三陽商会/新中計で仕切り直し/基本施策は継続、期中生産にも意欲

2022年04月18日 (月曜日)

 三陽商会は14日、2025年2月期を最終年度とする3年間の中期経営計画を発表した。経営再建に向けた「再生プラン」を掲げ、前期(22年2月期)の営業黒字化を目指していたが未達となり、仕切り直しとなる。売上高は22年2月期比61%増の625億円、営業利益43億円(22年2月期は10億5800万円の赤字)を見込む。

 新型コロナウイルス禍における、原価率の低減やプロパー販売比率の改善、販管費の抑制を徹底する。同様の施策は、前期で成果も出ているが大江伸治社長は「プロパー比率は前期61%だったが、中計最終年度では70%超を目指す」と述べた。

 ECは実店舗を補完するツールとして活用する。実店舗で販売しない「売らない店」のようなEC送客を行う店舗開発も行わない。「あくまでもECで消費者の購入場所を増やすスタンス」と説明した。

 前期の仕入れ量は新型コロナ禍前の19年2月期と比較して半分程度に絞ったが、今期から売れ筋商品を期中に生産、投入する構え。同社が生地を備蓄する形や、商社経由で代替素材を使用するケースもありそうだ。ブランドによっては上位10品番で売上高の30~40%を占めており、期中生産に意欲を示した。

 一方で、海外生産比率が85%(うち中国が7割)を占めており、物流リスクも明らかになった。上海のロックダウン(都市封鎖)の影響で、22秋冬シーズンの生産体制に影響が出ている。今春夏物の遅延は回避できたものの、今後はベトナムへ一部振り分ける検討も始めた。

 生地など原材料の高騰も続いているが「当社は毎シーズン違うアイテムを製作しているので、その都度、最適な生地を使用する」とした。同社は定番品を大量生産しないことから、サプライチェーンと連携し生地調達における選択肢を広げる。

〈6期連続の営業赤字/22年2月期〉

 三陽商会の22年2月期連結決算は、売上高386億円(前期比1・9%増)、営業損失10億5800万円(前期は89億1300万円の赤字)、経常損失7億3500万円(前期は90億3600万円の赤字)、純利益6億6100万円(前期は49億8800万円の赤字)となった(短信既報)。

 期間を通じて新型コロナ禍の影響を受け、集客に苦戦。コート商戦最盛期の今年1~2月は「特に影響を受けた。この2カ月間の売上高で約20億円の下振れ」(大江社長)とした。

 プロパー販売の強化、値引き販売の抑制による粗利益率の改善は計画通りに進捗(しんちょく)するも、売上高が低調だったことで粗利益の目減り分をカバーできず営業損失となった。これで6期連続の営業損失となった。退職給付制度の改定に伴い、特別利益12億円を計上し、純損益は黒字化した。実店舗は11%増、セール販売を抑制したECは11%減となった。

 通期は売上高560億円、営業利益12億円、経常利益11億4千万円、純利益9億円を見込む。