逆風の中で・テクテキスタイル訪問記(2)ミーティング重視の出展

2009年06月30日 (火曜日)

 日本の展示会でよく問題となるのが、ビジネス重視の商談会なのかどうか。費用対効果から出展を取りやめるケースも少なくない。その論点でとらえると、テクテキスタイルはかなり異質。帝人グループや欧米の高機能繊維や不織布企業は、顧客とのミーティングを主体としており、展示会で新素材を大きく打ち出すような姿勢は少ない。

 過去何度もテクテキスタイルに出展してきたクラレ。豊浦仁原料資材部長は「PRの場に加え、ミーティングの場として定着してきた」と話す。高強力ポリアリレート繊維「ベクトラン」をメーンにビニロン・K―2や水蒸気不織布「フィリベンディー」(日本では「フレクスター」)、ベクトランのポリマーによる湿式不織布「ベクルス」、次世代人工皮革「クラリーノ ティレニーナ」などを出品した。

 その展示スペースと同程度の規模で閉鎖できる部屋をブース内に設け、さらに他の場所にも会議室を借りた。「1日3~4件のミーティングがある。新規の商談は意外に少ない」と言う。欧州は広い。各国の需要家を訪問するよりも、会場でミーティングを行う。それは効率的でもある。その場としてテクテキスタイルを活用している。

 もちろん、すべての日系企業がミーティング重視で出展を決めているわけではない。新素材を出品し、海外顧客を開拓しようとする企業もあった。クラレブースに展示されていたクラレリビング(大阪市北区)の高性能導電繊維もその一つ。カーボンナノチューブを繊維にコーティングしたもので、茶久染色(愛知県一宮市)、松文産業(福井県勝山市)、北海道大学と共同開発した。2010年からの本格展開を計画する。

 クラレリビングの秋庭英治研究開発部長によると、導電性は金属並みであり、薄く軽いのが特徴。専用の試験設備(年産10トン)を導入した茶久染色の蜂矢雅明開発部長兼技術部課長も「比重は電線の6分の1。目指すは電線代替」と意欲を見せる。ブースでは導電性を実感できる器具を置き、来場者が性能を体験して驚く姿も見られた。