春季総合特集Ⅲ(7)/トップインタビュー/ユニチカトレーディング/ビジネスモデルを変革/常務執行役員特需部担当兼ユニチカトレーディング代表取締役社長 細田 雅弘 氏/産資・非衣料も拡大

2022年04月25日 (月曜日)

 ユニチカトレーディングの2022年度は中期3カ年計画の最終年度。新型コロナウイルス禍に伴う医療用ガウンの特需で20年度は好業績を確保したが、21年度はその反動で苦戦に。新型コロナ禍で傷んだ衣料繊維事業へのてこ入れを最優先課題に掲げ22年度に臨んでいる。「やらなければならないことがたくさんある」と語る細田雅弘社長。22年度の重点戦略を聞いた。

  ――新型コロナウイルス禍が収束して以降も業績拡大を続けていくためには何が必要だとお考えですか。

 新型コロナ禍で衣料繊維のマーケットが大きく変わってしまいました。旧来のビジネスモデルを変革していく必要性を痛切に感じています。国内ではこれまでメーカー型商社として運営してきたため、プロダクトアウト志向が強くB2Bがメインでした。

 アパレルの御用聞き的な商品開発ではなく、今後は消費者目線による取り組みを強化し、それをB2Bに反映させることが必要になってくるでしょう。ここに環境配慮型素材を関与させながら、新しいビジネスモデルを構築したいと考えています。

  ――ユニチカグループの環境配慮型素材のラインアップは多彩です。

 そこにうちの強みがあると自負しています。再生ポリエステル「エコフレンドリー」はさまざまな分野から引き合いを集めており、じわじわと販売量が増えています。バイオナイロン11「キャストロン」や「パルパーソロナ」では多くのお客さんと共同開発を進めています。PLA繊維「テラマック」では、ここに来て一般衣料からの引き合いが復活してきました。

  ――新事業開発室による取り組みが軌道に乗ってきました。

 市立東大阪医療センターと医療用ガウン「ユニソフィア」を共同開発する取り組みを先導してきたのが新事業開発室です。大阪府の吉村洋文知事が野戦病院を立ち上げる構想を打ち出しましたが、そこでの採用も決まっています。

 マクアケを通じたクラウドファンディングも新事業開発室の担当です。これまでに「植物由来の毛布」「空気を織り込んだタオル」などの5アイテムを投入し、いずれにおいても目標金額を超過達成できました。自社サイトからこれらを消費者に販売していくことが最終の目標です。

  ――海外での取り組みにも力を入れてきました。

 ベトナムのホーチミンにグローバル開発センターを開設しました。新型コロナ禍で人の行き来ができない状態が続いていましたが、少しずつ取り組みを前進させています。インドネシアや北京の現地法人との連動で現地ニーズを反映させた素材を開発し、現地で販売、あるいは日本に持ち帰る商流を掘り起こします。

 日本からの輸出が大きく伸びることはないでしょう。むしろ現地で糸を調達し協力企業で開発した素材を現地や海外市場で販売するビジネスが伸びていくと思います。必要に応じて「エコフレンドリー」のような独自素材を日本から現地に送り込みます。

 ミャンマーに事務所を開設することも検討してきましたが、今のところペンディングです。ベトナムのスペースがいっぱいで、最近はミャンマーやカンボジア縫製を増やしてきました。

  ――シキボウとの協業に乗り出しました。

 昨年12月に開いた共同展では、両社の差別化素材を組み合わせた「パルパー・アゼック」などを紹介しました。お客さんも付き始めています。シキボウさんはポリエステル長繊維の差別化糸に注目されています。共同展を毎年継続開催し、共同開発の成果を発信し続けていきます。

  ――産業資材や非衣料での取り組みをどう考えていますか。

 今後を考えると、産業資材や非衣料を伸ばさないことには業績拡大にはつながらないでしょう。ある寝装系大手からの依頼でバリア性に優れるナイロンフイルムをふとん袋用に供給しています。

 土木、建築を含めてポリエステル長短繊維、スパンボンド、スパンレース、フイルムの販売を伸ばしていきます。単なるユニチカの販社の位置付けではなく、加工度を引き上げた商材の販売で当面、売り上げ倍増を目標に取り組みます。

〈春を感じる時/春はいかなごのくぎ煮から〉

 兵庫県尼崎市で生まれ育ったため例年、母親が手作りするいかなごのくぎ煮に春を感じていたという。小学校から帰ってくると、「食欲をそそる何とも言えないいい匂いが漂ってきた」。遊びから帰った後の夕飯で、おかずには手をつけず、「出来立てのいかなごのくぎ煮だけでご飯を満腹になるまで食べたことが今も記憶に残る」と当時を懐かしむ。今でも「私の春はくぎ煮から始まり、ホタルイカ、筍へと続く」のだという。

〈略歴〉

 ほそだ・まさひろ 1982年4月ユニチカ入社。07年7月技術開発本部技術開発企画室長、12年7月執行役員、14年6月執行役員樹脂事業本部長、15年4月執行役員樹脂事業部長、16年4月上席執行役員樹脂事業部長、19年4月常務執行役員繊維事業本部長兼特需部担当兼ユニチカトレーディング代表取締役社長、20年4月常務執行役員特需部担当兼ユニチカトレーディング代表取締役社長。