2007秋季総合特集/再編に挑む 検査機関編
2007年10月31日 (水曜日)
グローバルな再編の動きは、世界的規模で生産地を常に移動させている。その一方で、商品には「安全・安心」がより求められ、水際での試験や検査の重要性は増すばかりだ。しかし、品質に対する基準は国により、小売企業により、それぞれ異なる。そうした煩雑な業務を的確にこなすのが日本の検査機関である。
ニッセンケン/中国内販、欧州輸出も対応
ニッセンケン(日本染色検査協会)は、中国での検反や試験・検査体制を充実させている。内販向け製品の検査を本格化し、多様なニーズに対応できる体制を整えた。昨年からは上海事業所の出張検査場を上海共栄泓明倉儲服務内に開設し、縫製用加工原反の外観検査も開始している。
中国では01年に、江蘇省南通市の南通天山紡織品検整内に南通事業所を設立。以後、日系繊維関連企業が多く進出しているこの南通市を中心に事業規模を拡大してきた。04年には上海市の浦東地区に上海事業所を開設した。
また、試験・検査の需要拡大に伴い、江蘇省内に南通人民路事業所、崇川事業所も設けた。昨年には倉庫業の共栄倉庫と提携し、倉庫保管、検品などを行う上海共栄泓明倉儲服務内で検反業務も開始。南通に3カ所、上海に2カ所の拠点を持ち、「繊維製品全般の総合的な業務ができる」体制を構築した。
南通人民路事務所では、提携先がCMA(中国内販品にかかわる試験機関資格)、CNAS(内販用試験書証明)を取得しており、内販向け製品の検査に対応。
また、中国の紡績品基本安全技術要求「GB18401―2003」に応じた検査体制を敷く。さらに中国に進出した日系企業向けに「エコテックス規格100」の認証も行い、欧州向け輸出を支援する。
カケン/海外での検査内容高度化
中国生産の急速なコストアップなどで、海外生産の拠点を見直す機運が出てきた。カケン(日本化学繊維検査協会)は、こうした動向を見守り、新たな動きに的確に対応できる体制を敷く。さらに「安全・安心」を重視する動向に対応するため、国外での検査内容の高度化を進める。
中国の生産コスト上昇は必至だが、検査の仕事自体は合理化できるものではない。検査業務に直接関係のない部分の合理化を進める。検査の拠点については、縫製地の変化を見ながら対応するほかない。中国の東北3省や中西部、ベトナムをはじめとしたアセアン諸国が想定されるが、顧客動向を見守りながら、いつでも的確に対応できるようにしている。
高度な内容の検査は国内で行ってきたが、今後は「安全・安心」への関心の高まりを反映して、設備・技術ともに海外でも対応できるように、一定の整備が必要と考えている。
一方、1994年に中国へ進出したカケンは、現地スタッフも育っている。このため数年前から、現地スタッフによる中国語で品質管理セミナーを開催し、評価を高めている。中国語のテキストも作成した。中国のサプライヤーや現地スタッフの理解度を高めることは、品質の向上に大きく寄与する。
また、韓国の法律改定に伴い、「韓国内販の手引き」を3月に発行した。
ボーケン/中国拠点を拡充
ボーケン(日本紡績検査協会)は日系企業の進出とともに、中国内での拠点を拡充してきた。また、進出企業のニーズに合わせ、検査内容を充実させている。
昨年からSGS杭州と業務提携し、杭州市での品質試験を始めた。SGSはスイスに本部を置く世界的な検査・審査登録機関。杭州試験センターは、繊維製品一般の試験に加え、燃焼性試験にも対応する。燃焼性試験はインテリア製品なども可能だ。SGSとの提携により、日本向けだけでなく、欧米向けの検査もできる。また、SGS寧波内には試験の受付窓口を設置。寧波事務所と杭州試験センターの開設により、浙江省地域での利便性が向上した。
杭州試験センター、寧波事務所の開設で、ボーケンの日本以外の拠点(試験センター、事務所)は、上海、常州、青島、香港、広州、杭州、寧波、台湾、韓国の9カ所となった。
中国市場へ進出する日本アパレルに向けた検査体制も構築している。中国では繊維製品を販売する際には、製品の品質が国の定めた基準に合格していることが要求される。
そこで、ボーケンの上海試験センターは上海出入境検験検疫局と提携し昨年から、日本企業の中国内販に向けた検査を始めた。上海出入境検験検疫局は“CMA”(中国内販品にかかわる試験機関資格)や“CNAS” (内販用の試験書証明)の認定を取得しており、中国内販に必要な証明書が発行可能だ。
QTEC/深せんで服飾雑貨も対応
QTEC(日本繊維製品品質技術センター)は海外事業所として、韓国に日韓・韓日品質評価センター、中国に上海試験センター、青島試験センター、無錫試験センター、深せん試験センターを有する。そのうち深せん試験センターは最も新しい中国拠点で、アパレル製品のほか生活用品(靴、カバンなど)の試験・検査を行う。
深せんへの日本の検査機関の進出は初めてだが、「広東省一帯は衣料だけでなく、カバンや靴などのファッション雑貨の生産も盛ん。大手量販店もそうしたファッション雑貨に対する関心が高く、生活用品の試験・検査も行っていく」として、急増するファッション雑貨への対応を進める。
昨年は、青島試験センターを移転し、施設を拡張した。上海試験センターも05年に検査スペースを拡充している。また、05年からは上海でパソコンによる報告書作成を行い、顧客からの問い合わせにも迅速に対応できている。青島、無錫でも同システムを一部導入した。無錫試験センターも来年には移転を計画している。
また、試験だけでなく、検品指導のための出張も行う。現地の検品会社や縫製工場での検品指導で、顧客からの依頼が多い。検品工場だけでなく、個人指導も行っており、自社検査員の育成を支援する。
日本でもインターテックと共催で中国のGB規格セミナーを開いている。