ポリエステル短繊維/不織布用の重要度高まる
2010年04月27日 (火曜日)
合繊メーカーのポリエステル短繊維販売は昨年4~6月を底に回復に向かった。自動車用途の回復などが背景で、現在はリーマンショック前の80~90%の水準にまで戻ったとされる。ただしその中で紡績用途は国内紡績錘数の減少、寝装用途は製品輸入の増加など構造的な問題を抱えている。これらの用途は引き続き苦戦が予想される中、今期も不織布向けのウェートがさらに高まりそうだ。
ショートカットなどを拡大
東レは今期のポリエステル短繊維販売量を前年比ほぼ横ばいとみるが、その中で品種構成や仕向け地が変わっていくという。品種はレギュラーわたが減って、熱融着、捲縮タイプ、中空タイプなど特殊な商品をさらに増やしていく。用途は引き続き不織布向けを重視。すでに全体の50%強が不織布向けになっているが、今期はさらに比率が高まる見通しだ。仕向け地は海外よりも国内向けの比率が高まり、その分だけ高度な素材がより求められることになるという。
不織布用途の中でもとくに力を入れるのが、湿式不織布向けのショートカットファイバーだ。機能紙やフィルターなど成長が見込まれるこの分野は帝人ファイバー、クラレが強いポジションを築いているが、東レは昨年に月数10トンの商業生産を開始して新たに参入。「新参者なので一歩ずつ基盤を作り上げていく段階」(三木憲一郎短繊維事業部長)というが、今後は水処理関係を含めてより難易度の高い分野へも踏み込み、早期に月100トン体制を築く考えを示す。
帝人ファイバーのポリエステル短繊維販売も不織布用途の比率が増加傾向にあり、今期もさらに高まる見通しだ。とくに湿式不織布用途や自動車用途に力を入れるほか、衛生材料など生活資材関連も堅調に推移するとみる。
湿式不織布用のショートカットファイバーは、昨年秋の機構改革でSCチームが担当する形にしたが、今月初めの機構改革で「テピルス・ナノフロントチーム」に変更した。フィルターを中心に成長が見込まれるこの市場に対し、ショートカットファイバーのブランド「テピルス」を前面に訴求しながらグローバルに展開していく狙いがある。さらにナノファイバー「ナノフロント」も同じチームに組み込んだ。「ナノフロント」は長繊維・短繊維とも素材の特徴を明確に打ち出せる分野を中心に展開していく考えで、フィルター、不織布の研磨材など産業資材も重要なターゲットになる。
また、自動車内装材用の原着わたにも力を入れる。昨年夏に発表した構造改革案に基づき、当初は9月に松山での生産を止める予定だったが、現時点ではその計画を廃止。不織布メーカーに対する確実なフォロー体制をとるため、松山で原着わたの専門工場を維持することとした。同時にタイの原着生産体制も積極的に活用していく計画で、日本とタイの拠点を併用しながらグローバルに状況をみながら最適な形で供給していく。