どうなる 2024 ~首脳の声から 今年を占う~(3) 商社
2024年01月19日 (金曜日)
攻勢に転じる再起動を
2023年は新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、百貨店などで集客が回復し、商社の4~9月期の業績にも好影響をもたらした。各社の24年の見通しからは、「外国人旅行者が増え続け、海外ハイブランドの需要も高まるため、百貨店の売り上げは拡大するのでは」(双日の藤井慎吾リテール・コンシューマーサービス本部本部長補佐)との意見も出された。
その一方でコロナ禍が落ち着き、「コロナ明けで購買意欲が旺盛だった消費者には一通り商品が行き渡り、オケージョン需要の取り込みを追求するSPAに消費者の購買欲求が向かっていく」(蝶理の吉田裕志常務執行役員繊維本部長)との見方もある。
〝コロナ明け〟の意識が社会に定着しつつある中、商社も攻勢に転じる姿勢を見せ始めている。設備投資についても、「成長曲線を描くには、投資に対する姿勢を安全運転からアグレッシブに変えないといけない」(伊藤忠商事の武内秀人執行役員・繊維カンパニープレジデント)、「サーキュラーエコノミー事業に注力しているため、廃棄物の回収・再資源化を担う静脈事業での新たな技術や設備などに対する投資は積極的に行う」(豊田通商繊維事業部)との方針を示す。
リスク分散が喫緊の課題とされる海外生産について、各社は再構築を進めており、「適地生産の拡大を目指す。カンボジアに注目している」(STXの髙丸雅弘社長)、「欧米アパレルとの取引が多いベトナムを生産ポートフォリオの中核に置く」(MNインターファッション)との展望も描く。
海外事業に関して販売強化を打ち出す企業も多く、「香港を拠点に海外自社工場を活用した欧州販売に力を入れる」(同)、「三国間取引の拡大を図る」(蝶理の吉田氏)と取り組みの内容を話す。
国内生産については、高コストや人手不足などを理由に「拡大は見込めない」との意見が大勢を占める。しかし、「高付加価値の商品提供を進める上では国内縫製に可能性はある」(モリリン)、「二酸化炭素の排出がコストになる時代を見据えると、国内での地産地消のサプライチェーンを段階的に作る必要があるのでは」(豊田通商繊維事業部)との意見も散見される。
23年の記録的な猛暑を受け、気候変動がビジネスに及ぼす影響に視線が向かい始めた。「今も暖冬の影響で秋冬物は弱含みとなっているため、快適温度帯を保つような素材の提案に努めている」(蝶理の吉田氏)という取り組みも増えそうだ。