特集アパレル 高まる春夏アイテムの重要性(2)/オンワード樫山/三陽商会/レナウン/ダイドーフォワード/太陽繊維/レンチング

2024年11月22日 (金曜日)

〈オンワード樫山「五大陸」/新たに猛暑対応モデル〉

 オンワード樫山が展開する紳士服ブランド「五大陸」は、強みのスーツ企画でパターンオーダー(PO)に注力する。25春夏シーズンの生地は国産、インポートともにストレッチ性や軽量感のあるタイプをそろえる計画だ。

 軽量感は盛夏対策にも有効とし、スーツ、ジャケットの新型紙として、従来の盛夏対応モデルよりも薄い肩パッドや芯地を使用したアンコン(非構築的)の猛暑対応モデルを打ち出す。ビジネス需要に加え、リゾートカジュアルをイメージしたポロシャツ、さらにカーディガンといった軽い羽織り物も増やす。

 清涼感が感じられる生地も採用。調温機能がある新素材を使用したTシャツ、通気性と意匠性を両立させたレース素材を使ったジャケットも展開する。機能や意匠性を重視した一方、平均価格は前年の春夏シーズンとほぼ同水準となる。

 25春夏のテーマは「Re:treat(リトリート)」。日常生活から離れた避暑地でリフレッシュする意味を込めた。リゾート地をイメージさせる配色やリラックスしたスタイリングを提案していく。

〈三陽商会「マッキントッシュ・ロンドン」/超軽量や絡み織り訴求〉

 三陽商会が展開する紳士服「マッキントッシュ・ロンドン」は25春夏向けで、機能性の高いセットアップの提案に力を入れる。最軽量のセットアップを打ち出すほか、24春夏で好調だった絡み織りのセットアップは増産体制を整えて拡販する計画だ。

 通気性に優れシワになりにくく家庭で水洗いができるなど機能性の高い「ブリージージャケット」セットアップシリーズに最軽量モデル「ドットエアーシアサッカー」を投入する。高通気素材(ポリエステル78%、綿22%)を採用し、生地の目付けは1平方㍍当たり76㌘と超軽量。暑い夏でも快適に過ごせるようにした。

 伸縮性が売りの「フレックスジャージー」セットアップシリーズでは、24春夏にヒットした絡み織りのセットアップに新色のチャコットグレーを追加して全4色で展開する。24春夏はジャケットを約2300枚販売し、プロパー(正価)消化率も95%だった。25春夏はQRによる追加生産で、ジャケットを2500~2800枚まで用意できる体制で臨む。

〈レナウン「ダーバン」/きちんと感と着心地重視〉

 レナウンが展開する「ダーバン」は25春夏向けに、快適な着心地と見た目のきちんと感を両立した編み地のジャケットやセットアップの提案を強める。暑い夏でも身だしなみを重視するビジネスマンの需要を見込む。

 特殊な編み方により表面がウール、裏面はキュプラのジャケットは背裏や袖裏がなくても滑りが良く、快適な着心地が特徴だ。宮崎県日南市にある提携工場、宮崎ファクトリーで縫製する。

 担当者は「見た目はテーラードのジャケットだが、編み地を採用し裏地もなくすことで夏でも着やすくした」と話す。

 スーツ見えする編み地のセットアップも打ち出す。ビジネスとカジュアルの両場面で活用しやすいデザインだが、「どちらかというとビジネスシーンを意識して開発した」と担当者。機能面も優れており、ジャケットは家庭で水洗いが可能でパンツは洗濯機で洗える。素材はポリエステル60%、綿40%。編み地だが、強撚糸を用いているためシャリ感がある。ジャケットとパンツ2本以上のセット販売で客単価の向上を狙う。

〈ダイドーフォワード「ニューヨーカー」/カジュアル寄り拡充〉

 ダイドーフォワードが展開する紳士服「ニューヨーカー」は25春夏で、カジュアル寄りの高機能なジャケットやセットアップを拡充する。24春夏は猛暑の影響で、かっちりしたデザインのスーツやセットアップの売れ行きが鈍かった点を踏まえた。

 「ハイストレッチジャージーセットアップ」は動きやすさを追求した。強撚糸を用いた清涼感のある千鳥格子柄の編み地のセットアップだ。素材構成はポリエステル59%、コットン41%。丸みのあるシルエットで、肩周りはアンコン仕様にした。自宅で洗えるほか、防シワ性や撥水(はっすい)機能も備える。

 「ナイロンストレッチドビーセットアップ」は高い伸縮性や防シワ、ウオッシャブルの機能を持たせた。素材はナイロン64%、ポリエステル33%、ポリウレタン3%の構成。軽量だが耐久性を確保。出張や長時間の着用にも適している。

 盛夏でも安定的な需要が見込めるパンツは、投入量を拡大する。裾上げ不要のウオッシャブル対応のスラックスなどを打ち出す。

〈レンチング/デザイナー、学生を支援〉

 レンチングは、アパレル分野でデジタル技術の活用を含めたトレーサビリティーとサーキュラーエコノミーへの要望が一段と高まることに対応し、デザイナーや学生を支援しながら再生セルロース繊維「テンセル」の環境配慮素材としての打ち出しを強める。

 9月にはファッション産業の透明性を高める運動「ファッションレボリューション」に協力し、タイでのスタディーツアーを開催した。参加したデザイナーや学生はレンチングのタイ工場のほか、協力関係にある紡織のタイ・クラボウ、染色加工のタイ・テキスタイル・デベロップメント・アンド・フィニッシング(TTDF)、縫製のタイパルファンを見学した。

 カイハラ(広島県福山市)、旭化成とリサイクル素材を使用したサステなプレミアムストレッチデニム「SAISEI」(サイセイ)コレクションも共同開発。原綿の一部に廃棄綿布などを原料に再利用するレンチングのリフィブラテクノロージーを採用したトレーサブルレーヨン「レンチングエコヴェロ」を使用し、ポリウレタン弾性糸はリサイクル原料を一部使用した旭化成の「ロイカEF」を採用。これにカイハラの糸染め・製織技術が融合する。

〈太陽繊維/春夏は機能ポリエステル軸/備蓄販売機能などで存在感〉

 太陽繊維(大阪市中央区)は、紳士ドレスシャツ生地商社としての機能に磨きをかける。紳士ドレスシャツ市場は、綿100%生地に形態安定加工を付与した製品が標準化し、生地供給側の差別化が難しくなっている。顧客から高い評価を得る備蓄販売機能を強化して存在感を示す。

 24秋冬向けの販売は、主力である綿100%形態安定が堅調だったほか、トリコットで新規商売を獲得し、前年並みの販売を確保した。ただ、店頭は盛り上がりを欠いており、先行きの不透明感は強い。そうした中でも25春夏は前年を上回る販売を目指す。

 販売増に向けて備蓄機能を生かす。同じ綿100%の形態安定生地であってもさまざまなバリエーションを備蓄している点を顧客にアピールしたい考えだ。また、備蓄品を海外でデリバリーができることも利点として訴求する。

 そのほか、25春夏では機能ポリエステル「クールマックスエコメイド」も積極提案する。綿混が中心になるが、ポリエステル100%タイプの生産体制も整えている。