特集 尾州産地総合(4)/在名4商社/尾州産地との取り組み

2022年03月29日 (火曜日)

〈タキヒヨー/素材開発/販売グループマネジャー 中嶋 正樹 氏/新たな協業の可能性想像〉

  ――尾州との取り組みについて、現況は。

 ファッションの中でも特にドレッシーなゾーンが中心の取り組みが多く、先細り傾向にあります。市場の回復を待つことも難しい。製販双方が新たな協業を模索しなければならないという局面です。

  ――その現状を打破するために大事なことは。

 産地の特徴をこれまで以上に把握しながら、新たな協業の可能性を想像し続けることが大事です。先入観にとらわれない柔軟な発想が、多様化したニーズに“刺さる”商品供給に直結することも少なくありません。アウトドア関連からインテリアの内装向けまで、尾州と取り組んで新たな商流を作るチャンスはまだまだあると考えます。ファッション向けでも、コアなファンとブランドを持つ企業と個別につながる好例もあります。

  ――改めて、尾州の強みを教えてください。

 尾州は今なお技術の継承や革新が進む世界的な産地です。分業体制を敷きながらも、それぞれの企業が協力体制を整えて小ロットから量産まで対応する。こういった機動力と俊敏性も魅力です。尾州がこれまで培ってきた“モノ作りの力”と、当社の“市場を創造する力”を結集し、新たなイノベーションが生まれることを期待しています。

〈瀧定名古屋/取締役婦人服地部門担当 瀧 浩之 氏/無限大のオリジナル性〉

  ――事業部の概要を教えてください。

 婦人服地部は7課体制でカットソー、織物、原料の各課に分かれています。その中で織物を扱っているウールの32課、天然繊維や複合スパンの11課、意匠物やプリント物の34課が尾州との取り組みを深めています。

  ――尾州の強みは何でしょうか。

 さまざまな原料をブレンドして糸が作れたり、加工によって多彩な変化を出せたりと無限大にオリジナル性を表せます。思い描いたものが作りやすい産地で、当事業部としてもなくてはならない存在と言えます。

  ――事業部の商況は。

 昨年末から店頭もほぼ通常通りに営業しており、順調に生地も動いていましたが、まん延防止等重点措置以降は鈍化しました。海外向けでは中国販売が順調でしたが、最近の新型コロナウイルス感染拡大で不透明さを増しています。

  ――今後の事業部の方向性は。

 安定供給を大命題としていますので、課ごとに尾州のメインの仕入れ先を決め、適時適品が生産できる体制を敷いています。原料課があることで尾州との取り組みも今まで以上に深化しています。こうした体制を生かし今後も尾州と共同したモノ作りを続けていきます。

〈豊島/一宮本店 一部部長 酒井 良将 氏/尾州製品を消費者に届けたい〉

  ――改めて一宮本店の事業内容は。

 原料や糸だけでなく生地や製品も扱っています。その中でも糸を主力としており、梳毛糸を中心に幅広い種類があります。糸の販売のうち尾州向けは8割を占めているため尾州との結び付きは強いと言えます。

  ――尾州の現況はどのように見ていますか。

 新型コロナウイルス禍で厳しい状況でしたが最近では、生産は戻りつつあります。昨年末からは気温が下がり店頭販売も堅調でしたのでアパレルの在庫が減りました。さらに、以前のように店頭は閉まることなく営業していますので尾州への発注も回復傾向にあります。

  ――尾州の強みは何でしょうか。

 やはり小ロット多品種の対応ができ、何でも作れるところでしょう。設備の種類も豊富で織りや撚糸などでさまざまな種類があるためモノ作りに幅があります。

  ――尾州との今後の取り組みは。

 当社の製品事業を生かしながら消費者に尾州製品を届けたいです。輸出とも結び付けて、海外への売り込みも進めます。尾州はファッション衣料に偏っていますので、資材向けの開拓などの手伝いもできたらと考えています。

〈モリリン/マテリアルグループ 素材1部素材2課 部長代理 林 伸太郎 氏/先入観と慣例に縛られない〉

  ――尾州との取り組みで大事にすることは。

 糸を販売し生地の仕入れも行うなど、現在も関わらせて頂いています。原料や糸の流通量は総じてタイトですが、天然繊維から機能を持つ合繊まで、差別化した糸・原料に付加価値のある情報を添えて供給しています。尾州と販売先をつなぐ企業として、先入観や過去の慣例に縛られず幅広く協業できるよう、高くアンテナを張ります。

  ――生地の輸出にも取り組んでいますね。

 中国向けは、主に上海の自社拠点を通じて尾州産生地の内販に力を入れています。ニーズがつかみにくく販売戦略の立案が難しいですが、多品種少量生産を含めた対応力と、意匠性が具現化できれば商機はあると思います。

 欧米輸出は、ウールから再生原料までサステイナブルな素材に需要があると想像します。訴求方法を模索しながら供給に結び付けたいです。

  ――尾州の特徴を教えてください。

 高度な技術とクラフトマンシップを持ち、小ロット・多品種生産も対応できる利便性の高い産地だと認識しています。その特徴を把握しながら、国内外の多種多様なニーズをかなえ、新たな領域への展開も模索できればと願っています。