夏季総合特集3/繊維産業の下期展望

2009年07月23日 (木曜日)

窓回り品/“快適”“エコ”切り口に

 2008年のカーテン需要は、不況や買い控えの影響もあり、本来盛り上がるはずの10~12月、09年3月末にかけて伸び悩んだ。4月以降も店頭から素材メーカーまで総じて苦戦。専門店では価格競争が激化している。

 近年、遮光や遮熱、遮像、防炎など、カーテンを機能で選ぶ傾向が高まりつつある。夏を快適に過ごす、クーラー代節約にもつながるというエコ、快適性を訴求できる遮熱カーテンは今夏インテリア専門店で売れ筋に浮上。カーテン、ブラインド各社では来春夏に向け、新たな遮熱商品の投入も進める。

 川島織物セルコンは7月発売の新カーテンシリーズ「フェルタ」で、薄地カーテンの遮熱機能や厚地カーテンの保温機能をそれぞれ4段階で表示し、冷暖房効率向上や省エネ効果を訴求している。立川ブラインド工業は遮熱効果の高いブラインドを発売。熱エネルギーに変わりやすい赤外線を吸収する炭素を除去した、特殊な塗料でスラット(羽根)を着色したもので、室内への熱の侵入を防ぎ、冷暖房効率を高める。選びやすいよう、価格は通常品と同額に設定した。エコや節約の切り口で、掛け替え需要を促す動きが加速する。

 独自の機能でヒットを飛ばす商品もある。トーソーが2007年から販売するロールスクリーン「ビジック」は、従来ロールスクリーンで不可能だった、スクリーンを下ろしたまま光の量を調整できる調光機能やユニークなデザインが支持され、ビジック売上高は右肩上がりを続ける。

 東急ハンズでは、丈や幅が調整できるカーテンが売れ筋に。裾の縫い目を解くと10センチ単位で丈が伸びるカーテンや、ひだを取らず自由に幅を調整できるカーテンが、正確な窓の寸法を把握せず来店した顧客に人気だ。

 住宅着工数の減少、安価な輸入品台頭と国内メーカーにとっては厳しい経営環境が続くが、ニーズに応え、消費者に“買いたい”と思わせる商品には商機が生まれている。

検査機関/カケン、国内業務が健闘

 検査機関に機能性試験などの依頼が増えている。また大手量販店などの品質管理が厳しくなり、その役割はますます重要になってきた。

 日本化学繊維検査協会(カケン)によると、「海外拠点の伸びは抑えられているが、国内は健闘している」ようだ。国内では色変化などベーシックな試験が増え、機能性など日本でしかできない試験も増えている。

 ベーシック試験の増加は、量販店の管理基準が変わったことも一因とみられる。機能性試験増は、昨今の一般衣料にも機能性付加を求める消費者ニーズによるもの。さらに、服飾雑貨関係の試験も増えており、アパレル小売業のMDの変化を映す。

 海外拠点では、中国の青島試験室を3月に増床、5月には上海科懇検験服務が4000平方メートルの規模に増床した。大連試験室も年内に移転・増床の計画である。

 注目されるベトナムには同協会と提携するBVCPSベトナムがある。日本からカケンの駐在員が常駐し、日本向け試験の経験のあるBVCPSスタッフとともに、日本国内同様のサービスが行えるよう体制を整える。

 一方、日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は6月に東京・港区芝浦に「東京総合試験センター」(7階建・約2400平方メートル)を開設した。東京地区での事業基盤の整備・拡充を図るため。

 これに伴い、都内に分散していた産業資材試験センター、生活用品試験センター、分析センター、TFTビル試験センターを5月末に閉鎖し、同センターに統合。「多様な繊維製品を総合的に評価する試験センター」と位置づける。

 同センターにはアパレルラボのほか、分析ラボ、生活用品ラボ、産業資材ラボを設置。アパレル、非アパレルを問わず多様なニーズに対応する。QTECは昨年10月にも福井試験センターを増設しており、環境シミュレーターを新設するなど機能性試験を強化する。

