伊藤忠商事/ポストブランドはM&A
2008年09月29日 (月曜日)
ブランド戦略からM&Aへ。26日、東京で会見を開いた伊藤忠商事の岡藤正広専務・繊維カンパニープレジデントは、今回の三景の買収劇を「ブランド戦略の次のステージ」と語る。新ビジネス領域の企業買収と、その効果による既存ビジネスの深耕を「次の成長戦略の柱」と位置づけ、「攻め」の姿勢を鮮明に打ち出す。
三景の2008年2月期の売上高は810億円、総資産は500億円で“副資材界のガリバー”的存在だ。同社が05年、産業再生機構が債権買い取りを決定する以前にも伊藤忠商事が支援する計画があったが、「複雑な業種で手に負えない」(岡藤専務)と手を引いた。
しかし、3年が経過した現在、原燃料の高騰やそれに伴う繊維関連企業の倒産の増加、衣料品販売の低迷など、繊維を取り巻く事業環境は激変した。
「繊維業界で残る唯一の総合商社としての自負がある」。川上から川下まで、繊維業界のすべてをカバーし、業界全体の発展に貢献することを方針とする同社にとって、東京地区で70%のシェアを誇る三景への支援は「繊維カンパニーとしての使命」でもある。
だが、使命と自負だけでビジネスは成り立たない。「アパレル製品OEM(相手先ブランドによる生産)はコア事業」と位置づける同社にとって、縮小する日本市場だけに目を向けているわけではない。狙いは中国内販だ。岡藤専務は「中国でのビジネスにはパートナーと武器がいる」と語る。三景は中国マーケットに向け、ビジネスを飛躍的に成長させる「武器」に他ならない。三景の持つ生産背景を活用した副資材の安定供給で、「安心できる製品展開」を加速し、中国を中心にOEMビジネスを活性化させる戦略を掲げる。
「現在は大きなブランドもなく、消費者のブランド離れが進み、ブランドビジネスは次のステージにある」と岡藤専務。今回の三景買収は、M&Aを次の成長戦略を柱とする、いわば初めの一歩。「ファンドも撤退し、投資をするには今がチャンスの時」。今後はさらなる買収を視野に、「攻め」を貫く方針だ。
三景買収でOEM活性化/100億円以上を投資
伊藤忠商事は25日、三景ホールディングから副資材最大手の三景の発行済株式90・3%を取得する契約に調印した。買収金額は100億円以上。伊藤忠商事の商品調達力や海外の情報力を三景が活用することでシナジー効果を発揮し、アパレル製品OEM(相手先ブランドによる生産)事業の活性化を目指す。
伊藤忠商事の保有株式は、既存保有株式と合わせて90・5%。三景は同社の連結子会社となる。今後は常勤役員4人、監査役2人を派遣する予定で、三景の児島康信社長は留任する。
三景をグループ会社化することについて同社は「繊維業界にとって非常に意義のあること」と述べ、繊維業界全体の活性化にも期待を寄せた。
三景・児島康信社長のコメント 今後、伊藤忠商事と連携を強化し競争力を高める努力を行うとともに、三景として引き続きお客様重視の経営を進めていく考えだ。