特集/安心・安全届ける機能素材/安全・安心を支える製品の試験・認証

2010年08月30日 (月曜日)

 安心・安全な暮らしを支える繊維製品は多い。しかし、その製品が安全であることをどう証明するのか。第三者機関である繊維検査機関がその役割を担う。一方、オーガニックコットンの場合は、通常綿との違いを試験によって証明できない。生産のトレーサビリティーをいかに確保するかがカギとなる。

日本染色検査協会(ニッセンケン)・駒田展大理事長に聞く/安全性の担保意識高まる

――繊維製品の安全性の認証として「エコテックス規格100」が広がっている。

 エコテックス規格100は、欧州を中心に世界15カ国の加盟試験機関で構成するエコテックス国際共同体(本部:スイス)が定めた繊維製品に対する国際的な安全基準である。1992年にオーストリア、ドイツ、スイスの3国で始まり、1国1機関が原則。日本ではニッセンケンが2000年に加盟した。

 現在、80カ国以上、9000社強の繊維・衣料メーカーが、エコテックス規格100による認証を取得している。認証書発行数は9万5000を超えた。このラベルを付けた製品は何百万点にも及び、世界的に安心・安全の信頼性のある認証ラベルとして認知され、普及している。

――日本では何社くらいが認証を受けているのか。

 340~350社だ。3年前から委託加工認証も取れるようになった。このラベルは川上から取得していった方が効率的でもある。

――欧州に輸出するときに役立つ。

 全エコテックス認証書の46%が欧州市場の国々で発行されている。認証取得企業の51%がアジア企業。認証の最も多い国は中国で、ドイツ、トルコと続く。欧州輸出する上で重要だからだ。

――米国では。

 3年ほど前から米国でも共同体として宣伝を始めた。その効果もあって、米国の一般消費者にもエコテックスのラベルが知られるようになった。今後は市場として大きな可能性があるだろう。

――認証を取得するにはどのような条件が必要なのか。

 繊維製品の安全性に関する消費者保護を目的にしている。このため、人体に有害な物質の規制値を定めており、規格で定めた全条件を満たさなければならない。試験用サンプルを提出し、当協会で分析する。規制値への適合を確認、認証書を交付し、認証マークの使用許可を与える。

――規制値にはどのようなものがあるのか。

 乳幼児用の製品分類・、肌着のように肌接触の大きい同・、外衣は肌接触が少なく同・、インテリアのような装飾品は同・と分類されている。それぞれの規制物質ごとに、ホルムアルデヒドならいくつ、アンチモンならこうと決まっている。

――そうした数値は固定的か。

 世界的な技術会議を年2回開く。そこで、規格や試験方法を検討する。毎年10月の支配人会議で決め、翌年の1月に新しい規制値を発表する。各機関ともフットワークが軽く、疑問のあるものはリスト表に入れ、安全性が確認できれば外すというシステムだ。

――最近は欧州向け輸出だけでなく、国内でも関心が高まっているようだ。

 輸出企業だけでなく、国内でも法規制以上の安全意識が強まっている。大手量販店も自主基準を設けているように。

 最近は外資系アパレルが安全性の担保責任としてエコテックスの認証取得を進める。今後もグローバル化が進むほどエコテックス規格の要望は強まるだろう。

日本オーガニックコットン協会(JOCA)・日比暉理事長に聞く/新設JOTTIが認証

 日本オーガニックコットン協会(JOCA)は、JOCAの認証部門を切り離して「日本オーガニック繊維品認証協会(JOTTI)」を新設する。JOCAはオーガニックコットン(OC)の需要振興機関となるが、会員のタグシール発給システムは継続し、モノ作りのトレーサビリティーを確保する。日比暉理事長にOC市場とJOTTI設立の背景を聞いた。

