁

2010年10月01日 (金曜日)

 在香港日系商社の間では当面、中国の縫製現場がタイト化の様相を強めていることから、この代替地をオペレーションすることが重要な課題として浮上している。これまでは“チャイナリスク”や中国偏重を嫌う顧客に対して生産地を提供するという、将来をにらんだ対応だったが、中国が日系企業からの注文を嫌がる傾向を強め、「中国で思うようにモノが作れなくなった」ことから、急速に周辺国で縫製スペースを手配する必要性が高まっている。(香港で吉田武史)

バングラ、ミャンマーに熱い視線

 在香港日系商社の多くが糸・わた、テキスタイル事業で苦戦を強いられている。NI帝人商事香港は6月で原料事業から撤退した。東レ香港は「定番の原料、テキスタイルが全体として厳しくなっている」ため、差別化路線を強めている。ファイバー事業の一部では今期、不採算取引からの撤退も断行した。伊藤忠プロミネント・テキスタイル〈アジア〉(IPA)でも同様に原料事業では差別化を進める。オーガニックコットンの取り扱いを拡大し、合繊でも「特殊な糸を増やしていく」考えだ。

 定番の糸・わた、テキスタイルの売買は今後ますます厳しさを増す見込みだ。それを補完するのは差別化への傾斜と、製品事業の拡大。しかし、製品事業の拡大には中国縫製スペースのタイト化という大きな壁が立ちはだかる。これまでは中国・華南地区をメーンの編み立て・縫製地として活用してきた。リーマンショック後約1年間は華南地区のスペースもまだらに空いていたが、欧米需要、内需が急回復し、スペースが埋まった。

 現状、代替地を中国奥地に求める商社と、ベトナム、バングラデシュ、ミャンマーなどでの縫製を本格化させようという商社に分かれている。IPAは「バングラデシュ、ベトナムの体制強化」を課題に挙げる。東レ香港も、直轄の珠海、青島の縫製工場での高機能インナー生産を維持しつつ、「ベトナムとバングラデシュでの安定生産基盤の確立」を目指す。NI帝人商事香港は「ベトナムはすでに満杯。ミャンマー、バングラデシュまで広げる必要がある」とし、同時に中国国内での再整備、透き間探しに動く。豊島アジアは「東南・南アジアがいまひとつ機能していない」とし、東莞の自社工場や協力工場との太いパイプ作りを目指し続ける考えだ。

 東南・南アジア諸国が重要なのは、モノ作りのためだけではない。「アジア全体を市場として見ていかないと、香港で繊維ビジネスを展開する意味がなくなる」(IPA)。今後、香港で繊維事業を維持拡大する場合、中国内販はもとより、地の利を生かし、インドネシア、タイ、ベトナムなどを市場としてとらえた動きがカギを握ることになりそうだ。