技術の眼

2022年04月12日 (火曜日)

 「技術の眼~NEW WAVE GENERATING TECHNOLOGY~」では将来的にニューウェーブを巻き起こしうる重要な技術にスポットを当て、紹介する。

〈カジテック/エリンギでレザー代替素材〉

 服飾資材商社のカジテック(大阪市中央区)はこのほど、エリンギから作ったレザー代替素材「マイセル」の販売を始めた。英国の服飾資材商社、エーピーエクスプレスと日本国内の独占販売契約を結んだ。

 マイセルは、ベトナムで栽培したエリンギを、染色を含めて化学物質ゼロで生産する。工場もベトナムにある。栽培されたエリンギのうち4~5%はサイズや形状を理由に廃棄される。この廃棄されるエリンギを使う。生成物質はエリンギのほかに、植物性の溶加材、セルロース繊維の不織布、天然高分子(ナチュラルポリマー)。

 基本となる形は1.2×0.9メートルのシート状で、厚みは0.6~1.6ミリの4種類。カラーは12色だが、今年中に24色に増やす。表面感はエンボス調やピッグスキン調などを取りそろえ、今後、バリエーションを拡大させていく。

〈エコナビスタ/自己成長型睡眠センサー〉

 スリープテックベンチャーのエコナビスタ(東京都千代田区)は、人工知能(AI)を用いた新たな自己成長型睡眠センサーを開発した。

 介護現場などで使用する睡眠センサーをはじめとした見守りセンサーは、「ベッドから手がはみ出ただけで異常検知をしてしまう」「通知が来たので訪室したら既に対象者がいなかった」などの誤検知、誤発報、通知遅延などが起こる課題があった。

 同社は、2021年から東京ガス、三菱ケミカルインフラテックと自己成長型睡眠センサーを共同開発。課題解決のため、延べ1万人を超える臥位データを解析し、生体情報を学習するエッジAIを睡眠センサーの端末に搭載するとともに、クラウドAIシステムからなるデュアルAIが相互に自己学習を繰り返すことでより正確なセンシングを実現した。

 同製品を用いた介護施設向け高齢者見守りシステムと、在宅向けシステムを提案する。

〈クラボウ/中古着物から再生糸〉

 クラボウと着物・ブランド品等リユース事業を運営するBuySellTechnologies(以下、バイセル)は、汚れや破損によって着用できなくなった中古着物をシルク原料に戻し、ニット製品やデニム製品にアップサイクルする再生素材「サイシルク」を共同企画した。クラボウのアップサイクルシステム「ループラス」を活用した。

 総合リユースサービスを展開するバイセルは現在、年間100万枚以上の中古着物を家庭から買い取り、リユース品として販売するほか、汚れや破損で中古着物として再利用できないものはリメーク用生地として国内外に販売している。

 バイセルが買い取った着物の中から、再利用できない絹100%中古着物を色柄や金銀糸の有無などで選別して供給。これをクラボウが開繊・反毛して糸に戻す。着物に使用される絹糸は長繊維のため開繊・反毛の技術的難易度が高いが、その技術をクラボウが確立した。

〈モーブル/廃棄米使用した中材〉

 家具・寝具企画製造のモーブル(福岡県大川市)は、廃棄処分されている米を使った立体網状構造体の中材を開発した。

 同社が自社工場で生産する立体網状構造体の中材「ライトウェーブ」はこれまで、石油由来のポリエチレン100%使いだった。環境意識の高まりを受け、数年前からバイオマス素材を活用した製品の検討や試作を繰り返してきた。その中で国産バイオマス資源を利用したプラスチック樹脂原料を製造するバイオマスレジン南魚沼(新潟県南魚沼市)の「ライスレジン」に出会った。

 ライスレジンは、食用に適さない古米や米菓メーカーなどで発生する破砕米、飼料としても処理されない非食用米をアップサイクルした国産のバイオマスプラスチック。ライトウェーブ以上に緻密な温度管理などが必要だったが、ポリエチレンのライスレジンを複合した立体網状構造体「ライスウェーブ」を開発した。バージン品と同等の耐久性があるとする。

〈豊島/3Dサンプル提供サービス〉

 豊島は4月下旬から、出資先のGOOD VIBES ONLY(グッド・バイブス・オンリー、GVO、東京都目黒区)が構築したアパレル向けDXプラットフォーム「Prock」(プロック)に、自社開発した「3D LIBRARY」(3Dライブラリ)を連携させたサービスを開始する。3次元(3D)サンプルを提供し、アパレル生産の効率化とコスト低減を支援する。

 プロックは一つのプラットフォーム上で、企画した商品の3Dサンプルの制作依頼、進行管理、完成データの受け渡しや修正依頼などの伝達を一括で行うことができる。豊島の3Dライブラリと連携させることで、専用ソフトを使わずに3Dデジタルサンプルによる確認が可能になる。

 5月には、20代女性向けのブランド「STELLA VIANA」(ステラヴィアナ)を立ち上げ、プロックと連携させた服作りを始める。

〈日清紡テキスタイル/不織布の裁断くずで糸〉

 日清紡テキスタイルは、不織布の生産工程で発生する裁断くずを素材の一部として利用した糸、「めぐりコットン」を開発した。

 同社の綿100%不織布、「オイコス」の生産工程で発生する耳端などを再利用する。同不織布は、バインダー(接着剤)を使わずに水のみで繊維を交絡させる独自製法で作られる。

 解繊機を導入し、裁断くずの利用法を検討してきた。通常なら、裁断くずに混在する不純物を取り除く工程が必要だ。「オイコス」の裁断くずならその必要がないと考えて試作を重ね、今回のリサイクル糸を開発した。

 混率はバージン綿70%、解繊綿30%。10、16、20番手をそろえた。既に、ガーゼ使いの服を製造販売するアオ(新潟県糸魚川市)が、同糸を使ったコートやジャケットを販売している。

 今後、解繊綿100%の糸、再生ポリエステルと解繊綿のみを使った糸なども商品化する予定だ。