ダイワボウレーヨン/サステイナビリティーと機能性を融合

2021年06月29日 (火曜日)

 世界的に環境問題への意識が高まり、二酸化炭素排出量削減やマイクロプラスチックによる海洋汚染防止のために繊維分野でも「脱炭素」「脱プラスチック」の動きが加速する。こうした中、注目が高まるのが木材を原料とするレーヨンなど再生セルロース繊維。日本唯一のレーヨン短繊維メーカーであるダイワボウレーヨンは、レーヨンのサステイナブルな特性に同社が得意とする練り込み方式による機能性付与技術を融合することでプラスチック削減など環境負荷低減やSDGs(持続可能な開発目標)の実現に貢献することを目指す。

〈環境に配慮した製造プロセス〉

 島根県益田市を流れる高津川は支流を含めてダムが一切なく、そこで獲れる天然の鮎が名物となっている清流である。そのほとりに建つのがダイワボウレーヨンの益田工場であり、ここで同社のレーヨンは生産されている。

 レーヨンは木材を原料とし、生分解性を持つことからサステイナブルな繊維として注目が高まる。ただ、ビスコース法による製造プロセスで環境負荷を抑えるためには徹底した管理が必要となる。同社はこれまで大きな投資を続けながら、地域の豊かな自然環境と共存する工場を作り上げた。

 例えば製造による副生物である水硫化ソーダ(硫化水素ナトリウム)は工場内で再利用するほか一部は重金属捕集剤などとして販売している。同じく副生物の芒硝(硫酸ナトリウム)も入浴剤原料などとして販売する。水硫化ソーダ、芒硝ともにリユース率は100%を達成した。

 工場から排出される温室効果ガス(二酸化炭素)の削減にも取り組み2020年段階で14年対比13%の削減を進めた。原料の溶解パルプは同じ島根県内にあるパルプメーカーから主に調達している。このため輸送時の温室効果ガス排出量も少ない。

 地域の豊かな自然、そして地球環境を保全することを考え、環境に配慮した製造プロセスでダイワボウレーヨンのレーヨンは生産されている。

〈機能レーヨンで「3R+R」〉

 マイクロプラスチックによる海洋汚染が問題となる中、世界的に使い捨てプラスチックの削減に向けた動きが加速する。欧州連合(EU)は2019年に特定の使い捨てプラスチック製品の域内流通を禁止・制限する指令(法律に相当)を採択しており、今年7月3日から実施される。

 規制対象は樹脂製品が中心だが、生理用品やウエットティッシュ、たばこ用フィルターなど一部の繊維製品も対象となった。これら繊維製品はプラスチックの含有情報や廃棄物管理方法を記載したラベル表示が義務化され、需要抑制が図られることになる。

 こうした中、レーヨンなど再生セルロース繊維は木材など天然セルロースと分子構造が同一なことから「非プラスチック」と定義され、規制対象から除外された。このため不織布製品などで再生セルロース繊維の用途拡大が期待されている。

 こうした社会的要請に対してダイワボウレーヨンはレーヨンに機能性を付与することで応える。海水中での生分解性を確認した「エコロナ」は、新たに紫外線遮蔽(しゃへい)機能を持たせたタイプと熱線遮蔽機能を持たせたタイプを開発した。撥水(はっすい)レーヨン「エコリペラス」も合繊の機能を一部代替できる。さらに使用済み綿製品を原料に再利用するリサイクルレーヨン「リコビス」も注目は高い。さらに染色工程での水・エネルギー使用量を低減させることができる環境負荷低減レーヨンもユーザーと共同で開発している。

 機能レーヨンを通じて、プラスチックの機能の一部を代替し、使い捨てプラスチックの削減につなげることを目指す。リデュース、リユース、リサイクルという「3R」に加えてリプレース(置き換える)を加えた「3R+R」で化石資源の利用を削減し、カーボンニュートラルな生分解性素材を中心とした循環型社会の構築に貢献することが同社の目標となる。

〈国際認証取得で信頼に応える〉

 多彩な環境配慮型機能レーヨンを製造・販売するダイワボウレーヨンは、国際的な第三者認証も積極取得することでユーザーの信頼に応える。

 レーヨンは木材を原料とするため、持続可能な原料調達には森林資源の適正管理が欠かせない。これを証明する「FSC認証」を取得している。原料の主力調達先の国内溶解パルプメーカーはCSR調達のグローバル情報プラットフォームである「エコバディス」でCSRの取り組み評価が上位25%の企業に与えられるシルバーメダルを獲得している。

 エコロナは、海水中で生分解性を認証する「OK・バイオディグレイダブル・マリーン」も取得。そのほか米国の農務省が再生可能資源から作られた製品を認証する「バイオベース製品認証」、染色加工などの安全性に関する国際規格「エコテックス規格100」、食品接触の安全性認証「ISEGA」なども取得している。

〈国際的企業連携にも積極参加〉

 環境や人権などの問題を解決するためにダイワボウレーヨンは国際的な企業連携にも積極的に参加する。例えば海洋プラスチック問題の解決を目指す企業団体「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス」(CLOMA)に加入した。

 このほど、責任ある事業慣行の情報を共有するための電子プラットフォームを提供している「サプライヤー・エシカル・データ・エクスチェンジ」(Sedex)にも加入した。食品、農業、金融、衣料品、化学物質など35の産業分野にまたがる180カ国・地域から6万社以上の会員がプラットフォームを利用する。Sedexを使用することで社会的、環境的パフォーマンス管理を効率化し、サプライチェーン内で働く人々を保護するために企業が協力できる。

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 ダイワボウレーヨンは1934年の創立以来、一貫してレーヨン繊維を製造・販売してきた。「人にやさしく、地球にやさしい」企業活動により、健康で文化的な生活に不可欠な地球環境の保全に努めるという理念を掲げる。SDGsの達成が求められる現在、その役割は一段と大きくなる。メード・イン・ジャパンのレーヨンを通じて環境や社会に貢献するモノ作りを推進する。