LIVING-BIZ vol.77(5)/寝具寝装モノ作り/シキボウ/北川商店/三景 栃木キルト工場

2021年12月16日 (木曜日)

〈サステ素材提案を強化/反毛によるリサイクル糸も/シキボウ〉

 シキボウは、寝装向けでサステイナブル素材の提案に力を入れている。

 燃焼時の二酸化炭素(CO2)排出量が少ない特殊ポリエステル繊維「オフコナノ」は、特殊な加工技術で機能剤を添加したマスターバッジをポリエステルに加える。機能添加剤の働きで燃焼時のCO2発生量をレギュラーポリエステルと比べて約60%削減できる。ベースとなるポリエステルも再生ポリエステルを採用する。

 これまで短繊維を使った紡績糸や短繊維織・編み物での提案が中心だったが、このほど長繊維の商品化にも成功した。紡績糸はベトナム、長繊維は台湾の協力工場でも委託生産でき、海外生産・海外販売にも対応できる点を打ち出す。

 さらに完全子会社となった新内外綿のリサイクル糸システム「彩生(さいせい)」を積極的に提案する。裁断後の余った生地や回収製品などを反毛にして糸にする。近年、市場では反毛によるリサイクル糸が増えているが、生成り糸やデニム糸などが中心。これに対して彩生はメランジなど色糸を供給できる点に強みがある。寝具・寝装用途での活用も視野に入れる。

〈オールシーズン対応敷パッド/羊毛、麻の機能生かす/北川商店〉

 寝具製造の北川商店(大阪市住之江区)は、ウールの機能を生かすモノ作りを追求している。

 夏でも使用できるウール使いのキルトケットなどを提案するほか、ウールとリネンを使用したオールシーズン対応のリバーシブルタイプの敷パットも打ち出す。

 “側”(中わたを入れる前の半製品)は、片面が毛100%のシール織、グランド部がポリエステル100%、もう片面が麻(フランスリネン)100%。中わたは、カードわたの毛(ブリティッシュウール)100%・千グラム、シート状のわたの麻(ラミー)100%・150グラム。総重量は、100×200センチサイズで2600グラム。通気性を重視した生地を使用することで羊毛、麻の機能性を最大生かし、1年を通して快適な眠りを提供する。

 220センチ幅の生地を使用しているため、継ぎなしで幅の広いサイズに対応する。

 天然素材を全てウオッシャブル対応にし、ダブルサイズまで家庭での洗濯が可能。ダブルサイズを超えると、商業ウエットクリーニングでの対応が必要になる。

 同社は縫製設備を持ち、OEMは基本的に1枚からでも受け付ける。

〈寝具・インテリア分野拡大/協業とチャレンジ精神で/三景 栃木キルト工場〉

 アパレル市場が縮小傾向の中、服飾資材大手、三景の栃木キルト工場(栃木県佐野市)では、寝具・インテリアやアウトドアなど新規分野の拡大に力を入れている。

 主力はダウンウエアをはじめとする衣類用生地などの2次加工。キルトマシン16台、原反刺しゅう機2台、ラミネートマシン1台、転写プリンター3台、転写プレス機1台を備える。キルト加工や原反刺しゅう加工、ラミネート加工(仮接着)などの定番加工に加え、パワーネット加工、収縮加工、中わたなし加工といった特殊加工、客先オリジナルの別注柄の作成なども手掛ける。

 左右・前後に動くコンピューターキルトマシンでは、幾何学模様や星柄、ハート柄など多彩なキルトデザインが可能。原反刺しゅう加工は、連続した柄はもちろん、自動糸切りによる飛柄、1ヘッド5針装備による5色まで配色できる特性などを生かし、繊細で複雑な柄も自在に表現する。

 ラミネート加工は生地にウレタン樹脂(接着剤)を吹き付け、わたと仮接着程度に張り合わせる。これにより、裁断の作業性が高まり、縫製時の縫いずれなども解消する。

 同工場稼働から30年余り。毎シーズン新柄を開発し、蓄積した3千以上の柄スワッチなども生かしながら、客先の要望に応えていく。全量検針・検品を徹底しており信頼も高い。

 近年、足利や桐生など近隣産地の生地製造会社と協業するようになり、クッションやブランケットなど、寝具・インテリア分野も訴求。ライフスタイル提案を強めるアパレル企業からの引き合いもいい。寝具関連の加工場が減る中、寝具製造会社からの問い合わせもあるという。新型コロナウイルス禍を背景に人気が高まるグランピングの内装材も受注した。

 縫製機能もある福島工場や外部縫製工場と連携し、掛け/敷ふとんなどの加工も手掛ける。シート状で扱いやすい衣類の中わたと異なり、寝具の中わたはふわっとまとめているだけのものが多い。キルト加工にも一苦労だったが、生地の風合いを損ねないラミネート加工の仮接着技術、全従業員(現23人)の多能工化、3年前から閑散期を利用して取り組んできた自由な試作チャレンジの成果などにより解決。品質も高める。

 2021年4~11月の分野別生産数量は、アパレル関連が減る半面、テキスタイル関連は前年同期比1・5倍、寝具・インテリア関連は7・2倍に拡大。19年比でもそれぞれ約2割増、5倍となった。将来的には両分野合計の生産割合を3~4割に引き上げ、主力のアパレルと3本柱で事業を強化する。