スクールユニフォーム特集(10)/アパレル編/モデルチェンジ、中学対応が焦点/トンボ/明石SUC/菅公学生服/瀧本/オゴー産業

2022年05月27日 (金曜日)

 今春は性的少数者(LGBTQ)の人々への配慮の流れが強まり、中学校を中心に制服をブレザーへ変える動きが活発になった。これによって制服モデルチェンジ(MC)校数は過去最高に。この動きは来年もさらに強まることが予想される。学生服メーカー各社は商品、サービスのブラッシュアップとともに、安定した生産体制の構築が求められる。

〈200校超のMC獲得/ハイブリッド型営業を推進/トンボ〉

 トンボは今春の入学商戦で、スクール、スポーツともに200校超のMC校からの受注を獲得し、2021年7月から22年4月の累計売上高は前年同期比3・5%増となった。新型コロナウイルスの感染対策を徹底したことで、工場も大きな混乱なく稼働できた。

 LGBTQへ配慮する流れを受け、同社も中学校向けにジェンダーレス対応の標準服の販売を増やした。織物調のニット生地「ミラクルニット」を採用した制服は次年度も含めて350校超の採用が決定。ライセンスブランド「イーストボーイ」や、デザイナーの松倉久美氏とのコラボレーション企画は大型校での採用につながるなど健闘した。

 スポーツでは昇華転写プリントを施した商品が引き続き採用を増やしており、新規物件の6割を占める。ウオームアップウエアの「ピストレ」も売れ筋で、新規物件の3割が同ブランドとなった。

 人工知能(AI)を使った採寸も広がりを見せる。今入学商戦では大型の一括納品校が40校を超えた。2万人の新入生が活用したとともに、小売店経由でも実施した。システムの精度向上によって昨年に比べて交換率が低下した。

 原料価格の高騰や為替の影響など外部環境が厳しさを増す中、同社は素材の置き換えや経費の削減などによって全体的なコストダウンにつなげる。従来のリアルの営業にリモート営業を掛け合わせた“ハイブリッド型営業”を推進するなど、今後も営業の仕事のAI化に力を入れる。

〈MC校獲得数過去最高へ/AI採寸採用は200校に/明石SUC〉

 明石スクールユニフォームカンパニー(SUC)は今春、LGBTQへの配慮で進む制服のブレザー化に対応できたことなどが要因で、制服MC校の獲得数が過去最高となった。今上半期(2022年1~6月)は前年同期比増収を見通す。

 新型コロナウイルス禍に加え、既存校で女子スラックスを採用する動きが高まるなど対応が困難を極めたが、計画通りに納入することができた。スポーツも「デサント」ブランドを中心に販売が堅調だった。

 新型コロナ禍で広がりつつある人工知能(AI)を活用した採寸は、昨春の倍となる200校で採用された。昨年に比べてシステムの精度も上がってきており、「特に高校では交換率が低くなってきた」(柴田快三常務営業本部長)。

 中学校を中心にブレザー化が加速する中、柴田常務営業本部長は「MCのペースが昨年よりも早くなっている」と指摘。来入学商戦に向けて「全ての対応を速めていかなければならない」と話す。

 設備面では先月、山口県宇部市に新物流施設を完成させた。製品保有能力が約30%増加する見込みで、8月からの本格稼働を目指す。宇部工場の倉庫スペースも同拠点へ移設。工場の空いたスペースには検査や仕上げ、裁断スペースを拡充し、生産能力アップにつなげる。

〈情報一元化を推進/安定的な生産体制構築へ/菅公学生服〉

 菅公学生服は来入学商戦に向けて、営業から生産、物流までを一気通貫でつなぐ業務センターの構築によって情報の一元化を進める。年々生産品目が変化する中、作り場を再構築し、安定的に生産できる体制作りにも力を入れる。

 LGBTQへの配慮の流れで中学校を中心にブレザー化が加速する中、同社も今年の入学商戦でMC校からの受注を伸ばした。

 ただ、問田真司常務によると、新型コロナウイルスの感染拡大によって、素材メーカーからの原反の入荷遅延に加え、生産現場の従業員が濃厚接触者となって出社できず工場の操業度が低下。当初の納期からずれ込んだケースもあった。

 来春に向けて生産面では、生産ラインの割り振りとともに多能工化を進める。昨年に導入したレクトラ製のCAM(自動裁断機)は生産性向上に効果が出てきたことから増設も計画する。営業から生産、物流までを一気通貫で一元的につなぐ生産性の高い業務センターの構築も推進。来年度中に生産までをつなげる見込みだ。

 教育ソリューション事業は認知度が高まりつつある。問田常務は「高校では教育ソリューションを絡めたMCも増えてきた」と説明する。今後も生徒の非認知能力(感情や心の働き)の育成やキャリア教育を推し進める。

〈6月期は増収増益見込み/営業力強化方針が結実/瀧本〉

 瀧本(大阪府東大阪市)の2022年6月期単体決算は、前期比増収増益になる見込みだ。トンボの子会社になって以降、営業力強化方針が実り、2期連続の好決算となる。

 22年入学商戦では新規採用校が「かなり多く獲得できた」(谷本勝治常務)。営業スタッフの業務を効率化し、学校や販売店への訪問頻度を高めたことなどが奏功した。学校に訪問して行う「出張展示会」や「制服勉強会」も学校との関係深掘りという点で大きな意味があったという。3年前から取り組む「学校獲得プロジェクト」の一環として社内で情報共有を進めたことも営業力を引き上げた。

 とりわけ、東京、名古屋、大阪、福岡といった都市部の新規校が多かった。技能実習生を中心に協力工場の稼働人員が1割減になることを事前に見越し、前倒し生産に動いたことが奏功して納期遅れなどのトラブルも未然に防いだ。

 来期も引き続き営業力や学校との関係強化を図るほか、倉庫の集約化など物流体制の見直しも検討する。現状は全国数カ所に倉庫が分散しているが、効率化に向けて集約化の方向で進める。

 独自に展開するネット決済可能な会員制プラットフォームサイトの利用者も増やす。22年入学でテストを行ったところトラブルは発生しなかった。

〈学校との関係作りに注力/人材育成も強化/オゴー産業〉

 オゴー産業(岡山県倉敷市)は今入学商戦の販売で前年並みを維持した。安心安全を軸にした小学生服「プレセーブ」など独自の取り組みで、学校との関係性構築につなげており、来入学商戦に向けてもこの取り組みに磨きをかける。

 同社の得意とする小学校を中心に受注を増やした。新型コロナウイルス禍で生産現場や物流が混乱する中、計画的な生産で納入も順調に行うことができた。

 同社はセコムと共同開発し、2005年から販売する、GPS装着に対応したプレセーブや、子供の危険回避能力の向上と地域の安全な環境作りにつなげる「全国地域安全マップコンテスト」など総合力を生かした提案力が強みだ。片山一昌取締役は「今後も学校との関係性を大事にしながら、当社のファンになってもらえるように取り組んでいきたい」と説明。「小ロットなどにも目を向けながら、大手とは違う土俵で勝負していく」と話す。

 新型コロナ禍で展示会が開催しにくい中、今年は19年を最後に中止していた東京での展示会の開催も視野に入れる。

 「人材あっての会社」(片山取締役)として社員の育成にも注力。今夏には5年ぶりに営業マン向けの研修を行う計画を立てる。片山取締役は「営業の前線で活躍できるように、営業能力やマインド向上につながる育成をしていきたい」と意欲を見せる。