シキボウの原糸販売/特徴が明確な糸提案/メルテックスも再稼働

2022年01月31日 (月曜日)

 シキボウの原糸販売は2021年度(22年3月期)前半から回復傾向が続いている。堅調な受注から自家工場、協力工場ともに紡績スペースも埋まった。ただ、新型コロナウイルス禍前の水準まで需要は回復していないことから、ネット通販など新たな需要に対応する特徴が明確な糸の提案を強化する。

 同社の原糸販売事業は、21年度上半期(4~9月)後半から受注が回復傾向となっている。新型コロナ禍で20年度に綿糸の生産・消費がともに低迷し、流通在庫も低水準となっていることや、経済正常化に向けて徐々に繊維製品の生産が回復し、糸消化が進んだことが要因と考えられる。

 このため富山工場(富山市)の紡績スペースは3月まで埋まっており、ベトナムの協力工場も4月まで埋まる。昨年9月の火災事故で紡績を一時停止していたインドネシア子会社のメルテックスも年初から紡績も再稼働し、こちらも3月まで生産スペースが埋まっっている。

 販売先としては、特に和歌山ニット産地向けが好調。差別化原綿使いや強撚糸など特殊糸や機能糸が販売をリードする。北陸産地向けも細番手ポリエステル綿混紡糸などが順調に売れている。今治タオル産地向けは富山工場で生産する甘撚り糸や機能糸など特徴のある差別化糸の販売が増加した。

 ただ、綿花高が逆風となっている。糸値も順次引き上げているが綿花価格の上昇スピードに追い付かず、採算が圧迫される。糸の総需要自体は新型コロナ禍前の70~80%までしか回復していないと考えられることから、さらなる需要掘り起こしが必要になる。

 このため流通構造の変化に対応した糸の開発・提案を強化する。例えばタオル分野では百貨店での販売やギフト需要が減少する一方、インターネット通販が拡大した。このためインターネットを通じて消費者に直接訴求できる特徴を持った糸の重要性が高まった。

 その一つとしてサステイナビリティーを切り口とした糸を打ち出す。オーガニックコットンや燃焼時の二酸化炭素発生量が少ない特殊ポリエステル繊維「オフコナノ」などの活用を進める。鞘に綿、芯にポリエステル短繊維を配した2層構造吸水速乾糸「クイックドライコットン」など機能糸も好評なことから、ポリエステルにオフコナノを採用したタイプの試紡も始まった。