有力機械メーカーの販売戦略
2008年05月29日 (木曜日)
村田機械/認知度高まる「ボルテックス」
村田機械の革新空気精紡機「ボルテックス」の認知度が高まってきた。長い歴史のなかで、リング紡績での開発がほぼ行き着くところまで行き着いた結果、新しい付加価値創造型の精紡機として国内外の紡績で採用する動きが加速する。また、ツイスターも新たに産業資材用途に本格参入した。
ボルテックスが注目を集める背景には、日本や海外の紡績がこれまで以上に高付加価値型の糸作りを模索する一方、リング精紡の技術はほぼ開発され尽くしたということがある。このため、リング精紡とは全く異なる方法で精紡するボルテックスでの糸開発に踏み切る紡績が増加した。
すでにセルロース繊維の紡績では、その性能は実証済みだ。毛羽を抑え、ハリ・コシ感があり、吸水性に富むボルテックス糸は近年、セルロース繊維の紡績で大きな存在感を示す。同社では、引き続き改良ノズルなどの採用で純綿糸分野での拡大を進める考えだ。
一方、同社のもう一つの主力機械であるツイスターは、新たにタイヤコード用ケーブルツイスター「No.3M5」の本格投入で産資分野へ参入する。独ザウラー・アルマなど欧州メーカーの独壇場である直撚式ケーブルツイスターでも、“メードイン・ジャパン”を打ち出す考えだ。先行投入したタイヤコードメーカーの協力を得て、性能の精度アップを進めてきた結果、モニタリングシステムの充実、電子系統の信頼性などで既存機を上回るとの評価を得ている。生産性も最高スピンドル回転数で毎分1万1000回転を誇る。
同社は7月に上海で開催される国際繊維機械見本市「ITMAアジア+CITME2008」にもNo.3M5を出展、中国市場へ訴求する。また、同展には自動ワインダー「No.21C」、ダブルツイスター「No.3C1―S」も出展。自動ワインダーは搭載するスプライサーをエア、ウオーター2種、ディスク、ホットの計5種で実演展示し、スプライサーの性能をアピールする。ダブルツイスターは、中国市場を意識し、ベルト駆動式を出展。機台幅を従来機比20%削減する省スペース性や省エネ性能を全面的に打ち出す考えだ。
TMTマシナリー/オンリーワン商品拡大へ
TMTマシナリーは“ナンバーワン”から“オンリーワン”へ経営の軸足を移す。7月に中国・上海で開かれる国際繊維機械展示会「08ITMAアジア+CITME」では「ザ オンリー ワン」をテーマに掲げ、オンリーワン商品の開発に特化する同社の経営姿勢を訴える。
同展示会で披露するオンリーワン志向の代表的な新商品がスパンデックス用の新型ワインダー。従来のスパンデックス用ワインダーの場合、巻き取りスピードは毎分800メートルが限界で、8エンド(8個取り)と12エンドの2タイプしかなかったが、今回発表する新機種は1000メートルまで高速化すると同時に、エンドも16に拡大した。これによって、生産性を大幅に高めるだけでなく、省エネ性も向上する。
さらに、特許取得の独自技術を使って、従来のスパンデックス用ワインダーでは不可能とされた巻き取りの均一化を実現。これによって、巻き取り解除をスムーズにする生産性と品質性の向上を図った。
スパンデックスの生産は中国中心に拡大しており、用途もスポーツからインナー、一般衣料にまで広がっているが、ワインダーを導入する企業は限られている。繊維機械のなかではニッチの商品といえる。
三木勝策副社長営業本部長は機械産業全体から見ると、「繊維機械自体がニッチ」と指摘。「ニッチのニッチではナンバーワンのシェアを取っても、利益は出にくい。他社ができない付加価値の高いオンリーワン商品を開発していくことが収益の向上につながる」と語る。上海展ではPOY用の新型ワインダーも披露する。生産性向上、コストダウンを実現すると同時に、省エネ性にも優れており、環境問題への関心が高まる中国市場に浸透を図る。
