トップインタビュー/伊藤忠商事専務繊維カンパニープレジデント・岡藤正広氏/M&Aで新たなステージに
2008年10月30日 (木曜日)
伊藤忠商事・繊維カンパニーが中期目標に掲げる純利益300億円構想実現に向けて、岡藤正広専務・繊維カンパニープレジデントは「早期に達成するためにM&A(合併・買収)を積極的に進める」と強調する。10月には副資材最大手の三景を傘下に収め、ブランドビジネスにとどまらない新たなステージに踏み出した。・消費者起点のマーケティング発想・付加価値がある取り組み・右左のトレード・仲介でないイニシアチブを取ったビジネス創造――を掲げる岡藤専務に、繊維カンパニーの舵取りを聞いた。
カンパニー成長戦略の柱
――三景の買収は注目を浴びました。
三景自身がより収益力を高めることが最優先です。同時に三景が持つビジネスインフラを活用したい。とくに中国市場での活動強化のために同社の機能、力を使いたいと考えています。また、中国繊維法人の伊藤忠繊維貿易〈中国〉(ITS)が現地アパレルを対象にOEM(相手先ブランドによる生産)事業を手掛けており、副資材の取り組みを加えてこれをさらに拡大する狙いもあります。
――三景はアパレルOEM事業も手掛けていますが。
三景はOEM事業を年間200億円規模手掛けていますが、伊藤忠本体との融合は考えていません。本体、伊藤忠モードパル、三景の3社がOEM事業を競う形が理想であると考えます。
――「ブランド戦略からM&Aへ」という大きな転換ですか。
「ブランド戦略の次のステージ」と位置づけています。新ビジネス領域の企業買収と、その効果による既存ビジネスの深耕を「次の成長戦略の柱」と位置づけ、「攻め」の姿勢を鮮明に打ち出したものと理解ください。利益の極大化を考えるとき、ブランドビジネスだけでは限界があります。
――米国に端を発した金融危機が高まっています。これが景気、あるいは繊維マーケットに与える影響について、どのようにご覧でしょうか。
景気の減速は明らかで、消費市場は一段と厳しくなるものと見ています。足元の繊維マーケットも影響を受けざるを得ません。しかし、わたしはいつも言っていますが、繊維業界は戦後の一時期を除いて「好況をおう歌した」時代はまれでした。常に発展途上国の追い上げを受け、「厳しい、厳しい」と言いながら時代をくぐり抜けてきました。この繊維の底力を過小評価すべきではありません。
一方で、前向きにとらえるべきこともあります。株式の下落で、欧米企業の時価総額が下がり、M&Aの話が多く寄せられてくるようになりました。有利な条件であれば積極的に仕掛けていくチャンスが到来しました。
マーケティング発想を
――今期の純利益を220億円と計画されています。
半期を終えた段階で射程圏内に入れました。少しでも上方修正できるように収益力を高め、早ければ09年度に300億円大台に乗せられるよう取り組みたいと考えています。
――伊藤忠の“価値”“強み”はどこにあるとお考えでしょうか。
第1に消費者起点のマーケティング発想です。第2は付加価値がある取り組みを常に念頭に置いていること。商社は情報の時間差でもうけてきた時代が長かったですが、今はそんな時代ではありません。付加価値そのものが重要です。第3は右左のトレード・仲介ではなく、当社がイニシアチブを取ったビジネス展開になります。人のものを買ってきて売ってもうかる時代は過ぎ去りました。この3点が収益力を高めるためにはなくてはならないものです。
――純利益300億円実現のためには海外事業が欠かせません。とくに中国をどう位置づけますか。
全社収益に占める海外比率は6割に達していますが、繊維はその半分程度しかありません。そこで海外のどこで稼ぐかが問題になりますが、欧米中という3極の比較でいちばんハードルが高くないのが中国です。カントリーリスクは高いけれども、日本商社である伊藤忠に期待をしてくれています。
中国の繊維産業は今まで増産、増産で量を追い、もうけることができましたが、時代は変わりました。伊藤忠の機能が発揮でき、ふさわしいリターンが得られる領域を見つけなければなりません。ヘッドクオータを香港に移した繊維原料ビジネスは健闘しています。
――中国でのブランドビジネス強化策は。
直近の「レスポートサック」は成功しています。当初は中国消費市場に対する経験、知見も乏しく、損をしないようにと恐る恐るやってきました。レスポートサックで半歩進んだのは事実で、次はもう一歩踏み出した仕組みを作ります。
ブランドに限らず中国ビジネスでは、いい現地パートナーと組むことが必要不可欠です。伊藤忠が直接小売りを単独でやることはあり得ないし、ブランドビジネスの日本での成功体験をそのまま持ち込んでもうまくいかないでしょう。
今、中国企業から伊藤忠と組みたいと声がかかるのは、この点を評価していただいているからだと思っています。ブランドビジネスを中国でどうするかという発想はしません。付加価値を生み出してもうかる仕組みを作るためにブランドをどう活用するかです。
(おかふじ・まさひろ) 1974年伊藤忠商事入社。2004年常務執行役員・繊維カンパニープレジデント、同年常務、06年から専務。
私の愛用品/修理に出して、ありがたみ
愛用するバッグのファスナーがつぶれ、修理に出した。かれこれ3年近く使っているが、「修理に出してみて初めてありがたみを知った」と帰ってきたバッグを愛でる。そのバッグはハンティングワールド製「ミッドランド・クラッチバッグ」。ものがたくさん入るのと持ちやすく疲れないのが特徴で、ほんに何でも入っている。「もういいです」と申し上げるまで、移動の際に目を通す書類からお守りまで次から次と出てきて驚きました、ハイ。




