特集 スポーツ&アウトドア(4)/環境への配慮に欠かせない技術の力~素材メーカーの取り組み~/東レ/東洋紡STC/ユニチカトレーディング/帝人フロンティア

2022年02月18日 (金曜日)

 スポーツ・アウトドアウエア向けの素材は、高い機能性の開発に加え、国際的な流れの中でサステイナビリティーへの対応も重要視される。素材メーカー各社の取り組みを紹介する。

〈「エコディアナイロン」打ち出す/東レ〉

 東レは23春夏に向けて環境配慮型素材のラインアップを重点的に打ち出す。白度やトレーサビリティーにこだわって開発したペットボトル再生ポリエステル「&+」(アンドプラス)や部分バイオ「エコディア」シリーズの販売を伸ばし、2021年度で「19年度並みの業績に回帰させる」との意欲を示す。

 東レは部分バイオ・エコディアやアンドプラスを前面に23春夏商戦に臨んでいる。エコディアナイロンでは、業界でもあまり見られない11デシテックス(T)/22Fという細繊度糸使いのスポーツ素材が注目されている。

 スポーツ素材全体に占める環境配慮型のウエートを30%前後に引き上げており、ユーザーからの旺盛な引き合いを背景に「この比率はさらに拡大する」と見通している。

 現在、イタリアのアクアフィルと連携し、回収した漁網などからケミカルリサイクルで生産するナイロンの開発に取り組んでおり、23春夏向けから販売をスタートさせた。

 このほか、春夏の主力素材に位置付ける高通気「ドットエア」、汗染み防止「フィールドセンサーEX」、ストレッチ「プライムフレックス」などのアップデートを進めており、これらによる拡販も計画する。

 このほど100%植物由来のナイロン510「エコディアN510」を開発した。23秋冬からスポーツ、アウトドア向けに投入。25年度で7億~8億円の販売を計画する。

〈「スクラムテック」を前面に/東洋紡STC〉

 東洋紡STCは中肉の高密度ニット(丸編み)「スクラムテック」を前面に23春夏商戦に臨んでいる。販売好調が続く「Z―シャツ」でも拡販を見込んでおり、「22年度で19年度並みの業績に回復させたい」考えだ。

 スクラムテックはポリエステルと高弾性糸を交編した高密度な軽量・ストレッチニット。ハリ・コシにも優れているため製品映えするのも特徴。

 耐久性を引き上げた「同タフ」、伝線しにくい「同ノンラン」、フリーカットしてもほつれにくい「同フリーカット」、吸汗速乾・防風・UVカット性能を持たせた「同プロ」を新たに開発。シャツ、ジャケットのゾーンも掘り起こす。

 薄地の高機能ニットでは、ポリエステル綿混のZ―シャツ、ポリエステル100%の「E―シャツ」の販売が国内に加えて欧州向けも好調に推移しており、23春夏でも2桁%の拡販を計画する。

 商品開発では、わたの改質技術を駆使。消臭コットン「デオドラン―C」、保水性に優れるレーヨン「リフレス」でスポーツ素材の開発を進めている。

〈「キャストロン」伸ばす/ユニチカトレーディング〉

 ユニチカトレ―ディングは売れ行きが好調な吸放湿ナイロン「ハイグラ」の拡販を目指すとともに、環境配慮型の素材を求めるニーズに対してはナイロン11「キャストロン」を重点投入する。

 23春夏に向けては販売好調が続くハイグラでさらに拡販を計画する。ハイグラは吸水ポリマーをナイロンで被覆した芯鞘構造糸。自重の約35倍の給水能力が特徴。べとつきや蒸れ感を軽減する機能性がスポーツ以外でも注目され、この数年で売れ行きが急増したという。

 春夏ならではの涼感素材として、熱線遮蔽(しゃへい)「こかげマックス」、気化熱によるクーリング「打ち水」もラインアップしており、ハイグラとともに重点的に投入する。

 キャストロンはヒマ(唐胡麻)の種子から抽出したヒマシ油を原料に生産するバイオマス素材。ナイロン11はナイロン6よりも軽く耐摩耗性、寸法安定性などに優れている。海外のアウトドアアイテムを中心に「採用が広がっている」。

 再生ポリエステル「エコフレンドリー」では、エコ化した吸汗速乾「ルミエース」やUVカット「サラクール」などを提案しており、薄地ニットの販売を先行させる。

 新型コロナウイルス禍で2020年度、スポーツ素材の販売は20%強の減収となった。21年度は荷動きが活発化しており、19年度対比で90%前後まで回復させる方針。

〈3次元変化で蒸れ感軽減/帝人フロンティア〉

 帝人フロンティアは、衣服内の蒸れ感を解消する編み地「ファイバライブエーシー」を開発した。発汗時の水分に反応して編み地が3次元的に構造変化し、体感可能なレベルで通気性が高まる。23春夏向けのスポーツ・アウトドア向け衣料の重点プロモート素材として積極訴求し、拡販を図る。

 新素材は、吸湿性が異なる2種類のポリマーによるサイド・バイ・サイド型複合糸と極細捲縮(けんしゅく)糸による特殊加工糸を使用している。さらに編み組織・設計と染色仕上げにも工夫を施すことで、3次元方向への変化で通気度をコントロールすることを実現した。

 従来の「ファイバライブ」は2次元方向に変化するため寸法変化が問題になっていたが、新素材はこれを解消することに成功した。高密度設計のため編み地変化前の防風性(1秒間に平方センチ当たりで50 ㏄以下)も付与している。

 そのほかでは「デルタntr」、ランニングやサイクリング用のハイゲージ(46ゲージ)軽量ニットも重点素材。デルタntrは天然繊維のようなナチュラルな外観と「デルタ」の機能を併せ持つ。スエットやトレーナーなどの用途での提案を強化する。