東レ/成長へ繊維は付加価値化徹底/中経完遂へ着実に前進

2021年11月26日 (金曜日)

 東レは、持続的な成長のための施策を進める。2022年度(23年3月期)が最終の中期経営課題の完遂に向けて着実に前進しているとした上で、繊維事業は糸わた・テキスタイル・縫製の一貫型ビジネスの強化や付加価値化の徹底によって高収益化を目指す。炭素繊維複合材料事業では黒字体質を早い段階で構築する。

 新型コロナウイルス禍が落ち着きを見せる中、21年度上半期業績は着実な回復を見せた。下半期以降について日覺昭廣社長は「半導体不足や原燃料価格高騰などで不透明だが、大きな影響がなければ通期連結業績見通し(売上収益2兆2200億円、事業利益1300億円)を上回る可能性がある」との認識を示した。

 繊維事業に関しても原燃料価格や半導体不足、物流費高騰を懸念材料に上げる。新型コロナ禍の負の影響も来年の前半までは衣料品分野で残るとみる。ただ中経で掲げているグローバルでの事業拡大や事業構造改革などの施策は実行できたとし、中経の目標に近づいていると自信を示す。

 今後、繊維事業では高収益化に注力する。一貫型ビジネスを中心に顧客との連携をさらに強めると同時に、高付加価値化や差別化に徹底的に取り組む。素材では革新紡糸技術「ナノデザイン」を駆使した開発を加速し、再生ポリエステルの事業ブランド「&+」(アンドプラス)では22年度中に生産能力を増やす。

 来年1月に発効する地域的な包括的経済連携(RCEP)協定では中長期的にメリットがあるとした。中国などとの自由貿易に加え、2工程だった原産地規則が1工程に変わることが大きいとし、どのような取り組みが良いのかを見極めながらこれからの方針を決定する。

 炭素繊維複合材料事業は、航空機用途の落ち込みなどで22年3月期の事業損益は赤字の見通しながら、風力発電翼向けの需要が旺盛のほか、スポーツ用途は順調に推移している。これらを軸に黒字体質を作るなど、「航空機需要が回復した時に利益を一気に拡大する体制を整える」と強調した。

 50年のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みは、「東レグループサステナビリティ・ビジョン」に沿って進める。グリーンイノベーション事業による温室効果ガス(GHG)削減に貢献するとともに、事業活動のGHG削減技術を導入し、社会と自社の両面でのカーボンニュートラルを志向していく。