東レ/「アンフラ」販売開始/HBCDを使わない難燃原糸
2010年06月30日 (水曜日)
東レは難燃ポリエステル長繊維「アンフラ」の原糸及びテキスタイルの販売を6月から始めた。今年度はカーテン用途に向けたプロモーションから展開してインテリア業界でのブランド認知度を高め、将来的にはカーシートなどインテリア資材用途にも展開していく。販売計画は初年度240トン、3年後1200トン。東麗繊維研究所〈中国〉(TFRC))で研究開発し、東麗合成繊維〈南通〉(TFNL)で原糸生産する形で、将来的には中国市場での拡大を狙う。
「アンフラ」は非ハロゲン難燃成分の添加によりポリエステルを改質することで難燃性を付与したポリエステル長繊維。これまでは高い難燃性を持つHBCD(ヘキサブロモシクロドデカン)を含む難燃材を後加工で付与する手法が主流だったが、04年10月にHBCDが化審法の第一種監視化学物質(その物質を国に無断で製造・輸入できない「第一種特定化学物質」の候補に挙がっている物質)に指定されたことを受けて開発を進めてきた。HBCDに代わる難燃材を糸に練りこむことで、HBCDを使った後加工品と同等の機能性でより安定的に機能を発揮するようになるという。
「アンフラ」の認知度を高めるため、直接の顧客だけでなく大手ゼネコンや設計事務所、デザイン事務所などに対しても積極的に提案を進める。第一段階としてプロモーション用DVDを作って6月から配布を始め、7月には見本帳「『アンフラ』テキスタイルコレクション」と織りネームをそろえて拡販を進める。また、テキスタイル開発に関するノウハウを産地企業と共有することでラインアップを拡充していく。
まずは日本市場で展開するが、将来的には中国市場での拡大を狙う。同商品は中国のTFRCで開発し、生産は日本でなくTFNLで行う形だが、これは中国内需をターゲットにしたモノ作りを重視していることが背景にある。本格的なプロモーションを行う商品において、中国で開発して中国で生産するものはこれが初めて。
これまで展開してきた後加工品の「アンフラEX」は販売を継続するが、チョップ展開は「アンフラ」の原糸に切り替えていく考え。同社によるとカーテン市場の規模は月1350トンで、このうち防炎品は月900トンとみられる。現状では防炎素材の90%以上が後加工品で難燃原糸のマーケットは小さいが、HBCDが将来的に規制される見通しであることや排水規制などの問題から、今後は難燃原糸の市場が拡大していくとみる。価格は従来の後加工品に比べて約30%高いが、HBCDを使わない他の後加工品とほぼ同等の水準という。