スパンボンド不織布/ポリエステルの反撃始まる

2000年10月02日 (月曜日)

 ポリエステルSB(スパンボンド不織布)メーカーの反撃が始まった。ユニチカは「エルベス」など複合タイプ、東洋紡はポリエステル100%使いで増設をほぼ決定。東レも韓国の東レセハン、コーロンと連携しながら海外拠点での増設も視野に入れる。

 ポリエステルSB三社に共通するのは素材特性に合致した得意用途を持ち、それを深耕してきた点。これは紙おむつでの商権確保を主眼に増設を競うポリプロピレンSBメーカーとの大きな違いだろう。ポリエステルSBが主役の座を奪い返す日は近いかもしれない。

 業界の推定によると、今年一~七月のポリエステルSB生産量は前年比約一三%増で、各社ともほぼフル生産フル販売状態で、玉の融通にも苦慮している。これに対してポリプロピレンSBは約三%減。紙おむつの尿漏れ防止ギャザーで急成長したポリプロピレンSBも内外メーカーによる競争激化やSMS(メルトブロー不織布をSBで挟み込んだもの)化などで苦戦を余儀なくされている。

 ポリプロピレンSBは、価格的にもレギュラータイプ一キロ当たり二百円台での攻防戦と言われ、あるメーカーによれば「紙おむつ用ポリプロピレンSBは収益面で何ら役に立たないはず」という状態にある。

 これに対し商品開発、用途開拓を地道に取り組んできたポリエステルSBメーカーの鼻息は荒い。

 最大手のユニチカは今上期売上高が一〇%増となり「収益的にも予定通り」(峰田喜彦執行役員スパンボンド事業本部長)、東洋紡は売上高で2ケタ%近い伸び、収益も増益を確保する見通しで「下期もこのペースを維持できる」(川﨑幸雄SB事業部長)と自信を深める。東レもフル生産フル販売を続けており、ポリプロピレンSBメーカーの大手二社である三井化学、旭化成と対照的な構図にある。

 ユニチカは「エルベス」を中心とする複合SBの用途を拡大。紙おむつ向けにも投入するが、フィルムや紙と張り合わせる雑貨用途で販売量が増加。「よさが認められた」(峰田執行役員)と手応えを得たことから、年産一万トンクラスの専用設備を導入する計画だ。

 東洋紡は建築防水基布、カーマット基布、土木資材の三本柱。三十億円を投じて岩国工場に年産六千トン設備の導入を決めたが「開発テーマはその三倍、一万八千トンはある」(川崎SB事業部長)との自信を示す。

 東レも東レセハンのポリプロピレンSMMS(SMMSより一層、メルトブロー不織布が多い)増設ばかりが喧伝されるが、ポリエステルSBも得意のカートリッジフィルター向けが好調。カートリッジフィルター向けは今上期、輸出で三〇~四〇%増を記録した。「国内市場の開拓に向けて単純な基布販売ではなく、製品提案できるほようにする」(青木隆夫アクスター事業部長)とマーケットイン指向をより強める。

 延岡支社でのSMMS大増設が話題の旭化成もポリエステルSBは五十グラム以下中心という低目付商品で独自市場を作り上げている。

 不織布は商品開発と用途開拓で市場を創造してきた。SBもその牽引車のひとつである。しかし、ポリプロピレンとポリエステルでは全く方向性が異なる。どちらが不織布らしい事業かは一目瞭然だろう。