特集 北陸産地(2)/新しい取り組み進む北陸産地/蝶理/帝人フロンティア/旭化成アドバンス/東レ

2021年12月22日 (水曜日)

〈ブルーチェーンを拡大/北陸品の輸出本格化/蝶理〉

 蝶理の北陸産地への原料販売は、今夏から2019年を超える水準に戻っている。「エコブルー」や「テックスブリッド」などの独自糸が伸びているほか、ピン仮撚糸なども順調に推移する。扱う糸種は100品種以上増え、特にサステイナブル糸を拡充した。

 サプライチェーン全体でサステイナビリティーに取り組む「ブルーチェーン」も始まった。サステイナブル糸を軸に、産地の技術を組み合わせながら生地、製品の新たな展開につなげていく。今期、ブルーチェーンでの売り上げは100億円規模になる見通しで、来年度はさらなる拡大を狙う。

 北陸産地から出る繊維廃棄物を回収して反毛し、河川補強や自動車用途に展開する取り組みも始まった。今後は、ケミカルリサイクルも検討していく。

 北陸産地とのテキスタイルでの取り組みにも注力する。今期は資材やスポーツなどで拡大しているが、今後は欧米や中国など海外への販売を含めて拡大していく。今年は香港に貿易会社を設立するなど北陸品の海外への販売を伸ばすための体制も整えた。「産地の商品をテキスタイルや製品で販売していく取り組みを来年から本格的に拡大していく」(吉田裕志常務執行役員)とする。

 受発注管理やモノの動きの見える化を実現する独自のシステム「北陸プラットフォーム」は原料で取り組みが進んでいる。来年からはテキスタイルメーカーとの取り組みも始める方向で準備を進めている。

〈来期はコロナ前の水準へ/ユニフォーム拡大に注力/帝人フロンティア〉

 帝人フロンティアの衣料素材本部は今期(2022年3月期)、19年度の80%の水準に戻す計画だ。原料高の影響もあって上半期の利益は若干の未達となったが、通期では達成可能とみており、来期は新型コロナウイルス禍前の水準に戻す。

 上半期はスポーツの国内向けなどの動きが鈍く、計画比微減となった。下半期は回復を見込み、足元では海外向けのアウトドアが好調で、ユニフォームや海外のスポーツなども堅調に推移する。

 北陸に関連するビジネスも堅調に推移する。原料販売はインテリア用途が伸び、資材用途も調整局面を脱して回復に転じた。グループ会社の稼働も順調で、織り・編みともフル稼働が続く。仮撚りもレッグ用途のほかは回復している。

 今後は環境配慮型素材をベースに、北陸産地との取り組みを強化していく考えで、「生地だけでなく原料での取り組みも含めて強化する。環境をベースに国内でしかできないモノ作りをしっかりと進めていく」(門脇秀樹衣料素材本部長)とする。環境配慮型素材は、再生ポリエステル「エコペット」の差別化糸やPTT繊維「ソロテックス」のほか、海洋プラスチック対応を視点にした開発にも力を注ぐ。日本素材の海外市場への販売も拡大していく考えで、欧米だけでなく中国向けにも力を入れる。

 力を入れるユニフォーム用途でも、北陸との取り組みを強化する。スポーツとユニフォームの技術を融合した開発や、カジュアルでの技術のユニフォームへの展開を含め、「開発案件を増やしていく」とする。

〈エコセンサーがけん引役/今期利益は19年超えへ/旭化成アドバンス〉

 旭化成アドバンスの繊維本部は今期(2022年3月期)、前年比30%の増益を計画する。

 上半期は、販管費の削減に加えて衣料用途の回復が寄与し、19年並みに戻した。衣料用途は計画比50%増と順調に回復。特にスポーツ・アウトドア用途が好調で、ファッション用途(アウターと裏地)やインナー・レッグの落ち込みをカバーした。下半期はアウターや裏地、インナーも回復を見込む。

 衣料用途回復のけん引役の一つが「エコセンサー」で、スポーツ用途を中心に前年比約50%伸びた。今後はインナーやアウターでも広げていくほか、自動車内装材など資材関連でも環境配慮型商品の開発を強化する。

 北陸産地との取り組みも堅調で、織布はWJL、AJL、レピアともスペースは埋まっている。裏地のスペースで民族衣装用やアウター用を生産するなどAJLでの新たな取り組みも進んだ。

 今後は既存取引先との関係を深めながら、産地との取り組みを強化する。特にサステイナブルなモノ作りに力を入れる考えで、「エコセンサー」を軸に取り組みを広げていく。好調なアセテート繊維や綿糸、「ロイカEF」などでの取り組みも拡大する。

 新中期計画が始まる来期は、「成長軌道に持っていく」(橋本薫取締役専務執行役員繊維本部長)方針。衣料用途はテキスタイルを軸に、サステイナブル素材の強化やテキスタイルと連動させた製品ビジネスの拡大に注力する。資材用途は中国、ベトナム、タイ、米国の4拠点と連携しながら海外販売を拡大する。そのためにエアバッグ関連や車輌内装材、「ラスタン」「フュージョン」など独自商材の強化に取り組む。

〈北陸との開発を継続強化/ストレッチなどがキーワード/東レ〉

 東レのテキスタイル事業部門は上半期、学販などの用途が底堅く推移し、スポーツやアウトドアなども急回復した。ストレッチ素材「プライムフレックス」や透湿防水素材「ダーミザクス」などがけん引役で、植物由来やリサイクルなどサステイナブル素材も伸びた。

 ファッション用途はまだ2019年の水準に届かないものの、スポーツ・アウトドアは19年の水準を超えた。北陸産地との取引も同様の形で回復。22年は、新型コロナ禍の影響から脱して通常の状態に戻り、北陸産地、東レ合繊クラスタ―の稼働も元の状態に戻す考えだ。

 来期からの成長を目指す上では、北陸産地との取り組みを重視。「国内で新しい原糸を開発し、北陸の企業とともにテキスタイルに仕上げていく取り組みは絶対に崩せない。商品開発を怠らず、この取り組みをやり続けていくことが重要」(佐々木康次テキスタイル部門長)とする。今後の開発のキーワードは、「サステイナビリティ」「ストレッチ」「軽量」など。

 今後に向けては、産地企業の製造コストが上がった分の転嫁も重要なポイントとなり、生地の販売価格を改定して1月から7~15%の値上げを実施する。その浸透を図るとともに、新商品の価格にも反映させていく。

 機能とファッションを合わせた開発をポイントの一つに挙げる。市場ではユニフォームとスポーツ、スポーツとファッションなどそれぞれの垣根がなくなる中、婦人・紳士衣料、スポーツ・衣料資材、機能製品の3事業部の強みを融合した展開を図る。このほど大阪本社内に3事業部共有のテキスタイルライブラリー「COZYコーナー」を設けたのもその一環で、実物を見せながら用途の垣根を越えた提案を強化する。