特集・繊維企業のアジア戦略/機械編

2010年09月28日 (火曜日)

山東鐵工所/問題解決型の提案に強み/省エネ・環境まで幅広く

 山東鐵工所(和歌山市)は、染色加工工程の下晒し、染色加工、後加工の全般に関わる機器、生産ラインの開発、提案に対し、長い歴史と高い実績を持つ。1972年には生産のための科学技術の振興に寄与した企業に贈られる大河内記念技術賞を受賞するなど、常に研究開発力を軸とした製品展開を続けてきた。

 これまでの海外への機器の販売は日系企業向けを中心に進めてきた。生産ラインの製作は工場ごとに最適化した提案が必要となるなかで、中国、韓国、台湾のほかインドネシア、タイ、バングラデシュ、ベトナム、インド、パキスタンなどへの納入実績を上げている。

 近年はアジア地区でも実際の機器の機能優位性のほか、コストパフォーマンスの良さもアピールできなければ拡販につながりにくい。さらに、排水の清潔さや節水など、繊維製品の生産には直接関与しない部分での付加価値も重視されるようになってきたという。

 このような流れに対し、同社では経糸糊剤として使用されるPVAの回収装置「SS―PERCLER」をブラッシュアップするなど環境、コスト対策を進める。

 最新の機器ではハイブリッド洗浄機と乾燥熱処理機を開発。

 本社内にこれらのテストラインも完成した。いずれも繊維以外の産業資材でも活用が可能で、幅広い業種の機器テストを受け付ける。

福原産業貿易/顧客の利益に貢献/省エネ・高生産性機で

 丸編み機製造販売の福原産業貿易(大阪市中央区)の総販売台数の6割は中国向けだ。中国をはじめとするアジアは、同社にとって重要な市場だ。「日本の顧客に儲けていただけるような機械の提案に加え、アジアへの販売にも一段と力を入れる」と植村聡社長は語る。

 しかし、記録的円高とう逆風が、日本で製造することにこだわる同社の歩みを妨げる。この逆風に、「顧客の利益に貢献できる機械を開発することで立ち向かう」と植村社長は言う。例えば、より省エネを可能にする機種、より高速稼働を可能にする機種、給糸口がより多い機種を開発し、手ごろな価格で提供する方針だ。

 この方針を具現化した機種の一つが、「MXC―E5RE」。ベーシックなシングルニット機だが、普通なら1インチ間に3~3・2口しかない給糸口が5口もある。給糸口が増えると稼働スピードが低下するのが普通だが、この機種についてはそれがない。独自に開発した針、「E―NEEDLE」を採用しているからだ。

 「E―NEEDLE」は、従来よりも軽快に動くため機械に与える負担が少ない。稼働時の電力消費量も減り、機械の発熱が少ないため作業環境も良くなる。日米で特許を取得し、中国でも申請中だ。これを採用した「MXC―E5RE」の生産性は、従来比1・7倍だという。

 この針の開発に成功したことで誕生したのが、同社の最高機種の一つ、single jersey raceway 機「VXC―S3・2」だ。この機種は60ゲー ジというultra faine gaugeでありながら、通常ゲージ機に比較してもそん色のないスピードで稼働させることができる。この機種に採用されている針はもちろん「E―NEEDLE」だ。

 同社の魅力を語るうえで欠かせないもう一つの事実は、多い時でも月間100台程度しか製造しないという方針をかたくなに守ってきたことだ。同社は、自社開発モデルを、顧客が望む仕様に作り替えて納品する受注生産体制を敷いている。納品した後も、部品供給はもちろん、メンテナンス・サービスなどを懇切丁寧に行うというのが同社の方針だ。この方針を実行するために、販売台数を、サービス提供能力の範囲内に抑制している。

 技術サービス体制も一段と強化する。中国においては現在、上海と香港に設けた法人を通じてそれを行っている。このような拠点を拡充することを検討している。

AIKIリオテック/中印への輸出が堅調/国内は“ニッチ”攻める

 糸加工機メーカーのAIKIリオテック(愛知県稲沢市)は、空気加工機やエアカバリング機など繊維機械の中国、インドへの輸出を拡大している。輸出量は金融危機で大きく落ち込んだ2009年に比べ2倍以上、08年に比べても1・5倍伸長した。

 同社は売上高のうち85%が輸出を占め、昨年金融危機の影響で「受注が前年同月比で7~8割減となる月もあった」(友松義博副社長)ほど、厳しい情勢にあったが今年に入り回復。空気加工機「AT501」シリーズやエアカバリング機を中心に中印への輸出が活発に動いた。

 一方で国内の受注は多軸メッシュシートなど産業資材関連機械の受注が堅調。2年前からカーボンファイバー関連の設備に対する問い合わせも多く、PANプレカーサー送り出し装置や巻き取り装置、プリカーサーワインダーなどの生産を強めている。神津製作所と独ザーム社が圧倒的なシェアを持つ市場に対し、積極的な攻勢を掛ける。

 最近では国内の生産基盤の縮小で、内製化を図る動きが強まっており、これまで取引が全くなかった異業種の大手企業から設備投資に関する依頼を受けるケースも増加している。そのため、繊維専業以外との取引を広げ、売上高に占める割合を将来的には「4割ぐらいにしたい」との考えを示す。

カケン/検査機関のアジア展開/11拠点で海外業務

 日本化学繊維検査協会(カケン)は海外に11の拠点を設ける。香港、中国、韓国、台湾、インドネシア、タイ、ベトナムで、とくに中国には上海、青島、大連、寧波、無錫に試験室がある。

 同協会の中国展開における最大規模の試験室が上海科懇検験服務。07年に「CNAS(中国が国家基準として与える試験室認定)」、08年に「CMA(中国内販試験検査機関の資格認定書)」を取得した。

 また、上海科懇では昨年1万8000平方メートルの増床を行った。日本向けの業務が拡大していることに加え、中国内販向けの検査が増加したためだ。

 一方、カケン大阪事業所内に試験・検査サービスに特化した「海外規格試験室」を設置した。英マークス&スペンサーや米トミー・ヒルフィガーなど海外小売業者・アパレルから納入前検査機関として認定・指定を受けているからだ。

 また、海外で知名度の高い検査機関Bureau Veritas Hong Kongと技術提携し、BVCPS JAPANとして英文証明書を発行することができる。さらにISO、ASTMなど海外規格による試験・検査サービスも提供しており、グローバルなビジネスに取り組む。