東レ/世界初 抗ウイルス粒子開発/不活化に従来比100倍の即効性

2022年05月27日 (金曜日)

 東レは、従来比100倍の即効性を持つ新たな抗ウイルス粒子を開発した。繊維や樹脂、フィルム、塗料など多岐にわたる素材に抗ウイルス機能を付与でき、世界初の新素材になると言う。今後、試験品提供を通して検証を進め、2~3年内の製品化を目指す。「事業の規模感は2030年時点で100億円が目安」とする。

 機能性粒子の設計・合成技術と表面制御技術を活用し、酸化セリウム粒子を特定の分子で被膜した。これにより、ウイルスを粒子表面に引き寄せて吸着し、酸化分解することで不活化する。日本繊維製品品質技術センターの抗ウイルス試験結果では、新型コロナウイルス・デルタ株を15秒で99・9%以上、5分で99・99%以上不活化する試験結果が出ている。この不活化速度は、従来の金属系抗ウイルス剤と比較して約100倍以上に相当し、世界最高レベルの即効性となる。

 従来の消毒液のような薬剤は即効性が高く有効である一方、短時間で揮発するため定期的な消毒が必要となる。揮発しない金属系の抗ウイルス剤の場合は、持続性はあるもののウイルスを99・9%不活化するには1時間以上かかることが多いなど、それぞれに課題があった。今回開発した粒子は、これらと比較して効果の持続性と即効性、さらには危険有害性の低さや耐変色、耐腐食性という点において優れた特性を持つ。

 製品化に向けては、病院・介護施設、公共交通機関、学校、飲食店など不特定多数の人が集まり、抗ウイルスの即効性が求められる場面での活用を想定。マスクやガウン、カーテン、エアフィルター、カーシートといった繊維関連品や、手すりなどの樹脂、タッチパネル保護フィルムなどに対して、いずれも練り込みまたはコーティングで加工して製品化する。建築内装や食品包装向けには分散液として販売していく考え。