紡績のシャツ地/反転攻勢の旗は“白”
2010年04月08日 (木曜日)
紡績のテキスタイル部門で大きな役割を果たしてきたシャツ地が苦戦している。要因は店頭価格の低迷だ。現在、市場に流通するシャツの太宗品は1枚1900円台。「この価格帯では、日本の紡績が関与する余地はない」と声をそろえる。追い討ちを掛けるのが先染めシャツ地供給の構造変化。中国大手紡織企業とシャツアパレルの直接貿易が拡大するなか、ここでも日本の紡績の商権が侵食される。このため、反転攻勢に向けて、白シャツ地の重要性が高まってきた。
“ポスト形態安定”も課題に
ドレスシャツは、衣料品の中でも最も早く低価格化の波にさらされたアイテムである。売り場の中心が百貨店・専門店から、ロードサイド・量販店へと移るなか、低価格化に対応するため、紡績各社は海外生産を拡大してきた。ここで大きなボリュームゾーンを形成していたのが、中国の協力工場で生産する定番先染め生地である。クールビズも追い風となっていた。
ところが近年、定番先染め生地の供給構造に変化が起こった。アパレルも低価格化からの脱却を目指して、先染めデザインシャツを強化しているのだが、その生地をヤンガーや魯泰など中国大手紡織企業から直接貿易で手当てする動きが加速した。例えば、山喜は10秋冬で先染めデザインシャツのラインアップを拡充したが、生地はすべてヤンガーからの一括調達だ。
このため紡績各社も「中国生産する定番先染めは大苦戦」(シキボウ)、「いまのところヤンガーなどとの連携が成功して安定しているが、直貿の流れが鈍化することはありえない」(日清紡テキスタイル)と声をそろえる。
こうしたなか、改めて重要度がクローズアップされるのが白シャツ地だ。「先染めはロスが多い。やはり紡績の強みが生きるシャツ地は白」との声が関係者から上がる。実際にシキボウは、インドネシア子会社、メルテックスの織布・晒し加工で白定番生地の再構築を進め、成果も出てきたという。日清紡テキスタイルもインドネシア子会社のニカワテキスタイルの織布、ギステックス日清紡インドネシアの染色加工の増強を進めており、織布から加工までの一貫生産で白定番の再強化を進める。
機能加工や風合い加工、特殊織り組織で綿100%の“爽快さ”や“上質”を打ち出すことも重要だ。東洋紡スペシャルティズトレーディングは綿100%形態安定加工「VP加工」、シキボウは校倉織り生地「アゼック」などで需要の掘り起こしを進める。
ただ、紡績のシャツ地の強みである綿100%を訴求する際、新たな課題として浮上しそうなのが“ポスト形態安定加工”の問題だ。いまやシャツ地の定番加工である形態安定加工だが、綿の良さを発揮するための風合い加工や特殊織り組織と、樹脂加工を中心とした形態安定加工は相性が悪い。「形態安定加工が、新素材開発のハードルになっている」との指摘は根強い。形態安定とは異なるシャツ地の価値観を、どう構築するかも紡績各社の今後の課題になりそうだ。