産資・不織布通信Vol.17/重布は“膜構造材料”
2008年02月25日 (月曜日)
太繊度糸の厚地織物に塩ビ樹脂などをトッピング、ディピング、コーティング、ラミネートなどを施した重布は伝統的な繊維資材の一つだが、市場の縮小が続く。軒出しなど装飾テントの販売先である大型量販店などとの競合で小規模小売店が減少傾向。テント倉庫では改正建築基準法の施行による確認審査遅れもある。トラック幌に使用する帆布もアルミボディー化やトラック販売不振の影響を受ける。原燃料価格の高騰から採算的にも厳しさを増すが、関連企業は重布ではなく膜構造材料として新たな可能性を模索する。
テントはエコに最適
<テント地は長繊維織物に耐候性・発色性の良い特殊樹脂を配合し、防汚処理を施したもの。>
業界推定によると、テント地はかつて年間600万平方メートルの市場規模と言われたが、現在ではその約3割、200万平方メートルを割り込んだ。大型量販店の増加で、商店街をはじめ小型小売店の縮小が続いているからだ。そのなかで「当社では多色原着ポリエステル短繊維使いが増加傾向にある」とテント地販売大手であるNI帝人商事の山本昇取締役繊維資材本部長は言う。
日本のテント地は通常、ポリエステル長繊維使いだが、欧州などは短繊維使いが多い。その流れをとらえたもので「シャガール」のブランドで販売する。帝人ファイバーの原着ペットボトル再生繊維「エコペット」の紡績糸織物に撥水加工を施しており、エコマークも取得している。通常のテント地とは違いスパンライクで、輸入品(アクリル紡績糸使い)よりも3割近く安い。今年で3年目になるが、07年度から販売が軌道に乗り始めた。今年も2ケタ%台の伸びを見込む。
クラレは今年1月、「クラレテント」の総発売元である専門商社の高島(東京都中央区)とテントのカタログを3年ぶりに更新した。新カタログでは装飾テントに絞り込んだほか、透明テントなどもそろえる。
テント需要は減少が続くものの「テントは日差しを遮り、冷房費用の削減など省エネ対策や紫外線対策などに効果がある。普及が進まぬ家庭やオフィスでの潜在需要はある」(高島)のも事実。NI帝人商事もこうした視点に立ち、テントによって電気料金がどの程度安くなるか、実証試験で検証していく考えだ。
また「膜構造材としてとらえれば、簡便性、省資源に向いている材料」(東レの森本和雄産業資材・機能素材事業部門長)。そのためにも同社では、練り込みによる防炎糸や原着など原糸で付加価値を高める重要性を強調する。同社ではポリ乳酸繊維でも耐光性、強度向上などの技術開発を進める意向だ。
帆布は軽量化に貢献
<帆布は短繊維織物に樹脂を含浸させた商品で、布地調の風合いが特徴。トラック幌や野積みシートなどに使われる。>
重布需要の大型用途である帆布も、主力のトラック幌の落ち込みから需要減少が続く。ピーク時に比べると「半減以上の落ち込み」と言われ、07年の市場規模は840万平方メートル(業界推定)。トラック幌は新車販売台数の落ち込みやアルミボディー化の影響が大きい。ホームセンターなどの安価な輸入品も増加している。
こうしたなかで国内品は、さらに高付加価値品にシフトする動きがある。クラレは「素材から差別化する」(原料資材部の平林秀民原料テキスタイル課長)として、新開発の高強力PVA(ポリビニルアルコール)繊維「クラロンK―2」を使用した軽量帆布「パワロン―P帆布」を開発し、今年から本格販売を始めた。一般的に80平方メートルのシートなら、同社の「クラフテル」帆布E5と同等の強度がありながら、11キロ軽量化(約24%減)できる。
ダイワボウプログレスは帝人ファイバー(TFJ)のペットボトル再生繊維「エコペット」使いに本腰を入れる。合繊帆布の「ダイワボウファイナル」はTFJのポリエステル短繊維を使用し、加工や販売面(発売元はNI帝人商事)などで帝人、ダイワボウの両グループのコラボレーション商品でもある。産業資材営業部の岩城宏之副部長は「帆布は右肩下がりの状況にあるが、そのなかでメーカーチョップ品として地位を固める」との方針を示すとともに「原点に立ち返って、帝人ファイバーとの共同開発を進める」考えを示す。需要減は続くものの、軽量化という意味からトラック幌で帆布の可能性はゼロではない。
インクジェット基布にはターポリンが
<ターポリンは長繊維織物に樹脂フィルムをラミネートしたもの。コストパフォーマンスに優れ、宣伝幕、横断幕、各種カバー類など幅広い用途に使用する。>
ターポリンもピーク時に比べ市場規模は半減したと言われる。量的に大きかったかっぱはほとんど輸入製品にとって変わられた。それでも最大用途である養生シートやコンテナバッグなどを含め年間1000万平方メートルの市場規模がある(業界推定)。横断幕やバナーなどに使われるインクジェット捺染の基布は実はターポリン。競争は激化しているが、新市場はターポリンでも生まれている。
キャンバス・ジャパン2008/3月4~7日、国内初の専門展