愛機リオテック/カスタムメードが強み
糸加工機メーカーの愛機リオテック(愛知県稲沢市)は、エア加工機、エアカバーリング機で世界シェア約70%を誇る。とくにユーザーの要望に応じたカスタムメードの機械開発が強みだ。7月の「ITMAアジア+CITME」には、新型の複合エア加工機を出展する。
近年、エア加工機は加工するATY(エア加工糸)の用途が衣料から資材まで幅広く、このため各用途に応じた加工機が求められる。これに対し、愛機リオテックでは、細かなニーズに対応したカスタムメードを徹底することで、高いシェアを維持する。また、同社のエアカバーリング機は、従来機では難しかったスパンデックスになま糸をカバーリングすることが可能で、加工速度も毎分600~700メートルと他社機(毎分20~30メートル)を圧倒する。そのほか分繊機や分繊糸用仮撚機も韓国や台湾、トルコなどへの販売を伸ばした。
「ITMAアジア+CITME」に向けて新型の複合エア加工機も開発した。1台で複数品種の糸加工が可能な多目的機だ。1台で複数機分の能力を持つことで、1錘当たりのコストパフォーマンスに優れる。また、従来機の機構をベースに開発したことで、価格を抑えることにも成功した。
このほか同社では、炭素繊維やアラミド繊維など高機能繊維用ワインダーや周辺機器の開発を進める考えだ。友松義博副社長は「試験機なども含め、顧客のニーズに細かく対応した一品物の機械を今後も作っていきたい」と話す。
神津製作所/炭素繊維用に新機種投入
炭素繊維用ワインダーで世界トップのシェアを誇る神津製作所はこのほど、炭素繊維の小割りワインダー「KTAWオートマチック・リワインダー」を開発した。
炭素繊維の用途は大きく広がっているが、商品開発や用途開拓を推進するための試織、試編用小割りワインダーのニーズがかねてから強まっていた。同社ではさらに、部品メーカーと共同で開発した従来とは異なる「別の方式」(田原四朗取締役営業部長)を取り入れることによって、機械のコストダウンと完全自動化を実現。
炭素繊維用ワインダーのトップメーカーとしての地位をさらに強固なものとした。
炭素繊維だけでなく、アラミド繊維やグラスファイバーにも活用できる。同社は7月27日から中国・上海で開かれる国際繊維機械展示会「08ITMAアジア+CITME」で、炭素繊維用小割りワインダーを初めて披露すると同時に、販売を本格化する。
上海展のもう一つの目玉が衣料用ワインダーの「SSP―MV」。このところ強まっている「品質、生産性、多品種化の3つの要求に対応する」(田原取締役)もので、巻き取りスピードの高速化と等速化を同時に実現した。
同社の開発の方向は機械メーカー間の競合が激しい汎用素材や大量生産の分野とは全く異なる。田原取締役はニッチな分野で「得意先が困っているところにメスを入れる」と語る。上海展にメーン商品として出展する2機種も、この方向から開発したもので、「特殊な糸なら神津」としての評価をさらに高める出展になりそうだ。
豊田自動織機/中国向け紡機に期待
豊田自動織機の08年3月期決算は前期比大幅な増収増益となった。繊維機械事業も前期を78億円(13%)上回る662億円の売り上げ(連結)を記録、全社の業績向上に貢献した。織機販売が前期に続いて1万台を突破したほか、紡績機械も好調だった。
しかし、今年度は一転、厳しい状況にある。最大市場の中国が政府の金融引き締めによって、一気に停滞感を強めているほか、インド、パキスタンなど、中国に次ぐ市場も米国向けの不振から、軒並み悪化しているためだ。山北幸男常務役員繊維機械事業部副事業部長兼営業部長はエアジェット(AJ)織機の免税措置が切れる6月以降、中国向け織機輸出はさらに悪化、年間トータルでは「昨年の半分以下に落ち込むことも」と強い懸念を示す。
