特集 アジアの繊維産業(13)/ポストコロナに向けた胎動/わが社のアジア戦略

2022年03月30日 (水曜日)

〈鴻池運輸/空より安く、海より速く/ミャンマー・日本をつなぐ〉

 鴻池運輸の国際物流関西支店が展開する、ミャンマーとタイを陸路で、タイと日本を海路でつなぐ「クロスボーダー輸送」の利用者が拡大している。空路よりも安く、海路だけより速い点が評価につながっているようだ。

 全世界的に物流が混乱する今、ミャンマーのヤンゴン港から日本まで海送した場合、同社の21年12月~22年2月実績では平均で29日かかった。最大で50日かかったケースもあるという。

 ヤンゴンからタイのレムチャバン港まで荷を陸送し、港から日本まで海送するクロスボーダー輸送では平均20日という結果が出た。

 日本やその他各国からタイまでを海送、タイからミャンマーまでを陸送で運ぶ逆のルートも利用者が増えている。ミャンマーは生地や資材の生産が少ないため外国から輸入する必要がある。その輸送も昨今の物流混乱で納期が遅れるケースが頻発している。日本からミャンマーの港に向かう場合はマラッカ海峡を通過する必要があるが、このルートではシンガポールで2カ月コンテナが止まったこともあるという。その解消を狙って、日本からミャンマーまでを海路と陸路を使って運ぶクロスボーダー輸送の利用者が増えている。

〈クラボウインターナショナル/新品質管理システム構築へ/内販拡大もテーマ〉

 素材メーカー系OEM/ODM商社のクラボウインターナショナルは、中国、インドネシア、ベトナム、バングラデシュを4軸にアジア縫製オペレーションを進めている。数量ベースの各国比率は中国40%、バングラデシュ30%、インドネシア20%、ベトナム10%という構成。今後は「リスク管理は新しい時代を迎えた」(西澤厚彦社長)として、これまで培ってきた協力工場管理システムを活用した新たなマネージメントシステムを構築していく。

 これまでは日本人技術者を各国に定期的に派遣して品質・納期管理を行っていた。しかし、新型コロナウイルス禍で渡航ができなくなり、リモートに切り替わった。特に品質コントロールが難しいバングラデシュではリモートでのナショナルスタッフ育成が進んだ。「大きな収穫」として今後もこの管理体制を改善しながら継続していく。

 アジアでの販売拡大もテーマの一つ。中国生産、中国内販は既に進展しており、その他アジアや欧米向けにも挑戦していく。その際の商材として、このほどリニューアルしたサステイナブルブランド「エコロジック」などを活用する。

〈東海染工のTTI/プリント素材を多様化/レーヨンで受注拡大へ〉

 東海染工グループのトーカイ・テクスプリント・インドネシア(TTI)の加工数量が新型コロナウイルス禍以前の8~9割程度まで回復している。同社が加工する生地を使ったインドネシア内販衣料の消費が戻っていることが主な要因。

 同社の主力は綿、綿混生地のプリント、プリント加工生地の販売。新型コロナ禍以降、需要の落ち込みを補うために、加工する素材の多様化を進めてきた。近年はレーヨン100%、レーヨン混の生地のプリント加工の受注拡大に力を入れており、こうした施策も業績の回復を支える。

 インドネシアではレーヨンの生産量が多く、商圏も大きいため今期もレーヨン素材への加工を強化する。綿花の価格や加工薬剤価格の上昇で綿素材の加工コストが上昇していることもレーヨン強化の背景にある。

 レーヨン素材に対してこれまでより安定的かつ質の高い加工ができるよう薬剤の調合などで工夫する。無地染めに加え、地元で安定した需要が見込めるバティック柄の取り込みにも力を入れる。

 “環境”に関連した取り組みも強化する。欧米、日本市場で環境に配慮した生地の需要が高まっていることを受け同社では、オーガニックコットンの国際認証「OCS」を取得した。さらに東海染工で開発した濃度制御器で使用薬剤濃度を正確に管理し必要以上に薬剤を使わずに済むようにする。

 回収苛性装置を使うことでもカセイソーダ使用量も節約する。使用エネルギーでは石炭と併せて、バイオマス燃料を使うことにより石炭使用量の削減を検討する。

〈東陽織物/生産・品質管理が強み/越で合繊織・編み物生産〉

 東陽織物(金沢市)は2001年に国内の自社工場を休止し、ファブレス生産に切り替えた。現在はベトナム中心に中国、インドネシア、日本の協力企業に生産委託し、カーテン、ユニフォーム、スポーツ、寝装向けの合繊製織・編み物を販売する。

 最大の特徴は生産・品質管理体制にある。ベトナムは合繊製織・編み物の品質安定性が課題とされるが、現地法人の技術者が協力企業に常駐し、技術指導を行うことで品質問題をクリアする。現地法人は日本人5人、ベトナム人30人の体制で、ベトナム人も日本語を話し、専門知識を持つ。

 生産委託先は3社が主体で中には工場内に同社の事務所も置く。その他の委託先も各工程で同社の技術者が立ち合う。越澤亮二社長は「トラブルが生じた際、何が起こったかをすぐに把握し改善する。その精度とスピードが強み」と語る。

 今後はベトナムで機能加工品など難度が高いモノを増やす。「そのために委託先も拡充する」。さらに対日輸出に加え、ベトナム内販や第3国輸出にも取り組む。その一環で、3月1日に自社サイト(toyo-orimono.co.jp)を更新し、国内外への発信も強化した。