東洋紡/3本柱で事業拡大/22年度で繊維を黒字に

2022年04月13日 (水曜日)

 東洋紡は今月始動した新中期経営4カ年計画を通じ、フイルム、ライフサイエンス、環境の3本柱で引き続き拡大戦略を推進する。繊維事業では新会社、東洋紡せんいによるてこ入れを強化し、今年度からの黒字浮上を計画する。

 2021年度を最終年度とする前中計では連結ベースで売上高3750億円、営業利益300億円の達成を目標としていた。ところが、新型コロナウイルス禍の影響でそれぞれ3700億円、290億円とわずかに届かなかったとみている。

 ただ、好調なフイルムやエレクトロニクス事業、PCR検査関連事業が業績を下支えし「ほぼ中計目標を達成できた」(竹内郁夫社長)との認識を示す。

 新中計では「引き続き3本柱が業績をけん引する」とみている。フイルム事業で増設を検討するとともに、バイオ事業で菌を培養・精製するプロセスへの設備投資を計画する。

 タイに建設中のエアバッグ用ナイロン66の新工場を6月に稼働させ、ユーザーの認証を経て来年4月から出荷する。自動車生産台数の拡大を背景に、同事業の規模を「1・5倍くらいにしないといけない」と意気込む。

 岩国事業所(山口県岩国市)で、高機能不織布を開発・製造する拠点の建設を進めており、7月から生産を開始。グループの不織布に関する総合力を発揮させ、高機能不織布、環境対応不織布の開発を急ぐ。

 衣料繊維事業では、東洋紡せんいが、強みとする中東への輸出、スクール、スポーツに経営資源を重点的に配分し業績拡大を計画する。

 エクスラン(アクリル)事業は21年度に黒字浮上したとみており、今後は好調なアクリレート繊維や産業資材向けの販売を伸ばす。

〈神戸大学と連携協定/新たな価値を創出〉

 東洋紡と神戸大学は11日、神戸市内の同大学で会見し、研究・技術の発展と社会への貢献を目的とする「包括的な産学連携推進に関する協定」を締結したことを明らかにした。

 両者はこれまでも人材交流や正浸透膜を活用した省エネルギー型海水淡水化技術などの共同研究を実施してきた。

 今後は環境分野におけるカーボンニュートラルに寄与する膜技術、QOL(生活の質)の向上につながるライフサイエンス分野を中心とする共同研究を進め、新製品の開発、新規事業の創出を目指す。

 具体的には、感染症に係る診断システム、介護医療に利用できる化粧品原料、生体接着剤、スーパー繊維の医療分野への応用などがテーマに上っているという。

 東洋紡の竹内郁夫社長は「神戸大学の学術的な知見と東洋紡の技術蓄積を広く結集し、さまざまな分野で新たな価値を創出することを通じ社会に貢献したい」、神戸大学の藤澤正人学長は「東洋紡との連携で知や人材の創出をさらに推進し、神戸から世界を目指し新たな領域でのイノベーションを発信したい」とそれぞれ抱負を述べた。