不織布新書09春/ニッポンの技術力

2009年03月26日 (木曜日)

 厳しい環境が続くものの、不織布メーカーの開発意欲は衰えていない。不織布は商品開発によって用途を広げるという基本コンセプトが徹底されているからに他ならない。景気低迷で新不織布が軌道に乗っているとは言い難いが、それでも開発マインドは弱まっていない。それを失えば不織布も縮小均衡の道をたどると知っているからだ。不織布におけるニッポンの技術力を探る。

旭化成せんい/FNB試験設備が稼働

 旭化成せんいは社長直轄のFNB(不織布ニュービジネスプロジェクト)で進めてきた新不織布の試験設備を立ち上げた。4月からは不織布事業部の所管となり、本格事業化を加速させる。FNBの詳細は明らかにしていないものの、関係者への取材を総合すると、これまで紡糸できなかった複数の新ポリマーが使用可能で、既存ポリマーであればさらに高品質な不織布が作れると言う。設備幅は1メートル強と見られる。

 せんい先端技術センターに置く不織布技術開発部に組み込み、営業もバックアップする形で用途開拓を加速する。

アンビック/溶融、溶媒ナノ不織布研究

  ニッケグループのアンビックは福井大学(大学院ファイバーアメニティ専攻・小形信男教授)と共同で、溶融型によるナノファイバー不織布の開発を進めている。

 「兵庫県COEプログラム推進事業」に採択されたもの。同社はひょうご科学技術協会の新産業創出支援事業にも採択され、京都工芸繊維大学を含めた産官学連携で溶媒型によるナノファイバー不織布の試験機(チェコ・エルマルコ製「ナノスパイダー」)を導入しており、溶媒、溶融のナノファイバー不織布の本格化に向けて開発を加速する。

クラレクラフレックス/水蒸気不織布、建材へ

 クラレクラフレックスの水蒸気不織布「フレクスター」による建材への展開が本格化しそうだ。フレクスターは年産1000トン(機械幅1・6メートル)の規模。1平方メートル当たり50~2000グラム以上まで幅広い厚みの製品が作れる。伸縮包帯向けが日欧向けに販売をスタートしており、ブラカップ向けでも今秋冬物には販売を始めるが、大型用途の一つ、建材用も5月ころに本格化できる見通し。その一環として、3月開催の「建築・建材展2009」にも2年連続で出展した。

 吸音性、遮熱性、通気性など他材料と比較をアピール。海外では4月22~27日にイタリアで開催される国際家具見本市「ミラノサローネ」、5月20~22日、中国上海で開催されるアジア国際不織布産業総合展示会・会議「ANEX2009」、6月16~18日、ドイツでの産業用繊維と不織布見本市「テクテキスタイル」などにも出品する。

チッソ/混繊MBを本格化

 チッソの混繊メルトブロー不織布(MB)「エルフィノ」は2種類の樹脂を原料とする。同社は芯鞘構造のオレフィン系複合スパンボンド不織布「エスボンド」を製造するが、エルフィノの事業化で、さらに不織布製品の機能性を高めるのが狙い。

 エルフィノは樹脂の変更や組み合わせなどによって、伸縮性、接着性など様々な機能性を発揮することができる。伸縮性のあるEL、接着性を持つAD、複合化のLM、後加工を施したPR、生分解性樹脂によるECOの5シリーズをそろえており、一部、化粧雑貨にも採用されていると言う。

 MBの試験設備を実用機レベルにまで改造。インラインで他製法不織布との複合化も可能にした。生産能力は年産300~400トン(製品幅50センチ)。

日本バイリーン/九大とシリカナノを開発

 日本バイリーンはこのほど、九州大学大学院工学研究院とシリカナノファイバーを開発、量産化技術の確立に向けて動き出した。同社はナノファイバー不織布について「将来的な柱事業になる」と期待する。ナノファイバーの独自研究は10年以上前から。すでに静電紡糸法(エレクトロスピニング法)によるナノファイバー不織布を製造。直径100~1000ナノメートルで、1メートル幅で4・5グラム(1平方メートル)の均一なシートを試作ベースの量規模で販売するが「革新的な技術分野での商品開発は単独でなく、大学や企業などとのコラボで進めていく」。その一つがシリカナノになる。

 同社のシリカナノファイバーはゾルゲル法でシリカの純度が高く、300~1000ナノメートルと極めて細く、吹き飛ばし法の問題である繊維径のバラツキがなく、均一であることが特徴。断熱材、回路基盤材料、理化学分析用フィルターなどを狙う。「九大はシートに酵素を固定化する研究を進め、実用化に向けて取り組む」という。

ダイワボウポリテック/原綿生かしウレタン代替

 ダイワボウポリテックの「ミラクルファイバー〈CQ〉V」は芯に柔軟で曲げ回復性の大きい特殊ポリエステル系、鞘部分は耐変形性、耐熱性に優れる特殊ポリオレフィン系の樹脂を使用したクッション材だ。リサイクルも可能で、要望に応じてポリオレフィン100%タイプも生産できる。不織布だけでなく、成型加工メーカーとも連携しながら用途開拓を進めている。

 従来のクッション材用複合繊維は鞘にエラストマーを使用していることが多いが、エラストマーは耐熱性が低く熱加工時にへたりが発生してかさ高不織布が得られないという問題があったという。