LIVING-BIZ vol.113(2)/特集 寝具寝装モノ作り/輸入・生産量の減少続く/市場構造踏まえた生産体制へ

2024年12月18日 (水曜日)

 2024年の寝具寝装は、輸入・生産数量とも9月まで前年同期を下回る。物価高による節約志向の高まりで、家庭向けの販売数量減少が影響する。国内生産量が減少する中で、生産体制の再構築を進める動きも出ている。

〈家庭向け低迷響く〉

 財務省の貿易統計によると、24年1~9月のふとん輸入数量は、前年同期比7%減の1272万枚。全体の87%を占める人造繊維ふとんは5%減の1109万枚、羽根・羽毛ふとんは22%減の106万枚、その他のふとんは6%減の57万枚にとどまる。国内生産も同様に厳しい。経済産業省の「生産動態統計」によると、24年1~9月のふとん生産は、前年同期比5・2%減の158万枚となっている。

 輸入・国内生産数量の減少は、国内の家庭向け需要低迷の影響が大きい。暖冬の季節要因もあるが、食料品や光熱費の値上がりによる物価高で節約志向が高まり、寝具の購入を抑制する動きがあるとみられる。寝具自体がコストアップで値上がりしている点も購入を鈍らせている。

 新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要による反動減の影響も続いているとされる。寝具やインテリアなど室内アイテムは20、21年を中心に販売数量が伸びたが、ライフサイクルが比較的長いアイテムなため、買い替え需要は来年以降になるとの見方がある。

 11月に入り気温の低下で秋冬物が売れているが、24秋冬は10月まで厳しさがあった。生産・販売数量の減少は、国内の素材メーカーや染色加工企業などにも影響を与えており、生産体制を見直す企業も出ている。

 東レは、寝具の中わた用途にも供給するポリエステル短繊維を愛媛工場(愛媛県松前町)で生産するが、現在の市場構造を見極めながら適正な生産規模を模索すると同時に、生産品種のさらなる高付加価値化を進める。その一環としてポリエステル短繊維を製造する愛媛工場の単品大量生産型設備である連続重合・直接紡糸(連重)設備を停止し、特殊品の多品種小ロット生産にも対応できるバッチ式紡糸設備を生かす形に切り替える。

〈東洋紡せんい/越で改質糸生産/寝装、インナー用に提案〉

 東洋紡せんいは、ベトナムで改質加工して機能性を高めたわた・糸を生産する体制を構築し、寝装やインナー用途に提案する。2025年前半に市販を始める。

 同社は、特殊原料や特殊紡績技術を活用した差別化糸に定評があり、綿やレーヨンを改質した素材が強みの一つ。ベトナムで改質素材の生産体制を構築することで、増加傾向にある東南アジアでのモノ作りに対応するとともに、コスト対応力を高める。

 ベトナムでは協力工場を活用し、改質加工わた、紡績糸の生産体制を構築。既にわたの試験・性能評価を終えて見本を提案しており、見積もりや試作段階に入っている。

 綿を改質して吸湿発熱機能を高めた糸「ホットナチュレネオ」、セルロース系繊維を改質することでレーヨンの約2倍の吸湿特性を持たせた糸「セルフホット」、吸湿性が高く、水分を蓄える“潤い”改質レーヨン糸「リフレス」、わたを改質して消臭スピード・キャパシティーを高めた消臭レーヨン糸「アットデオ」をベトナムで生産。インナー用途は40、50番手を中心に、寝装用途はケット向けの20番手を軸に、カバー向けの40番手にも対応する。

 糸売りが基本だが、寝装用途は中わた需要も高いことから、ベトナムでの改質中わたの生産の組み立ても進め、早ければ25秋冬向けに打ち出す考えだ。

〈業務用途に需要〉

 家庭用途は厳しさがあるが、宿泊施設向けなど業務用途は比較的堅調で、国内でのきめ細かな対応力を強みに販売を伸ばすメーカーも見られる。インバウンドの増加によるリニューアル需要が旺盛なホテル向けで、オリジナリティー性を求める別注対応力や小ロット・短納期化で、売り上げを伸ばす縫製企業も目立つ。

 家庭向けについても、介護用のニーズにきめ細かく対応することで需要をとらえようとする企業もあり、厳しさのある中でも可能性を追求している。

〈24年1~9月のふとん生産/前年同期比5.2%減〉

 経済産業省の「生産動態統計」によると、従業員20人以上の事業所の2024年1~9月のふとん生産は、前年同期比5・2%減の158万枚だった。全てのアイテム項目で前年同期を下回っている。

 掛けふとんは1・4%減の29万6053枚、敷ふとんは0・8%減の64万2824枚、こたつふとんは35・7%減の2万2012枚、羽毛・羽根ふとんは9・6%減の62万3096枚だった。こたつふとん、羽毛ふとんの落ち込みが目立っている。