中国の落ち込みをカバーできる大きな市場はないが、「これまでなかった市場」として期待しているのがロシア。昨年からAJ中心に引き合いが寄せられており、昨年末には日本全体でAJ30台を同国向けに輸出した。山北常務役員はまだ市場規模は小さいものの、「毎年コンスタントな成約が期待できる」とし、織機だけでなく、最近引き合いが増えている紡績機械の輸出も含めて、同国のユーザーに積極的にアプローチしていく考え。
紡績機械では中国も期待市場となる。織機と同様、金融引き締めの影響はあるが、大手の有力紡績を中心にコンパクトスパン精紡機の導入が相次ぐなど、最近の実績が期待の有力な根拠となっている。
中国・上海の国際繊維機械展示会「ITMAアジア+CITME」では最新鋭AJ「JAT710」5台、最新鋭ウオータージェット(WJ)「LWT710」1台と、新鋭コンパクトスパン精紡機「RX240NEW」1台を出展。高付加価値商品を高速生産する同社の繊維機械の優れた性能を改めてアピールする。
精紡機ではサイロスパンや細番手ウールの高速生産を実演する。
津田駒工業/準備機械と抱き合わせ提案
津田駒工業は豊田自動織機と繊維機械事業の製織準備分野で業務提携し、5月12日付で、サイジングマシン、ワーパー、ビーマー、クリールなどの織布準備機械の製造・販売を行う新会社「ティーテックジャパン」を共同で設立した。
新会社は金沢市高岡町1番33号の明治安田生命金沢ビルに本社を設置。社長には津田駒工業の竹鼻達夫常務繊維機械事業統括繊維機械販売部長、副社長には豊田自動織機の大西朗常務執行役員繊維機械事業部長がそれぞれ就任した。両社の織布準備部門から選んだ計6人のスタッフで営業を始める。
新会社の社長に就任する竹鼻常務は6月から、新ブランド「T―Tech」の出荷を始め、7月27日から中国・上海で開かれる国際繊維機械展示会「ITMAアジア+CITME」をめどに、両社の技術を結集した新しい短繊維織物用サイジングマシンを開発すると語る。
繊維機械事業の主力機種、織機は販売の6割強を占める中国向けに「急ブレーキ」(竹鼻常務)がかかり、昨年までの活況とは一転、厳しい見通しにある。インドネシア、インド、パキスタン、ブラジルなど、中国に次ぐ市場も米国の景気悪化の影響を受け、設備投資の動きは鈍っているが、地道に需要を掘り起こしていくことで、中国向けの落ち込みを少しでもカバーしていく考え。新しい市場として注目されるロシアの開拓も課題となる。
7月の上海展ではジェット織機本来の高速性と幅広い素材に対応する汎用性に加え、操作性、省エネ性にも優れる同社の最新機種の特徴をアピールする。準備機械と抱き合わせ提案することで、機業の高品質化、高付加価値化のニーズを掘り起こす。
同社では、複合素材の加工設備の開発にも力を入れている。その第1弾として航空機本体や、その部品で採用が進んでいるカーボン繊維などの複合加工設備を開発、住友商事を通じて販売を始めている。
石川製作所/レピア織機販売が回復
石川製作所の繊維機械事業は延伸仮撚機や撚糸機などの合繊機械とレピア織機を2本柱とする。
レピア織機の販売は昨年苦戦したが、今年に入って回復に転じている。昨年から本格展開した最新鋭レピア「ビートマックス2200」が播州、湖東、岡山、新潟などの産地で導入されているほか、細番手から太番手使いまで汎用性の高さが好評の「2100S」タイプの引き合いも増加、北陸産地の機業に今月末、10台を納入する。
納入機業は婦人服地向けポリエステル長繊維織物を中心に生産している。同産地の服地織物機業への2ケタ台成約は久しぶり。無量井秀文営業部繊維機械グループ長は長・短繊維ともに服地織物市況の状況は良くないと見ているが、海外生産との差別化を図る商品開発が進んでいると指摘する。最新鋭の2200だけでなく、従来機種も含め同社製レピアの優れた性能を改めてアピールし、服地織物分野の需要を掘り起こす考えを明らかにしている。
