変わる風景・大手紡績の3月期決済(下)リストラ加速は必至

2009年05月21日 (木曜日)

 大手紡績7社の今期業績予想を見ると、ダイワボウ情報システム(DIS)との統合効果が通期で表れてくるダイワボウを除く6社が減収計画となる。厳しい経済環境を考慮したものであると同時に、今期は各社とも事業のリストラクチャリング(再構築)が避けられないからだ。

 最も大胆な改善策を打ち出したのはクラボウ。すでに岡山工場、津工場の閉鎖を決めた。これでデニム糸の国内生産縮小、羊毛の自家紡織・ニットの自家加工から撤退することになる。とくに羊毛とニットは採算の取れる差別化品への特化を進め、黒字浮上を目指す。

 日東紡も紡績事業子会社、ニットーボー新潟の設備を半減し、海外生産に移管することを発表した。また、前期に赤字転落した建材事業は千葉工場を閉鎖するなど、繊維事業以上に大胆なリストラを断行する。オーミケンシもニット編み立ての飯田工場を休止し、プリント配線基板事業からも撤退するなど構造改善策を発表した。婦人アパレル子会社、ミカレディの改革もいまだ途上である。

 日清紡ホールディングスは前期で繊維事業単体の再構築をほぼ完了した。今期はCHOYAの改革がすべて。すでに主力取引先である百貨店に対し、納入掛け率やFA派遣契約の変更など取引条件改善に向けた交渉を進めている。分社化による効率化にも期待がかかる。

 前期は健闘した富士紡ホールディングスは、稼ぎ頭の研磨材が減収減益計画。経費削減など自助努力で市況の回復をじっと待つしかない。繊維事業はフジボウテキスタイル和歌山工場の改革に着手する。現在の加工能力は月120~130トンだが、閑散期に月80トン程度まで受注が落ち込み、半期で大幅な赤字を計上する点を考慮。今期は月80トン以下の受注量でも利益が出るように人員の適正化などを行う。

 シキボウも収益の柱である産業材が減収減益を予想。主要顧客である製紙メーカーの減産解除までは、我慢の展開である。繊維事業は引き続き構造改善の継続とメディカル分野強化、海外展開の充実などで増収増益を計画する。

 ダイワボウは、6月からダイワボウホールディングスとして新たな出発。繊維事業子会社を統括する中間持株会社、大和紡績も発足する。今期は繊維事業とITインフラ流通事業という異質な事業領域が並立することから、グループ全体でのコミュニケーションが最大の目標だ。そのうえで、衣料品・生活資材事業は黒字浮上が至上命題となる。

 もう一つ、各社共通の課題が売り上げの減少だ。一時的に採算が改善しても、売り上げ減少が続けば、その収益力も失われることは必定。「現在の不況から回復しても、市場の風景は大きく変わっている」というのが各社トップの共通認識だが、今期は守りを重視した布陣の中で、新たな業容拡大に向けた布石をどれだけ打てるかという点も重要になる。