ポリエステル減収/「陥没」是正も歯止めかからず

1999年11月26日 (金曜日)

 二十五日までに出そろった合繊メーカーの九月中間決算によると、ポリエステルの減収傾向に歯止めがかかっていない。八社合計(半期ベース)で一年前と比べ二百五十二億円、二年前とでは八百二十七億円も落ち込んでいる。今中間期は陥没価格是正などの自助努力で収益をなんとか改善しているものの、下期は原料高の影響が本格化するだけに、販売価格への転嫁を進めないと再び赤字続出になる危険性をはらんでいる。

 八社のポリエステル売上高合計(一部推定)は九七年度上半期が二千八百二十四億円だったが、九八年度上半期は二千二百六十九億円、今上半期は二千十七億円となり、二年前に比べ約三割、八百二十七億円減った。この規模は最大手東レの今上期実績(六百四十四億円)よりはるかに多い。

 二年で四割以上の減収となった旭化成工業をはじめ、不採算分野からの撤退・縮小による影響も少なくないが、基本的に戦線を縮小していない東レや帝人が二割以上落ち込んでいる現実は、九八年度の価格下落がいまだに尾をひいていることを示している。

 東レの場合、九八年九月からタフタ二〇%、同十月からなま糸一キロ三十円、九九年二月からなま糸同五十円(前回分含む)とタフタ一五%、六月から加工糸一キロ四十円と織・編み物二〇%、七月から産業用長繊維一〇~一五%と短繊維二〇%と相次いで〝値戻し〟を打ち出し、陥没価格はほぼ一掃したが、「前上期比ではまだ回復できなかった」(飯島英胤副社長)。

 しかし、租原料価格はPTA、EGともに前年同期に比べるとまだ安かったため、コストダウンなど自助努力効果とともに、収益面ではプラスに作用。東レは増益となり、帝人とクラレ、ユニチカが黒字浮上、他の四社も赤字幅を縮小させた。

 さて問題は下期だ。原油・ナフサに端を発して石化原料が急騰している。ポリエステル主原料の高純度テレフタル酸(PTA)は指標となる台湾相場で、九九年第1四半期の一トン三百七十ドルを底に、第2四半期四百ドル、第3四半期四百六十~四百八十ドルと推移し、第4四半期は五百三十~五百八十ドル。ナフサのスポット価格は九一年の湾岸戦争以来の高値を付けており、来年第1四半期は六百ドル突破もうかがう展開。平均すれば十~三月は四~九月比三割近く高くなる。エチレングリコール(EG)も高騰、あたかも「オイルショック」を再現したかのような様相にある。

 したがって各社は「需要に合った生産を続け、原料高を販売価格に反映させる」(松尾博人クラレ社長)という姿勢で一致し、糸・わた、テキスタイルそれぞれの値上げに全力を挙げている。

 婦人テキスタイル事業の移管(カネボウ合繊、旭化成)、衣料から産業資材への用途シフト(東洋紡)、薄地織物など不採算事業の撤退・縮小(三菱レイヨン、クラレ、ユニチカ)、プロダクションチームの再編(東レ、帝人)など、前期から合繊メーカーはポリエステル事業の収益構造改善に本腰を入れ始めた。その矢先の粗原料高騰。下期の値上げの成否によっては、同事業の存続そのものの見直しを迫られる可能性もある。