07夏季総合特集/報告・生活創造産業への道 検査機関・副資材編
2007年07月26日 (木曜日)
衣料文化を支える
技術と感性を生かした生活創造産業としての繊維。新繊維ビジョンはそう指し示す。ファッション衣料も文化の一端を担うが、そうした衣料品を下支えしている担い手がいる。素材や製品の品質などを試験する検査機関、副資材業者である。衣料文化を支える企業を紹介する。
カケン/上海でCNASを取得
日本化学繊維検査協会(カケン)は素材・衣料品の試験事業などで、アパレル・商社・小売業を支援する。この5月には東京に堀留ラボラトリーを設置し、都内東地区の顧客の利便性を高めた。また、中国の上海科懇服装検験修正は、5月17日付でCNAS(中国版試験所認定)を取得、中国内販を目指す企業を一層サポートする体制を整えている。
カケンは5月末に、都内で2番目となる試験室「堀留ラボラトリー」を開設した。都内の西半分のエリアを受け持つ「原宿ラボラトリー」に続くもので、都内東側エリアをカバーする体制。同ラボは衣料品の試験を中心に、40人の体制だ。
アパレル生産の海外移転に伴い、カケンは海外業務も拡大してきた。現在、香港、韓国、台湾、インドネシア、タイ、ベトナム、米国のほか、中国では上海、青島、大連、寧波、無錫に拠点・提携機関を持つ。その中国で最大規模を誇るのが上海科懇服装検験修正だ。
上海科懇では、日本向け試験業務を中心に、工場出張検査や持ち込み検査業務なども行う。また、現地企業を集めて各種セミナーを開く。
さらに、ISO9001、製造から販売の過程で品質評価や紛糾処理の根拠となる「CSM2000」や、質量監督検験検疫総局令第58号に加え、5月には国家基準の試験室認定「CNAS」も取得。上海科懇が発行するデータ、証明書が中国内販向けで有効となった。
QTEC/ファッション雑貨も対象
日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は4月、西部センターにクリーンルームを新たに設けたほか、海外では1月、中国・深せんに試験センターを開設した。
西部事業所のクリーンルームは3室で構成。菌、カビ、細胞、それぞれの試験を行うため、3室に分離した。抗菌防臭、制菌加工のほか、抗カビや抗菌剤の細胞に対する安全性などを試験する。「生物試験をより安全に、正確に行うことができる」という。
また、時代を映して靴、カバンなどファッション雑貨の試験が増えている。QTECは東京都墨田区の産業資材試験センターでこうした生活用品の試験を行う。
さらに冬物衣料では昨今、非ウールコートとしてダウンが流行。中部事業所がこのダウンの試験を担っており、国際羽毛協会の会議にも出席し、品質管理や試験方法についての情報収集などを行う。
海外事業所は韓国、上海、青島、無錫に試験センターを有するが、この1月に中国第4番目の拠点として深せん試験センターを開設した。日本人スタッフ2人、現地スタッフ9人の体制でスタート。アパレル製品のほか、生活用品(靴、カバンなど)の試験・検査も行う。
品質性能評価業務(試験)や外観評価指導業務(検査)を行うが、業務のほとんどが日本向け製品。内販向けでは、無錫出入検験検疫局や国際検査機関のインターテックを通じた検査証明書を発行できる体制を整え、少しずつ内販への対応も増やしている。
深せんでの日本の検査機関の進出は初めてだが、「広東省一帯は衣料だけでなく、靴やカバンなどのファッション雑貨の生産も盛ん。大手量販店もそうしたファッション雑貨に対する関心が高く、生活用品の試験・検査も行っていく」方針だ。
副資材/海外現地調達に対応
副資材なしに衣料は成り立たない。このため、副資材業者は品ぞろえとともに、確かな納期も求められる。また、縫製拠点が中国を中心に海外へと移転すると、現地での供給も必要になってくる。
日東紡(中国)は、芯地の最大生産規模を250万メートルにする増設を完了、現在180万~230万メートルで試運転中である。営業面では無錫、上海、広州、北京の4カ所に販売拠点を設け、さらに浙江省か山東省にもう1カ所の拠点作りを検討。日系アパレル向けに日本品と変わらない品質の芯地を供給するほか、現地での多様なニーズに対応する。
ダイニックは昆山司達福紡織で接着芯地などを生産。北京、天津、大連、上海、青島に販売拠点を設け、商圏を広げている。吉岡は、子会社の上海吉岡貿易を通じ中国市場でネームなどを日本企業や日系企業向けに販売する。
裏地では伊藤忠商事が中国で広範に展開するなど、メーカー、商社とも衣料文化を下支えしている。