クローズアップ/東レ 不織布・人工皮革事業部門長 平井 正夫 氏/「ウルトラスエード」増設、23年度中に着手

2022年06月01日 (水曜日)

 新型コロナウイルス禍に見舞われたにもかかわらず業績拡大を続ける東レのウルトラスエード事業。不織布では、「アクスター」の輸出が円安の追い風も受け順調な一方、ポリプロピレン(PP)は中国市場の拡大が鈍化し、今後の戦略変更を迫られそう。4月1日付で就任した平井正夫不織布・人工皮革事業部門長に当面の戦略を聞いた。

  ――2021年度の状況はいかがでしたか。

 全般的に相当、好調に推移させることができました。特に、「ウルトラスエード」が好調でした。不織布でも、ほぼ予算通りの業績を確保することができました。

  ――22年度は中期経営課題の最終年度です。最重要課題は。

 何よりも原燃料高騰を転嫁するための値上げを重視しています。早急に浸透させなければなりません。

 ウルトラスエードでは、さまざまな取り組みが花開き、特に自動車内装材で成功を収めています。トヨタ・レクサスの「RZ」、BMWのEV「iX」に採用されました。年産1千万平方メートルに増設後、昨年の後半からフル稼働に入りました。いずれ足りなくなるのは確実です。設備投資に1年以上かかるため、23年度のどこかで増設に着手します。

 ウルトラスエードでは、販売量の70~80%を環境に配慮したエコ素材に切り替えてきました。今後はバイオ素材を充実させ、30年度をめどに100%エコ化します。当社の繊維でバイオタイプの先陣を切っているのがウルトラスエードです。

  ――スパンボンドの状況は。

 ポリエステル・アクスターは多くを海外のフィルター向けに輸出しており、円安の追い風を受けています。フィルター以外の用途を開拓するため、低目付け品の開発にも取り組んでいます。フィルター向けは150~200グラムですが、20~30グラムの原反で湿式不織布の用途を掘り起こします。

  ――PPの今後をどうみていますか。

 これまでPPスパンボンドの需要拡大をけん引してきた中国市場の伸び率が長く続いた一人っ子政策の影響で鈍化してきました。これまでのような大きな伸びを期待できない以上、方向性を再検討しなければなりません。一人っ子にお金をかける傾向が強まるとともに、紙おむつの高級化が進むとみています。付加価値を引き上げた原反でこれらの需要を取り込んでいきます。PPでサステイナブルにどう対応するかも重要な課題です。

  ――長短総合不織布メーカーを掲げています。

 PPS繊維「トルコン」やフッ素繊維「トヨフロン」のような高機能素材による開発を進めています。衛材用にはエアスルー不織布を販売しています。社内には、どんどんやれとハッパを掛けています。