服地卸/対応力と独自性の両立

 2009年が始まって以降、月を追うごとに厳しさが指摘されてきた衣料向けテキスタイル販売。09秋冬向け商戦も盛り上がりなく終わった。

 その原因として、昨秋から続く店頭での衣料品販売不振を受け、アパレルメーカーや量販店OEM事業を請け負う商社が独自性のあるモノ作りに消極的になっていることがある。さらに消費者志向が分散化し、共通する志向が低価格という市場環境では、大きなトレンドを生み出しにくいことも、服地での売れ筋企画不在の状況を作る要因の一つといっていい。

 一部、09年前半には“すごもり消費”の影響か、ルームウエア市場の拡大など、新たな動きの指摘もあったが、局地的な展開にとどまり、全体的な上積みには至っていないのが現状だ。

 現在、各社は2010春夏商戦に向け、企画面だけでなく、様々な提案方法を用いて、受注増につなげる施策を打ち出す。

 新企画に対する提案意欲は高く、宇仁繊維は今年4月に大阪で初の総合展を開くなどの単独展強化を進めたほか、京都筋の服地卸数社による大阪合同展開催など様々な手段でアピールの場を増やしている。また瀧定大阪が7月下旬開催の2010年春夏企画展示会を、これまでの部門単位から全社総合展型に変更するなど展示会の形にも変化が表れてきた。

 さらにテキスタイルの独自性を打ち出すには、ノウハウを蓄積する国内の織布業、ニッター、染色加工業との連携も不可欠になる。6月の「イデアトーカイ」に販売協力企業として瀧定名古屋、サンウェルなど複数の服地卸が参加、提案から一貫販売体制をアピールした。

 現在、服地卸では要求される低価格、短納期小ロットの対応力を強化し、厳しい商況をしのぎながら、自社の独自性を維持するという難しい舵取りを強いられている。引き続き販売先と生産背景との連携を強め、市況回復時の反転攻勢につなげていくのが当面の施策となる。

縫製関連機器/高機能と問題解決型の提案

 2008年秋からの世界同時不況の影響もあり、繊維産業でも縫製現場の設備投資意欲は大きく低下した。現在、ミシンの最大市場となる中国でも販売不振が目立ち、09年3月期決算ではJUKI、ペガサスミシン製造、ブラザー工業の販売実績に大きく響いた。

 09年後半に向けて中国市場の回復の早さ、需要の底堅さに期待する声は多い。それと同時に、中国の日本製ミシンの需要は安定期に入り、今後の日本製ミシンの大きな需要はベトナム、バングラデシュを中心とした東南アジア地区に移動すると展望されている。

 そのうえで中国の次の販売局面に向け、コスト管理や高付加価値製品を企画するための各種ソリューション提案が進む。

 ペガサスミシン製造はデジタル作業分析システム「DPA」を使った縫製ライン全体の最適化提案を重視する。

 DPAは縫製作業ごとの動画を基本単位として製品製造全般の管理、改善をシミュレートできるソリューション。納期の設定や生産コスト管理にも活用できる。

 このほか、アパレル製品企画の段階から実生産まで一貫して効率化を進める高機能ソリューションソフトの提案強化が目立つ。

 東レACSはアパレル市場の変化に対応して、各製造工程の高級化、利便性の追求、コストダウン化を支援するソフトを提供していく方針を示す。

 同社のアパレルCAD「クレアコンポ」はパターンメーキング、マーキング、グレーディング、デザイン、縫製仕様書作成をサポートする。

 マーキングの「マーカーマジック」のオプションソフトでは、自動マーキングソフト「オートアドバンス」を提案。

 これは、マーキング作業を自動で実行するオリジナルツール。従来品より収率、スピードが改善されている。

 レクトラや島精機などからも自社製のCAMなど、ハードウエアと連動する形で自社製ソフトウエアの提案を進めている。