クローズアップ/東レ ファイバー・産業資材事業部門長 平井 正夫 氏/プロジェクトで若手マインドに変化が

2021年07月01日 (木曜日)

 東レのファイバー・産業資材事業部門は糸売り、わた売りを主力に展開してきた既存のビジネスで、テキスタイルや製品に踏み込んで顧客に提案し、新規販路を掘り起こす“プロジェクトI(イノベーション)”に取り組んでいる。既に70のテーマを創出しており、本格販売を目指した取り組みを急いでいる。プロジェクトIの進捗(しんちょく)を平井正夫ファイバー・産業資材事業部門長に聞いた。

  ――20年度(2021年3月期)の下半期からプロジェクトIをスタートさせた。

 糸売り、わた売りにとどまっているのではなく、テキスタイルや製品といった次の工程に踏み込んだ開発品の提案で新規顧客の開拓を目指すプロジェクトです。既に40テーマを予算化しました。別に30テーマも予算化に向けて順調に開発が進捗している段階です。

  ――テーマの具体的な内容は。

 ランニングシューズのアッパー、大手SPAとのポロシャツ、デニム、新たに開発した防ダニわた、畑などで使われる防獣ネット、高速道路のコンクリート剥落防止ネットなどでスペックインが進行しており、テキスタイルや製品による販売が遠からずスタートします。順調に運べば40テーマで13億円、70テーマで20億円の売り上げを計上できる見通しです。

  ――プロジェクトの進展に伴い何か部門内に変化は。

 若手の仕事に向き合うマインドが明らかに変わってきています。何といっても高次加工品の開発・販売はこれまでとは商売の奥行きが違います。糸・わた売りしか経験したことのない若い子たちがテキスタイルや2次製品の開発、企画に取り組むわけですから、いろいろと苦労はあるでしょうが、新しい考え方を習得しファイバービジネスを新しい段階に導いていってもらいたいと考えています。

  ――部門全体の21年度の目標は。

 苦戦を強いられていた自動車用エアバッグビジネスは昨年の下半期から反転し、現在は国内外の全拠点がフル操業中です。半導体不足という懸念材料が残っていますが、21年度は19年度を上回る業績を計画しています。昨年、赤字を計上した衣料用ナイロン長繊維も徐々に回復基調に向かっており、大手アパレル、スポーツアパレルとの連携を強化し、今年で黒字に浮上させます。「&+」(アンドプラス)の販売は順調に滑り出しており、プロジェクトIの一環で取り組むカーシート向けのテキスタイル販売が来年の1~3月期から立ち上がります。