帝人のアセテート合弁展開/原料調達ではプラス

2000年07月18日 (火曜日)

 既報のように帝人はアセテート事業の立て直しのために、独セラニーズ社と折半出資で合弁会社を設立して、工場と営業部門を移管する道を選んだ。セラニーズはアセテート長繊維で世界最大手だが、工場集約などリストラを進めており、必ずしも同事業は順調ではない。両社がアジア地域でどのような事業展開を行うのか―。二〇〇一年四月までに行われる最終契約に向けた交渉が注目される。

 帝人のアセテート事業はジアセテート長繊維のみで、年産能力一万二千トン弱に対し、実生産は推定約九千トン。国内・輸出とも糸売りが圧倒的に多いが、赤字が続いていた。

 一方のセラニーズは、米国二工場、カナダ、メキシコ、ベルギー各一工場で同八万八千トンの長繊維設備を持っていたが、カナダ工場を閉鎖、米国の一工場も来年三月までに閉鎖する計画で、能力は六万数千トンに縮小するとみられる。

 今回の合弁設立に関する基本契約(MOU)は、ポリエステルと高機能繊維(アラミド、炭素繊維)を繊維の柱に据える帝人とアジアに長繊維の生産・販売拠点を持たないセラニーズとの思惑が一致した結果といえる。

 帝人は松山事業所内のアセテート工場移管に当たって、原料のフレーク製造から撤退し、セラニーズから供給を受ける。これがコスト面でプラスに働くことは間違いない。さらに合弁会社は、セラニーズが「全世界で生産しているアセテート長繊維を日本国内に輸入・販売」することで、商品の幅を広げる狙いがある。

 ここで注目されるのはセラニーズが生産するトリアセテートの扱いだ。安居祥策社長は記者会見で「トリアセテート輸入は今のところ考えていない」と述べたが、MOUは輸入対象としてジアセテート・トリアセテートを区別しておらず、今後の交渉過程で浮上する可能性は否定できない。

 最近、セラニーズのトリアセテートを韓国メーカーがポリエステル複合織物に使い、三菱レイヨンのトリアセテート「ソアロン」のユーザーだった米有力アパレルに安値攻勢をかけ、大口受注に成功した例もある。セラニーズにとって、ジアセテート・トリアセテートをセットでアジアに販売拠点を持つメリットは大きい。ただ帝人側にもメリットかどうかは不明で、ジアセテートとの住み分けを明確にしない限り、マイナスに働く懸念もある。

 赤字だったナイロン事業を本体から切り離して、米デュポンとの合弁(TDN)に移管した経験のある帝人だが、TDNは依然、赤字が続いている。アセテート合弁の事業内容がどうなるか、業界の関心を集めそうだ。