――OC市場は衣料不況の中でも好調を維持している。

 オーガニック・エクスチェンジによると、09年の世界のOC製品の小売販売総額は43億ドルで、前年比35%増加した。01~09年の9年間の年平均伸び率は40%。09年は若干低くなったものの、繊維製品全体の小売販売額が前年比7%減という状況の中で、OC需要は拡大しているといえる。

――OC製品と通常綿の違いは、どう見分けるのか。

 農薬などを使わないという点で、環境負荷に違いがある。とはいえ、化学分析などで識別はできない。国際的に行われている方法は、第三者の認証機関の検査員が現地検査を行い、生産過程をチェックして認証するというもの。その基準を統一しようと、ドイツ、英国、米国、日本の4カ国でIWG(国際作業グループ)を構成し、05年に基準が完成した。日本の代表がJOCAで、この基準がGOTS(世界有機繊維品基準)である。

――GOTS認証の現状は。

 09年には55カ国・2811工場が認証を受けた。しかし、日本は10数社にすぎない。日本では認証できる機関がコントロールユニオンとエコサートの2つしかない。しかもこの認証には多額の費用を要する。日本のOC製品メーカーは中小企業が多く、小規模生産ではこの経費を負担できないという問題がある。

――どうしたらいいのか。

 JOCAは10数年にわたりOC製品の認証を行ってきた。日本国内生産に限定する、生産・出荷の単位で申請を受け、その製品に対してタッグシールを発給する、トレーサビリティーを証明する取引の書類をチェックし、コピーを保存管理するほか、生産確約書を提出するといったものだ。

 この方法はGOTSの方法とは違うが、トレーサビリティーの確保という観点では経費のかからない合理的手法と考える。JOCAでは11年からこの認証業務を中止することを決めた。しかし、中小企業対策として、新しく認証機関を設立し、中小企業基盤整備機構が発表した「オーガニックコットンに係わる表示ガイドライン」に沿ったトレーサビリティー認証を行っていく。

――それがJOTTI(日本オーガニック繊維品認証協会)。

 そうだ。この方向性は昨年の12月の臨時総会で決議した。来年からの移行ができるよう細部を決める作業を進めている。新しい会員タグシールにも、JOCAロゴを使い、OC製品に対する消費者の信頼を高めることにつなげたい。

カケン/世界の安全情報収集/大阪でバリア性試験を

 日本化学繊維検査協会(カケン)は、世界の安全性についての規制情報を収集、試験体制を整備し、投資を行っている。「規制情報は原文の裏側にあるノウハウがポイントになる。提携先との情報交換でノウハウを把握することが重要」という。

 カケンは国内に11、海外に6つの直営事業所があり、提携先を含めれば22の事業所を有する。そうした事業所でも設備によって専門性は異なる。

 大阪事業所には生物試験センター(JNLA認定試験事業者)があり、抗菌試験、防カビ・防ダニ試験のほか、バクテリア・バリア性やウイルス・バリア性といったバリア性試験を行う。生物試験室は「国立感染症研究所実験室安全基準」のレベル3に対応する。

 また、同事業所では「花粉粒子の捕集ろ過効率試験」「BFE(細菌ろ過効率)試験」など、マスクに使用されるフィルター材料の捕集ろ過性能についての試験受託も実施。抗ウイルスマスク業者からの依頼が相次ぐ。

 導入した装置は、ASTMF2299「医療用フェイスマスク素材のポリスチレンラテックス球による初期捕集効率試験方法」に規定されている仕様に基づいたもの。

 この装置は、HEPAフィルターによりクリーンな環境に維持された試験チャンバー中に、試験粒子を連続安定供給し、一定流量で吸引しながら、試験片であるフィルター材料前後の粒子数をパーティクルカウンター2台で計測し、捕集効率を測定する。

 試験粒子にはポリスチレンラテックス粒子を用いる。粒径は0・1~5ミクロンの中で任意に選択できるため、花粉粒子(30ミクロン)よりも小さいPFE(微小粒子捕集効率)試験が可能になった。