マイクロアクリル/紡績各社で素材開発強化

2008年11月13日 (木曜日)

 中国での需要減退で、合繊のアクリル短繊維事業は厳しい環境に追い込まれているが、そのなかでもマイクロアクリルは比較的堅調な動きを見せる。大手SPAやインナーメーカーがマイクロアクリルを使った製品を大々的に展開するなどで需要が増加、そのような動きを受け、紡績各社は技術力を背景に、マイクロアクリルを使った素材開発を強めている。

 ユニクロはインナーの「ヒートテック」をこの冬から海外でも展開を開始し、2800万枚の販売を計画する。ワコールでは07秋冬で93万枚の爆発的な売れ行きを見せたインナーの「スゴ衣」の販売計画を今秋冬144万枚に拡大、レディースだけでなくメンズやマタニティーまで商品群を広げる。いずれも素材にはマイクロアクリルが使われ、これまでにない機能性や風合いが訴求ポイントと言える。

 マイクロアクリルは一般に繊度1デシテックス(T)以下のものを指す。細繊度原料を紡績する場合、糸切れが発生しやすく生産効率が落ちるといった技術的な難しさがあり、海外ではなかなか紡績できないのが現状だ。そのような技術的な側面とともに、マイクロアクリルそのものの風合いや機能性、触り心地の良さなどが消費者に認知されつつあり、アパレルの採用も目立ってきた。

 早くからマイクロアクリル素材を積極的に打ち出してきた東洋紡スペシャルティズトレーディング(東洋紡STC)では今上期、「極衣」の引き合いが好調だったことで売上高が前年同期比で15%も伸びた。今秋冬向けでは薄くて軽く、暖かいという機能性にストレッチ性や起毛による触感など、生地のバリエーションを拡充、提案の幅を広げる。

 他社でもマイクロアクリルを使った素材開発が目立ってきた。クラボウはマイクロアクリルとレーヨンやキュプラ、綿それぞれとの複合素材「シェイプクリア」を投入。特殊な紡績法によりピリングを抑え、中空綿糸「スピンエアー」タイプであることから、触感のよさに加え、保温性という機能が売りだ。

 新内外綿は、得意とする「テンセル」で三菱レイヨンのマイクロアクリル「ティミアン」との複合素材を開発している。第一紡績でもマイクロアクリル100%素材など、マイクロアクリルに関連した素材を拡充した。

 一方、原料を提供する素材メーカーでもアクリル素材の細繊度化に取り組む。日本エクスラン工業では来秋冬向けに保温素材「エクス」や「セラムA」で繊度がTのマイクロタイプを打ち出し、幅広い用途へ提案する。

 三菱レイヨンでもマイクロアクリルのトータルブランド「MIYABI」を打ち出し新しい需要を模索する。軽量性に加え、アクリルの保温性、独特のぬめり感・落ち感を特徴に、丸編みを中心とした生地展開を進める。

 東レは、マイクロアクリルを大量に生産できるよう、4~6月に生産設備を改造した。単にわたを供給できるだけでなく、瀬田工場や大垣扶桑紡績など紡績設備を持ち、糸を安定して供給できるのが強み。その強みを製品事業にまでつなげ、他社との差別化を図る。