帝人/ピッチ系炭素繊維本格化
2007年12月27日 (木曜日)
帝人はピッチ系炭素繊維に本格参入した。岩国事業所(山口県岩国市)に、年産数十トンの商業化設備を導入。「ラヒーマ」のブランド名で一部顧客に向けて販売を開始した。ラヒーマは銅や銀を上回る熱伝導率を持つほか、樹脂分散性にも優れるのが特徴。当面はファイバーとしての販売になるが、将来的には顧客を交え加工品も模索中という。
現在、代表銘柄は2種類で、繊維長が数十~数百ミクロンメートルのミルドファイバー(粉砕された繊維で、通常1ミリ以下の極短繊維)。各種成形体へのフィラー(添加材)などに使用することで、発熱を抑えることから、各種デバイスの筐体や放熱部品向けの展開を想定する。
同社は電子機器の高性能化に伴い、発熱対策の必要性に着目。成形性と放熱特性を同時に実現する熱伝導性の優れた材料として、2004年からラヒーマの開発に着手。06年にはパイロットプラントを導入し、サンプルワークを始めた。
同社は子会社の東邦テナックスがアクリル長繊維を原料とするPAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維を製造販売するが、ラヒーマは帝人の新事業開発グループで開発を進めてきた。原料については明らかにしていない。
炭素繊維協会によると、ピッチ系炭素繊維はコールタールまたは石油重質分を原料(石炭ピッチ、石油ピッチ)として得られるピッチ繊維を炭素化したもので、すでに、大阪ガスケミカル、クレハ、日本グラフトファイバー、三菱化学産資などが事業化している。製法の諸条件で、低弾性率から超高弾性率・高強度の広範囲の性質が得られるという。高剛性用途のほか、優れた熱伝導率や導電性を生かして様々な用途に使用される。