連載・ポリエステル・スパンボンド/順風の拡大路線(2)

2000年06月27日 (火曜日)

 東洋紡は上期中に、ポリエステルSB(スパンボンド)増設に目途をつける。現在、年産八千トンの生産設備はフル稼働中で余力がないため、開発サンプルの生産にも苦慮する状態という。

 SB事業部は同社の稼ぎ頭である機能材・メディカル事業本部に所属するが、前年度は増収増益を確保した。粗原料価格が高騰する一方、販売価格は下落するという厳しい環境下にありながらコストダウン努力で増益を達成。その利益額は同事業本部内でも五本の指に数えられるまでに成長した。

 同社はポリエステル使いだけでSBを展開しており、建築防水補強材、カーマットを中心とする自動車資材、土木資材が三本柱だ。

 中でも建築防水補強材は「世界的にみてもポリエステルSBの最大市場であり、当社の主力用途。品質、コスト競争力をトップレベルで維持強化し、輸出もできるだけの力をつけたい」と川崎幸雄SB事業部長は意気込む。

 建築防水補強材はビルの屋上の防水工事に使用するもの。新築ビルはもちろん、十五~二十年単位で補修工事も行われる。

 バブル崩壊後、ビル建設が減少したため、補修工事に活路を見出すとともに、橋りょう防水用途の開拓を強化。防水材全体としては前年実績をクリアした。

 また、自動車資材でも販売量を伸ばす。自動車生産台数が千万台を割り込む中で販売増を達成、主力のカーマット基布だけでなく、シートのばね受け材、スキンクロス(シート補強材)など用途を拡大した。

 さらに、塩ビ代替として地道に取り組んできた「カテナ」もトノカバー(ワゴン車の荷台カバー)に採用が進むなどこれまで撒いた種が芽を吹いた。

 土木資材は物件数の減少やフェルトとの競合などから落ち込んだが、新幹線の枕木用ロングチューブ(アスファルトモルタルを被い、紫外線劣化を防ぐ)などが順調で、高速道路の床盤補強材も工法の一つとして認められたことから、今後の拡大に期待する。

 拡大路線に乗った同社のSB事業だが、つるが、岩国の二工場に生産拠点が分散化することや岩国工場の設備が低目付けから高目付けまで対応するため、生産効率が悪いなどの弱点がある。

 現在、検討中の増設もこの弱点をいかに解消するかもポイントといえるだろう。