合繊・インナー素材/合繊ゆえの“機能”、前面に

2008年09月12日 (金曜日)

 原油高や景気停滞などの影響で、素材販売の苦戦が続くなか、インナー用途の素材販売も例外ではない。ただ、一部で天然繊維では表現が難しい機能性や風合いなどを持った特色ある合繊素材が消費者に受け入れられ、認知度も高まってきた。合繊メーカーはニーズをとらえてインナー素材の開発につなげるとともに、低迷する国内市場を製品対応や、輸出拡大でカバーする動きを強めている。

製品対応、輸出攻勢も

 最近、インナー市場では消費者に素材の機能性を大きく訴えることで、爆発的なヒットを放つケースが目立っている。ワコールではアクリル肌着「スゴ衣」が大ヒット、今秋冬144万枚の販売計画を立てる。イオンもPB「トップバリュ」紳士肌着で、今秋冬向けに東洋紡のアクリル混素材「ヒートファクト」を投入し、前年比5倍の売り上げ増を狙う。ユニクロでは東レと共同開発した高い保温力を持つ機能性下着「ヒートテック」が品切れを生じるほど売れるなど、インナーでの合繊素材の存在感が高まってきた。

 その影響から素材の一部で堅調な動きが見られる。東洋紡スペシャルティズトレーディング(東洋紡STC)のインナー事業部は今秋冬向け丸編み素材で前季比15%増の売上高を見込む。とくに超極細アクリル素材「極衣」は「機能性の豊富な点が評価された」(松若浩蔵インナー事業部長)ため販売が好調だった。

 ただ、インナー市況全般を見れば国内では「市場が縮小し、かなり悪い」(東レ)というのが実情。ナショナルブランドの販売不振の影響が大きいため、海外市場の開拓や製品対応を強める傾向にある。

 5、6年前から欧州向け輸出を始めた帝人ファイバーの機能テキスタイル販売部では、インナー用途の糸、生地の販売数量のうち3割が輸出。マーケティング部やミラノに拠点を持つ帝人香港との連携を強め、輸出を5割にまで引き上げる。

 旭化成せんいでも輸出を重要視。スパンデックス「ロイカ」のインナー用途での生地輸出は全体の4、5%で、早期に10%まで伸ばす。新開発の酸性染料に対して染着性を飛躍に高めた「ロイカDS」は、モールドブラジャー用途として「欧州から高い評価を得た」(ロイカ事業部の鈴木雅晴インナー・レッグ素材営業部長)ことから、早くも引き合いが来ている。

 東レのスポーツ・衣料資材事業部では、カチオン可染ポリエステル繊維の2ウエートリコット素材「マイクロムーブ」を中心にインナー素材の6、7割が欧米を軸にした輸出向け。中国の東麗酒伊織染〈南通〉との連携を図り、海外に広がる取引先の縫製拠点への対応に力を入れる。

 製品対応では、旭化成せんいがキュプラ繊維「ベンベルグ」を日本から持ち込み中国で紡績、編み立て、染色、縫製までの仕組みを構築。対日本輸出だけでなく欧州向け輸出も始まり「ブランド価値、高級感でシェアを広げる」(成松正人ベンベルグ営業部長)考えだ。

 東洋紡STCでも差別化糸を使った製品を生産する「中国成型インナーオペレーションシステム」の活用に本腰を入れ始めたが、「あくまでも生地売りが軸足」(松若事業部長)。製品ビジネスをツールに新たな顧客層の開拓を進める。