今年も続く価格攻防/原燃料に翻ろうか フォーミュラ方式の動きも

2007年03月23日 (金曜日)

 原油価格が上下動するなかで、4月からの価格交渉が激しくなりそうだ。原料供給する合繊短繊維メーカーは原燃料高分の転嫁が不十分とするものの、需要家の短繊維不織布メーカーは原油や原料価格動向から是正を求める動きにある。短繊維不織布業界は20007年も原燃料価格に翻ろうされるのは間違いない。

 ポリエステル原料の一つ、高純度テレフタル酸は06年9月、史上最高値となる1トン当たり1087ドル(指標である中国・揚子石化)を記録したが、07年2月では854ドルと2割強も下落した。原料高騰を最大理由に値上げを進めてきたポリエステル短繊維だけに、需要家の短繊維不織布メーカーは、すべてではないものの「値戻しを求め始めている」(呉羽テック、アンビック)のは事実。原料高騰分を不織布に転嫁できていないところが多いからだ。これに対し供給側は「燃料分をほとんど転嫁しきれていない」(東レ、帝人ファイバー)として基本的に応じない構え。むしろ、不採算品は引き続き値上げを要求、通らなければ供給を止める姿勢を崩していない。

 ポリプロピレンはナフサ連動だが、ナフサ価格も昨年7~9月に1キロリットル当たり5・4万円、10~12月では4万8000円といったん下落したものの、直近では5万3000円と再上昇。ポリエステル同様、原料高分の値上げを完全浸透できていないだけに、SBやポリプロピレン短繊維側は値下げに応じる気配はない。紙おむつ用が主力で、もともと採算が厳しいからだ。むしろ、ポリプロピレン短繊維では宇部日東化成が4月出荷分から不採算品で平均7~8%の値上げを打ち出すなどさらなる価格是正に向けた動きもある。

 価格交渉は時間が掛かるもの。こうしたなか、フォーミュラ方式導入への動きが出てきた。ナフサ価格など一定の指標を用いて値決めするものだ。供給側だけでなく、需要家からも声が上がっており、一部スタートした企業もある。どこに基準を置くかの問題は残るが、合理的な価格決定になれば、互いの労力は少なくて済むのは間違いない。

ユニチカ/タイ連携で中国輸出拡大

 ユニチカはタイTUSCO(テイジン・ユニチカ・スパンボンド〈タイランド〉)と連携しながら、カーペットやカーマット用一次基布の中国輸出に力を入れる。これまで中国での展示会出展なども含め開拓を進めてきたが、2006年度から本格販売を開始しており「シェア5割を目指す」(津川優執行役員スパンボンド事業本部長)と意気込む。

 中国の一次基布市場は台湾のフロイデンベルグ・ファーイースタン・スパンウェッブが先行するが「当社は品質と品種で勝負。不利ではあるが、顧客の要望にきめ細かく対応する」ことで、拡販を目指す。

 中国市場開拓の拠点であるTUSCOも原料高、バーツ高があったものの、06年度(1~12月期)に黒字浮上した。「実力が付いてきた」として、07年度後半には日本か、TSUCOでの増設を決める計画。規模としては年産5000~6000トンを想定している。

 同社はアジア最大のポリエステルSB。06年度は2~3%の販売増となる見通しだが、収益は原燃料高が響き増益ながら今期からスタートした中計の目標に対しては未達に終わった。「差別化を指向しないと、繊維と同じになる」との考えに変わりはないが、差別化SBの遅れが足を引っ張る。既存の「エルベス・」「スーパーアルシーマ」も伸び悩む。

 中期的には中国輸出に加え、差別化SBを現状比3倍増にするとともに、見直しを進める成型、伸縮SBの技術確立が課題となる。

東洋紡/ポリエスSB能力増へ

 東洋紡はポリエステルスパンボンド不織布(SB)の能力増を決めた。2008年度には年産2000トン増強し、年産1万6000トン体制にまで拡大する。香山和正機能NW事業部長は「06年度もSBは2ケタ%増を記録し、一部玉不足の状態にある」ことから、能力増に踏み切ることにしたと言う。

 設備投資額は明らかにしていないものの、敦賀、岩国事業所に置く2系列それぞれの改造を行い、生産能力増を行う。2~3年後にはフル生産に持ち込むとする一方「将来をにらみ、海外生産を含めた形でさらなる増設も検討する」と言う。

 とくに、主力である自動車資材分野は短繊維不織布製造の呉羽テック(滋賀県栗東市)などグループ企業と連携しながら海外戦略を組み立てていく方針で、SBの海外生産も視野に入れる。

 同時に難燃、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、塩ビ代替の「カテナ」など差別化戦略も推進する。現在、3割を占める差別化SBを4割まで引き上げる。とくに、アクリル系樹脂をコーティングした皮革調不織布のカテナは環境対応、さらに軽量化から引き合いが活発化。従来のトノカバー(荷台用カバー)だけでなく用途も拡大させる意向で、3年後には3倍増を見込む。

 同事業部はSBのほか、ポリエステル短繊維、PPS(ポリフェニレンサルファイド)繊維、繊維クッション材「ブレスエアー」などを展開。3年後には経常利益で現状比倍増を目指している。

<PPS3000トン目標>

 東洋紡はPPS(ポリフェニレンサルファイド)繊維「プロコン」を2008年度には年産3000トンに拡大する。同社は06年度、ポリエステル短繊維の約3割を占める汎用品から撤退し、バグフィルター用ニードルパンチ不織布が主力のプロコンの増産と、ポリエチレンとの複合繊維やペットボトルリサイクル繊維、細繊度など差別化品に絞り込んだ。

 プロコンは06年度の販売量が前年比3割増の2000トンで、すでにポリエステル短繊維設備の改造も終え、増産体制を整えており、中国など海外のバグフィルター需要の増加に備える。

ユニセル/1系列を広幅化

 帝人グループの合繊長繊維不織布製造、ユニセル(大阪市中央区)は建材用途の需要増に対応し、本社工場(山口県岩国市)1系列を広幅化し増産体制を整える。

 建材は自動車防音材、包装材料に次ぐ第3の柱に位置づけるが、昨年後半から需要が急増。月25万平方メートルであったものが、40万平方メートルに拡大した。東光政取締役事業部長は「これまでの開発努力が予想以上に実を結びつつある」と今後の拡大にも手応えを得ている。

 この建材は巻き付けタイプの耐火被覆材で、吹き付け工法に比べ材料が飛散しないなどが特徴。需要家の建材メーカーからは、さらに50万~60万平方メートルへの拡大要請もあり、増産に踏み切ることにした。5、6月に完成する予定だ。

 同社の2006年度は、建材の拡大で販売量は維持したが、原燃料価格の上昇、自動車防音材の新タイプ開発遅れなども重なり、2期連続での営業赤字を強いられる見通し。

 原燃料高に対応し昨年10月出荷分から値上げを実施した。これに伴う量的な落ち込みが予想されるものの、来期には黒字浮上させる計画で、自動車防音材のばん回を狙うほか、建材や油吸着材など産業資材の拡大に取り組む方針だ。

<本社を岩国に移転>

 ユニセルは4月2日から営業部、技術部を、登記上の本社で、工場のある岩国市日の出町2ノ1に移す。電話番号は0827・22・1151~2