その一方で、資材織物分野の開拓も進める。資材の場合、使う素材や織物の規格が特殊で、一部機械の改良や新たな部品の開発が必要となる。ユーザーのこうした要求にきめ細かく対応することで、徐々に実績を積み上げていく戦略だ。
合繊機械は昨年の好況から一転、停滞感が強まっている。海外向けも大型投資が一巡し、既存ユーザーの追加が主体となっている。しかし、細繊度糸、とくにナイロンの加工では同社の合繊機械の評価は高い。
また、特定ユーザーとの共同開発が様々な分野で進んでいることが最近の特徴だ。産地の設備投資の時期とともに、開発の進行が合繊機械部門回復のカギとなる。
イテマウィービングジャパン/バマテックス、ソメットも販売
イテマウィービングジャパンはスイスの親会社であるスルテックスリミテッドがイテマウィービングリミテッドに社名変更するのに伴い、2月15日付でスルテックスジャパンから社名変更するとともに、従来の「スルザーテキスティール」織機に加え、「バマテックス」「ソメット」両織機の日本での販売窓口となった。
同社ではこのほか、スイス・ベニンガー社の部分整経機、ドイツ・ユルゲンス社の特殊織機の販売窓口となっており、日本の織布業界の多様な要求に対応する機械をラインアップしている。
日本国内の織布業界の状況は厳しい。昨年は1件当たりの規模は小さいものの、継続的に設備を更新する機業があったが、「今年に入って、(設備投資の動きは)パタッと止まった」と瀬谷昌宏営業部長は言う。
しかし、これは悲観面ばかりではないようだ。瀬谷部長は海外生産との競合が一段と厳しくなっているなかで、将来的にどのような織物が国内に残るのか、また、そのために自社の技術やノウハウをどう高めていくのか、機業が「提案型への脱皮を図っている時期」と指摘する。そして、生き残りの方向性がはっきりした時点で、設備投資に動き出すと期待する。
同社は機業のこうした状況を考慮、今後ますます多様化すると見られる機業の要求に対応する設備の提案方法を改めて見直すなど、「営業が原点に返る」(瀬谷部長)取り組みを始めている。
瀬谷部長はそれぞれ特徴を持つ3メーカーの織機をそろえたことは、機業の多彩な要求に対応する面で、大きな武器になると語っている。
滝沢トレーディング/中国産レピア本格販売へ
滝沢トレーディングはベルギー・ピカノール社が中国・蘇州に設立したPST社製レピア織機「GTマックス」の日本国内販売を本格化する。
GTマックスは欧州産の最新鋭レピア「オプティマックス」と比べ汎用性などの機能は劣るが、こなれた価格で供給できる。滝澤巌社長はユーロ高によって、欧州産の円価格が上昇していることを考慮、かねてから中国産レピアの日本国内販売を計画していた。高付加価値織物を生産する日本向けに必要な仕様が整ったことから、本格展開に踏み切った。
GTマックスはピカノール社製レピアで標準装備となっている完全電子化制御、「スーパーモーター(油冷式メーンモーター)」などを搭載。さらに最大8色の緯入れが可能で、滝澤社長はオプティマックスの前のタイプ「ガンマックス」とほぼ同等の性能と語っている。
オサ幅は当面、190、220センチの2種で展開するが、今年中には340センチ幅、ドビー対応までをそろえる計画だ。
昨年7月にドイツ・ミュンヘンで開かれた国際繊維機械展示会「ITMA07」で発表したオプティマックスはすでに国内の主要産地、有力ユーザーへの紹介を終了し、販売活動を本格化している。夏には日本での第1号機が据え付けられる。
また、最新鋭エアジェット(AJ)織機「オムニプラス800」は織物の品質向上を実現する“ストレッチノズル”を採用。AJ本来の高速性だけでなく、高品質性、汎用性の向上も図った。
滝澤社長は欧州産の最新鋭レピア、AJに中国産のレピアを加えることによって「国内ユーザーの多様な要求に対応できるラインアップがそろった」と強調。今後、GTマックスのPRにも積極的に取り組んでいく考えだ。