キャンバスやテント・オーニングなどのキャンバス製品専門ビジネスショー「キャンバス・ジャパン2008」が、3月4~7日、東京ビッグサイトで開催される。国内初のキャンバス専門ビジネスショーである同展は、店舗総合見本市「ジャパンショップ」「建築・建材展」との同時開催。キャンバス・ジャパンは建築・建材展の特別企画展として、日本テントシート工業組合連合会、日本オーニング協会、日本経済新聞社の主催で開催される。
重布を得意とする企業がこぞって出展する。商社では3社。泉(大阪市北区)は東レのペットボトル再生繊維「リサイクロン」を使った屋形テント生地「RC―750」、再生ポリエステル原着糸のキャンバス「キャンテリアECO」など環境面をアピール。そのほか、ガラス繊維使いの不燃膜材や耐炎繊維のスパッタシートも出品する。
NI帝人商事はブースに超軽量・大型仮設テント「エアロシェルター2」を設置。そこにポリエステル紡績糸に撥水加工を施した「シャガール」をはじめエコをアピールする。
高島(東京都中央区)は「街に溶け込むキャンバス」をテーマに、省エネ・安全・安心に関連した商品をアピール。不燃テント膜材「テクノバン」や野球場のフェンスなど、衝突時の安全性を重視したフェンス表材に採用されたシート地などを展示するほか、新商品の出品も予定している。同社はクラレ、クラレプラスチックスとの共同出展。ターポリン製造のクラレプラスチックス(大阪市北区)は遮熱シート「サンブレイク」、二酸化炭素発生を抑えた「ハイドロックス」のほか、温度によって無色化する感温シートも参考出品する。
帆布製造のダイワボウプログレス(大阪市中央区)は、帆布のほかオーガニックコットンや防炎加工「プロバン」加工を施したユニフォーム、ペーパーヤーンのカバンなどもアピールする。
膜構造物大手の太陽工業(大阪市淀川区)は企業の歴史を紹介するとともに、素材まで踏み込んだ開発技術をアピールする。先行する酸化チタン光触媒膜はもちろん、結露防止の「シリカマックスコート」や開発中の遮熱膜に加え、昨年からテスト販売する蓄光膜を出品する。蓄光膜は酸化チタン膜に蓄光機能をプラス。日中の太陽光を蓄えて夜間に青く発光する。北海道釧路市の津波漂流物対策施設の屋根に採用されている。会場では暗室を作り発光を体験できる工夫も凝らす。
樹脂加工大手ではカンボウプラス(大阪市中央区)、平岡織染(東京都台東区)の2社が出展する(情報館参照)。
情報館/平岡織染/新技術への投資継続
平岡織染はキャンバス・ジャパン2008で、遮熱膜材「クールマックス」のほか、不燃膜材、防汚、超寿命化品、帯電防止や消臭メッシュなど新技術を提案する。クールマックスは4~6℃の遮熱効果を持つ。不燃材では、グラスファイバー使いの大型膜構造物向けの「ターポロンG―3500」や間仕切り・パーテーション用「V―2000」などを提案する。
重布需要が落ち込むとともに原燃料高騰によるコスト上昇のなかで、輸入も含めた低価格品と競合しない「高付加価値化、新商品開発に力を入れる」と平岡義章専務は強調する。同展でもこうした高付加価値品に焦点を合わせた。
遮熱をはじめ様々な機能製品をそろえる同社だが「世界に通用するもので輸出にも力を入れる」意向。現在、自販品の輸出比率は3%程度とまだまだ少ない。中期的には10%にまで引き上げたい考え。同時に新用途開拓にも取り組む。
インクジェット捺染による看板・屋外メディア「アドマックス」もその一つ。溶剤・水性顔料インクともそろえている。コンクリート水路の水漏れを防ぐ内張りライナーなどもある。
コスト上昇のため、今期は営業赤字が見込まれるが、新商品・新技術開発のための投資は継続する方針だ。
情報館/カンボウプラス/光触媒膜に期待
カンボウプラスはキャンバス・ジャパン2008で、光触媒機能により防汚性能を有するテント倉庫用膜材料「ダイナスター」をメーンに打ち出すほか、トラック幌補修用の両面粘着テープ「ペタッキー」などを出品する。さらに東洋紡の高強力ポリエチレン繊維「ダイニーマ」使いやウレタン樹脂によるターポリンなどを提案、環境対応では二酸化炭素発生を抑制するターポリンやバイオマスのバナーなども打ち出す。
ダイナスターは、塩ビの上に配置した酸化チタンが日光(紫外線)と空気中の酸素、水により機能し、付着した汚れとともに、脱落していく仕組み。同展では小さいハウスを立てて従来品との違いを訴える。
柏田民夫社長は原燃料高騰で厳しい業績を示す一方「ダイナスターによる売り上げ増に期待する」と語る。改正建築基準法の施行による影響はあるものの「ダイナスターに対する需要家の関心は高い」と手応えを感じている様子。
2007年度はコスト上昇分の価格転嫁遅れで水面下に沈む公算が大きい。受託加工、自主販売品とも1メートル当たり10~15%の値上げを実施しているが、今期中の寄与は少ない。新商品であるダイナスターなどで来期以降の回復を目指す。